第32話 どこの世界?

目を瞑るとふわふわして気持ち空間が私を向かい入れた。


そこでは小さな声が聞こえる。

優しく心が穏やかになる声だ。

――あなたはなぜここにいるの?

――まだ死んでないよね?

――疲れてしまったのね。可哀想に。

――休んでいきな。許されるまで。


「うん。そうするね。ありがとう。」

その優しい言葉に心は穏やかに暖かい気持ちになる。


すると突然異様な光がこちらを包み、見たことの無い人がこちらに向かってきた。

私にそっと触れながら、優しく撫でる。

「あなたはここにいすぎては行けないわ。呼ばれたら必ず戻るのよ。」

その声は先程の声とは違う。優しいとか穏やかより、安心感が強く、とても私を心配してくれている声だ。

その表情はどこか悲しそうな顔をして、とても切なく思える。


切なさを途絶えることはなく、涙が溢れてくる。

私をいつも心配してくれている人は誰であっただろうか。親、おじいちゃん、おばあちゃん、あらゆる親族たちそして、道の心配そうにしている顔が浮かぶ。


私は昔から心配してくれる人がいて、好きで大好きであった。だから私もその人たちに対して、何かしてあげたいと強く思う。


でも私は不器用かつひねくれものだから中々難しく、その不和がとても大嫌いであった。


私は彼女になにかしてあげられるだろうか。


しばらくすると、

「晴れたぞ」

という声が全身に駆け巡る。

「戻りなさい。」

とその人は告げる。


でも私は何も返していない。いつ会えるかわからないような相手であるのに。

彼女は私を見透かしたように微笑みながら告げる。

「大丈夫。あなたが振り返ることが私にとってとても大切なことだから。それにその心があれば大丈夫。早く行きなさい。」


再び大きな音がこちらを襲う。

これは行くしかないのだろうなと思い、私は体を反転させ、目を開いた。

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