第12話 四宮大地視点【完】名残
「今日はお客が多い日だ。」
と憂鬱そうに話すフクロウは、猫のノアより、異様な雰囲気を纏っていた。
「私の言葉聞こえるもの2人、姿が見えるものは3人くらいですかな。全くノア様も勝手な人だ。」
怒っているのか、こちらの存在を認識しつつもどこかトゲのある口調で話すフクロウ。頭がだんだんとこのヘンテコなことについてきたらしい。
「声が聞こえる者、この世界から一刻も早く立ち去りなさい。」
「ちょっと待ってください。俺は山崎に合わせてくれると猫に言われて来たんです。」
そう伝えるとフクロウはこちらを視認して、
「夢乃様は中央で眠っていらっしゃるではありませんか。これだから向こうの人は、自分で考える力がない。」
「夢乃さん」と九条の声がし、振り返ると、青い光に照らされ、寝こけている山崎が居た。ほっと安心してしまう。
道が山崎の方へ走るが、一定の距離で止まってしまった。
「わたくしの声も届かないような輩に夢乃様の夢にはいれる訳がない。きっと皆さんもノア様に巻き込まれた方々なのでしょう。この世界から脱出する方法を教えます。ですので、至急帰って頂きたい。」
黙って聞いている。道には聞こえないのか?他に聞こえているのは誰だろう。きっと後ろで騒いでいる美月や蓮は違うであろう。
「脱出方法は目を3秒閉じて頂ければ、自動的に眠り、自分の世界へ行くことが出来ます。そしていつも通り、目を開けてしまえば、元の世界に戻れますよ。しかし、絶対に人に触れながら行わないで下さい。先に夢の世界に入った方の夢に侵入してしまいます。」
役割が終わったかのように黙り続けるフクロウ。確かに、この世界の脱出方法を伝えたのだから、間違っては居ないが不親切である。
俺は簡潔に皆にその事を伝えた。1つ嘘を交えて。
俺は道だけに山崎に触れながら言ったのだ。俺はこの不毛な関係を終わらせるために来たのだ。山崎は綺麗な物を心の底から愛しているから、山崎の夢はきっと良く、何かいい方向に行くと独断で確信出来た。
俺は山崎への片想いを終わらせ、綺麗さっぱり別れることを望んではいない。山崎とは親友になりたいのだ。そして、今はやもうそれに近い関係だ。最後の終止符を打ってしまいたい。
勝手な願いであるが、山崎が道の話しをする時はいつも楽しそうなのだから、しょうがない。
知らぬ間に美月と蓮、九条が居なくなっていた。道は今、山崎に触れ、山崎の夢に入っていった。
俺は名残り惜しくなり、この世界にしばらくいた。そんな長くは居ないが。フクロウが恨めしそうか顔で見るが、知らないふりをしておこう。
蔵書をひとつ触れる。中身を見ようとしたが、フクロウに怒られてしまい、諦めてしまう。
決心を決め、大きく目を閉じ俺の世界に帰っていった。
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