第10話 四宮大地視点・夜空の下

俺は先程までの怒りを忘れてしまうほど、壮大感のある夜空に、心を奪われてしまった。

これを体現するような人がいるなら、誰も逆らうことも、関わることも出来ず、ただ眺めてるのみしか出来なくなってしまうだろう。

誰も目を離すことが出来ないだろう。空に手を伸ばせば、届くのではないかと思うが、それはきっと味気ないだろう。

俺はすかさずにシャッターをきった。カメラのフレームを見ると、やはり美しかった。

俺は昔からカメラが趣味であり、よく山崎に見せていたことを思い出す。山崎に見せようと探すと、どこを見渡しても姿が無かった。

おかしい。いつもの山崎なら誰よりも夢中になるはずだ。もしかして、夢中になりすぎて、山奥にでも迷ったのか。偶然、隣にいた蓮に俺は焦ってしまい聞いてしまった。

「おい、山崎どこに行ったかわかるか?」

「はぁ!?知らねぇーよ。」

こいつは本当に話しかけたことを後悔させるやつだなと関心してしまう。心は何処か焦っている。昼間の光景を見た後だと特に。昼間いた猫がいたら、自分の身を考えず、森に飛び込んでいきそうで怖い。

「四宮君、夢乃さんが居ないの?」

と心配そうに九条が問いかけた。少しほっとして頷く。聞こえたのか美月がこちらに体を向け、

「寒くて部屋に戻ったかもよ。」

と言った。道は驚いたのか動きを止めて居た。

「私、家の中探してみる。」と走って家に戻った。

冷静になるため、大きく深呼吸をする。

「夢乃さん大丈夫かな。」

「どっちにしろもう迷惑だから連れてくんなよ。人との団体生活が無理な陰湿な奴なんだよな。」

「そんなことを言っては失礼よ。」

「あの女が居なければ、今頃、スープを飲んでいたかもしれないのによ。」

「早く、暖かいスープ飲みたいね。ねぇ、道。」と蓮と美月の会話が聞こえる。人のことを心配出来ない人がこんなにも愚かだったとは。

「けい…。」

ずっと立ちぼうけだった道が口を開いた。

「警察に連絡しないと!山の中にもし入ったのなら、今すぐに探しに。スマホ、どこだ!」

山崎と道、正直あまり一緒にいて欲しくない。それは俺が出した結論だ。

由衣が戻ってくると

「何処にもいないわ。部屋にもトイレにもお風呂にもいない。」

走って戻って来たのか息を荒らげていた。さすがに、やばいと気づいた阿呆な道や美月は、焦っている。

俺はポケットの中のスマホを取り出し、山崎へ電話をした。出ない。

「今、山崎に電話したんだが、出ない。警察に届け出た方がいいかも知れない。」

「そうね。この時間だし、皆で山の中に入ったらそれこそ、取り返しつかないことになってしまうわね。もうみんなも中に戻りましょう。」

と冷静に由衣と話している。こういう時、冷静になれる思考に感謝しつつ、家の中に入り、警察に連絡しようとした。

中に入る前に森林の中から緑の光と目があった。

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