第16話 ガラクタ惑星漂着

「しかし着地の時はしっかり私に掴まるのだよ。初心者向けでは無いからね。」

すこし前のノアの言葉を思い出す。


今、私はノアに丸太抱きをされ、ガラクタ惑星を目の前に着地の準備をしている。


ここは普通お姫様抱っこだろうと思うが、両手を使えなくされるのは難しいらしい。屈辱的な気持ちになりつつ、ノアを頼る他ない。


よくみると、先程の惑星はみるみると近くなり、もう目と鼻の先だ。


ノアは垂直に着地出来るよう、角度を調整した。ふわふわとしながらも、ゆっくり速さが増していく。


重力か?いや、なら浮かんでいることすら有り得ないであろう。

そんなことより早くなりすぎている。まるで隕石になった気分。


私がノアに声をかけようとする前に

「喋らない方がいい、初心者は舌を噛んでしまう。」

とノアが囁くように呟いた。

その声にドキドキしているのか、土地に落下することを恐れてドキドキしているのか、もう私には検討もつかない。


―あ!落ちる!!


私は咄嗟に体を縮ませ、頭からつま先までの筋肉を活用した。

しかし、落下後の衝撃音も激しい痛みもなく、ただ

カーーんっ。

という杖の音のみ響いた。


「へ?」

私は十分とマヌケの声を出してしまうと、ノアは大声で笑い始めた。


――これはもしかしてはめられた?バカにされた!!


私の顔に熱帯びている。きっとノアが期待した通りの表情になっているだろう。丸太抱きをされ、真っ赤に恥ずかしがっている私は酷く滑稽だ。


「ノア!降ろして!!」

「あぁ、ごめん。はは、しかし夢乃は可愛いな。」

じたばたと体を動かす私を小馬鹿にするノア。

ノアは丁寧に私を降ろすと、私に手を差し出し、起き上がらせてくれた。


「大丈夫だったかい?」

「ええ。ノアのせいで、とても恥ずかしいけど!」

「いや、あれは仕方がなかったんだ。この惑星はとても不安定で、安全着地できる場所が無いからね。それに私は埃が嫌いなのだ。」

「なら最初から言って欲しかった。」


私は先程では考えられない生意気な態度を取っている。先程のまでの態度を淑女というなら、今は少々面倒がかかる少女である。


全くノアは不思議な猫だ。

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