第30話 道 2度目の出会い

彼女との2度目の出会いは大学生の夏。

ある授業の教室の隅。


彼女は同じ大学の講義を受けていたのだ。

あの優しさに溢れた彼女は隅の方の席でヒソヒソとしていた。


彼女に気づいたのは、前の講義が休講になり、暇で早めに教室に訪れた時、ただ1人女の子がいたからだ。


その時の俺は中へ入ると、1人突っ伏して寝ている女の子が目に入った。

こんな早い時間に1人で寝ているなんて変わっているなと関心をする。

今日は梅雨だというのに、よく晴れた五月晴れの気持ちいい日であった。暇だ。


寝ている彼女が目に入る。

真っ黒な美しい長い髪、白い肌はあの夜に見た彼女がよぎる。


まさかと思い近づいていく。

俺は彼女の座る前の席へ行き椅子へ座る。

スケッチブックから見える猫の落書きに目がいく。それは上品かつ丁寧に描かれていた。


配色の素晴らしさも去ることながら、目が特に美しい。

彼女が俺の気配を感じたのか体をもぞりと動かし、上半を起こす。


やはりある夜に水を置いてくれた彼女だ。

見すぎたせいであろうか。少し戸惑っている。


「えっと、、」

「起こしてごめんな。」

「あ、あの、いいえ。」

彼女は先程まで豪快に開かれていたスケッチブックをひっそりと閉じた。

そう言えば名前を聞こうと思っていた。


「名前なんて言うの?」

「え!山崎です。山崎と言います。」

「そっか、山崎か。よろしくな。」

「え、、よろしくお願いします。」

「絵上手だな。」

そう言うと目を見開いて夢はニコリと笑い、

「ふふ、ありがとう。」


それから俺はことある事に、夢に話しかけ、夢と仲が深まっていった。

何より俺は彼女の1度見た微笑みを何度も見たいと思うようになっていった。

話を聞けば聞くほど、彼女は自分の世界感のある絵のうまい人だった。


髪を染めない理由は傷むのが嫌だとか、日焼けは大敵と日焼け止めを宣伝する姿は可愛らしい。


しかし、夢は絵を毎日描いていて、たまに描いてある作品の説明をしてくれる。絵本作家になるのが夢で、今はSNSで発信しているだとか。


彼女は引っ込み思案であまり自分のことを話したがらない。しかしそれは一定の距離感が無くなると、ポロリポロリと話してくれる。


SNSは友人の勧め、しかし顔を出さなくてもいいと言う開放感から自由に作品を出せるらしい。


現にその友人にしか知らせてないらしい。

もっともっと仲良くと相まり、俺は彼女に恋をしてしまった。

そして彼女も僕に好意を向けてくれた。

これは奇跡だ。

だから、俺は間違ってはいけない。

奇跡のような出会いだから。

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