第33話 門
目が覚めると、雲の上にいるように感じてしまうほど柔らかな布団の感覚と、心配そうな道の顔が見えた。
それが今はとても嬉しくて、けれど私はまたあの女のひとに思い出してしまう。
「夢!!大丈夫か??」
「大丈夫だよ。どうしたの?そんなに慌てて。」
「それならいいんだ。」
心配そうに笑う顔は懐かしい顔だ。
今日はずっと求めていたかもしれない。
道とは付き合ってはいるものの、まるでアダムとイブ、水と油のように相性が合わない。
道は台風の目のように道の真ん中を堂々と人を引連れて歩くような人気な人だから。
私は端にある魅力的なものに目を奪われてしまうような怠け者だから。
それでも今まで何とかやっていけていたのは、道が心配してくれるからではないだろうか。
それに何か返したいと私も感化されているのだろうか。
それでも不和があるのは間違いないが。
「ノアさんからあまり寝すぎると危険な状態になるって聞いたんだ。」
「そうだったの?」
何だか複雑な気持ちになる。
「道くんが居たから出来たことだ。もちろん2人ならそんな状態にはならなかったがね。寝覚めはどうだい?」
白湯をノアは渡し、私は1口啜る。
「気分はいいよ。眠くもない。ありがとう。」
「それはよかった。窓を見てごらん。」
ノアは優しい声で終始話している。
窓の方へ向くと、先程の雨が嘘のように晴れていて、陽光がこの部屋の魅力を輝かせる。
まるで台風の後の晴れた日のようだ。
「夢乃、また前へ進んでしまうけど大丈夫だね?」
「それは…。」
なんて返すのが正解なのだろうか。
ノアは私が何も言えない間も、その美しい目を逸らすことはなかった。
すると道が間に入り、口を開いた。
「こんな良い天気なんだ。行くよな?」
道は早く行きたいのであろう。
こんなヘンテコや世界なのだから道は早く帰ってみんなと話してたいに決まっている。
私は相反した気持ちを抱きながら頷く。
「こんな面白い世界はなかなか見れるものではないから、楽しみだ。」
少年のような顔で笑う道は不思議と心をふっと軽くさせ、何故か私は嬉しいと感じてしまった。
きっと道はこの世界へ出たいからではなく、楽しいからというのが分かるからであろう。
ノアがクスリと笑うと「さあ!行こう」とたくましく言った。
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