第17話 思い出惑星

ガラクタ惑星は、先程から思っていたが、どうやらガラクタで構成された惑星ではないらしい。ここは私の懐かしいで覆われている。


あのベッドは私が幼い頃使っていたベッドであり、あのテーブルはリビングに小学生の頃置いてあり、家族で食事を囲んだ。

それ以外にも、植木鉢、アサガオ、ランドセル、制服、シャープペンシルなど様々な思い出で構成されている。


「ノア、ここはガラクタ惑星では無いわ。全部、私がどこかであっていたものだもの!」

「気づいたみたいだね。」

「出発する前はガラクタで構成されたようにしか見えなかったのに。」

「夢乃、遠くから見ては物はただのガラクタだ。ホコリを払い、近づいていくとそれは君の思い出となる。」


ノアはわかっていたのかもしれない。

ノアは前に進むため、私に手を差し出し、そっと掌に合わせた。優しく掴んでくれるので、好奇心ではない、温かい感情が包んでゆく。


「夢乃、あのベッドを覚えているかい?」


ノアの指差す方へ目を向けると、白いシーツに白い枕、変な生き物の抱き枕に、原色で構成された宝石のような色の布団がある。


私はそれを知っている。けど家にあったものでは無い。ならどこで見たのであろうか。

こんなこというのも悲しいが、私は家へ遊びに行くような友人はいなかった。


「懐かしいと感じるけど、覚えてないわ。」

「そうか。」

と寂しそうな表情でノアは話した。

ノアは人形らしく顔は動かない。目はずっとぱっちりしていて、方向は変わるが、喋っている時も口を動かさない。

しかし、その瞬間のノアの目は細まり、寂しい表情を見せたのだ。

ノアは気持ちに応えたい一心で私は言った。


「けど!私の大切な人だった気がするわ。」

「そうか。君の世界にあるのだから、きっとそうだよ。」

も答えた。少し拳に力が入った気がする。


「ノアは覚えているの?私の記憶なのに。」

「夢乃は幼い頃から、私やアイにたくさんの思い出を話してくれていたからね。たまに私を自分の家に連れて行ったりしてな。その後もずっと私に色々なものを見せ、話してくれた。だから覚えているのさ。」


私はノアに幼い頃から色んなことを報告するのが好きであった。変人と思われたくないので訂正するが、植物に話しかけたり、神様にお祈りしたりすると多くは変わらない。

それにしても、思い出ばかりだ。ここ以外にもこんなヘンテコな世界なのだろうか。


「他にはどんな惑星があるの?ここ以外もみんな変わっている?」

「大きな洋館と、庭園のみで構成された惑星もあるし、小さな洒落た町のような惑星もあったな。それ以外にも星のような惑星、物体のような惑星も。いろいろだよ。」


確か、隣の家もオシャレな洋館のような、そこのみ世界が違うような感じであった。庭園もとても凝っていて、おばあちゃんが寝たきりになるまで、毎年楽しみにしていた。

しかし、おばあちゃんがいなくなったらその家は変り果ててしまったな。あの家にはどんな花が咲いていたか。


「その家と庭園のみで構成された惑星はどんな風貌しているの?」

「西洋風の立派な家さ。庭園にはエリアがあって、農業も行っている。しかし、咲いている花も時間により変わるし、屋根の色も内装も訪れる度に変わっているな。」


とノアは思い出すように話す。

やはり、ヘンテコな世界にはヘンテコな惑星しかないらしい。エメナルドのものが多くなる。

ノアの瞳の色だ。少しは恥ずかしい気持ちになる。


「ノアはいつからこの世界にいるの?詳しいみたいだけど」

「君と瞳が会った時からさ。君の世界は楽しいし、面白い。」


ノアはうっとりとした声色を出しながら、伝える。私が少し顔を赤くしてしまうのはやむ得ないことだろう。


ノアの瞳は本当に美しい。十年以上経過した今でも、惚れ惚れしてしまう。いまならずっと心の奥にズドンとした重みを話してもいいのであろうか。


「ノア、今回はどうして現れてくれたの?いつも居てくれたらって思っていたのに。」

「それは夢乃が呼んでくれていたからね。今回は特別に馳せ参じた訳だ。あ、そこに瓦礫がある気をつけて。」

「あ、ありがとう。」


私は心の奥深くで、もっと説明が欲しいという気持ちを持ちながら、ノアはあまり詳しく話さないから何も聞くことが出来ないと思った。


ノアとこの惑星を歩くと、思い出話に花を咲かせることが出来る。楽しさこの上ないが、思い出はプラスな側面のみではない。

全てのものはプラマイゼロであり、悪い思い出の裏には教訓があり、いい思い出の裏には、もう戻ることの出来ない切なさがある。

今はキャンパスや画集、思い出深いものが多くなり、心にギュッとくる。もうあの時間には戻れない。そんな寂しさや残酷さが心をつかむ。


ノアは口を閉ざし、少し足を止まり、周りを見渡した。

「夢乃、隣の惑星へ行かねばならない。先程のように飛行する必要は無い。ただ飛べばいいだけだ。」

「え、急に?!」

「火急なことですまない。少々荒々しいが許して貰いたい。」


そう告げるも向こうの惑星へ足を伸ばし、大きく飛んだ。ノアはまた勝手な人。

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