第13話 少女とノア

風の音がする。目が開くと、真っ青な空だ。

夜の色ではない。

まるで絵で書いた星空のようなそんな世界。

体を動かせずに空を呆然と眺めた。

夢の世界に迷い込んでしまったのだろうか。もう帰ることは難しいのか。

もしかしたら私は死んでしまったのかもしれない。今日は寒い日であったのだから、凍死してもおかしくない。

死後の世界なら、私は天国へ訪れたのだろう。こんな高揚感のある気持ちは初めてだ。美しい空を寝そべりながら、見上げるなんて幸せだ。



「こんにちは、お嬢さん。目は覚めたかな。」

とても気持ちのいい美声だった。この声はきっと歌も上手いのであろう。

働かない頭を使って、考えている。

いや!?今日本語が聞こえた!人がいるってこと。

私は直ぐに体を起こし、声が鳴る方を向いた。

私はさらに激しい衝撃に襲われることになる。

っ!!

なんと人に似た猫が、―ノアと瓜二つである―猫が話しかけてきたのだ。身長は私より高いであろう。

「あなた…ッ!?」

驚き続きの言葉が思い浮かばない。

「おっと、これは失礼。私の名前はノアでございます。夢乃昔から大切にして頂いて、ありがとう。」

人形のノアなんだ。星が輝く、こんな綺麗な空の下なのに、ノアの瞳が比べようのないくらい美しい。

「ノアっ…。私、ずっと会いたかったの!」

私は慎みに欠けた行動をしているかも知れない。前のめりでノアに迫る絵図。でも嬉しさが勝ってしまう。

ノアは目を真っ直ぐ見つめ、紳士らしい行動をする。

「私も夢乃と目があった日からこうやって話してみたかったんだよ。」

暖かな風が吹く。ノアの冷静さに、自分の興奮さが強く、恥ずかしくなってしまう。それを察したのか

「ふふ、ちょっと歩こうか。この世界について教えてあげるよ。」

そう手を差し伸べられる。私はそんなことを今までされたことがないから、戸惑ってしまう。しかし、ノアに従い、紳士ならぬ、淑女らしく手を取った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る