第18話 未来

私とノアが大きく飛び越えた惑星は不思議な惑星だった。

駅のホームのような、先程より冷気を感じる。

一本線の線路があり、とても不思議な雰囲気が纏っていた。まるで、見知らぬ土地に1人取り残されてしまったような子どもの気持ちだ。


しかし、ガラクタ惑星の温かさが少し残っていた。ノアは着ていた上着をそっと私にかけてくれた。手は離れていった。


「ここにベンチがある。ずっと歩いていたから疲れただろう。座ろうか。」


私はノアの言葉に頷く。

私が腰を下ろすと、ノアも隣に座った。

一体いつから、座らずにいたのだろうか。私はノアと飛行し、ガラクタ惑星を歩き、話し、どれだけ時間が経過したのだろうか。

かじかんだ手を摩擦で温める。


増幅されていく不安と沈黙に耐えることが出来ず口を開く。


「ノアはこの惑星はなに?」

「この惑星には、まだ何でも無いんだ。しかし、昔から行先は決まっている。さっきの惑星だって、全部始まりは皆この状態なんだ。」


あれほど暖かな場所だったのが、少し冷たいこの場所と同じだったとは驚きだ。

この惑星もいつか、あの惑星のようにものが沢山散らばっていくのだろうか。それとも、好きな色を纏うか、それとも、全く新しい何かに変わるのかもしれない。

散らばってしまうのかも。


「ノアはどうなるかわかるの?」

「いいや、私もわからないよ。先の事は傍にいても想像がつかない。簡単に変わってしまうからね。」

「ノアに分からないなら、私じゃあ、想像もつかないわ。」

「はは、夢乃は自分のことを知りたいんだね。私からわかることは、夢乃の世界はヘンテコであることだ。」


何を笑いながら、ノアは言っているのか。呆れてしまう。しかし、ノアの笑い声は気持ちがいい。ノアの魅力がまだあったなんて、あの夜より前の私が知ったら、倒れてしまうだろう。


「ノアは私を変人だと思っているのね。」

「夢乃は変人では無いよ。夢乃は主観のみで生きている訳では無いからね。しかし、この世界は主観の領域。まあ、私はこの世界を愛しているよ。」


――愛している。

そんな言葉言われたら、怒りなど境界の彼方へ飛んでしまう。

私はノアの掌ならぬ肉球に弄ばれてしまっている感覚だ。きっとこの世界にずっといたノアにとって、私は自由な変人に感じてしまうかもしれないが。


「ノア、私――。」


キィーーー。


この時間は終わりだと告げるように、大きな音をたて、鳥が飛んできた。


ノアは立ち上がり、杖を持たない手を肩と同じ位置にあげ、平行に保った。


するとたちまち、ノアの腕に鳥が止まり、大きな翼をはためかせ、大きな声で告げた。


「ノア様!事件でございます!」

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