第5話 不思議な猫
私の横に上品に座り、ピーンと尻尾を立てている猫。やはりノアにそっくりだ。頭を撫でてみると、気持ちよさそうに鳴くのだから、可愛らしく、愛おしさが溢れてしまう。心安らかになると
「綺麗な瞳ね、ノアとそっくり。ねぇ、君は人形のノアなの?」
そう聞いてしまう。ちなみに、私もこの歳で、ノアが猫の姿で歩き出すと気づくほど阿呆では無い。しかし、この世の全ての不思議を否定するほど、腐りきっては無いのだ。きっとノアではないだろう。
しかし、猫は予想とは反対な対応して、先程までの心地良さそうな様子から、キリッとこちらを向く。それはまるで肯定しているかのように見える。
その瞬間はまるでゆっくりと時が動いているように感じた。全ての感覚が鮮明な感じる。その時の風の音、鼻先の冷たさ、目が少し乾燥して、何処かの温泉の匂いまで、全てを感じる。
「…えッ!?」
―お嬢さん、今宵、あなたを連れ出しましょう。いかがですかな?
風の音では無いことは確実だ。言葉、なんの言語だったけ?でもとても綺麗な声だったな。けど猫が喋るなんて!?
ふっと向こうを見てみる。5人で笑っている声、四宮が居なければきっと私は1人でいた。私は由衣さんにも四宮にも感謝している。でも本当は道に怒って欲しい。それに道とも一緒にいたい。
「行きたい!」
―それでは月明かりの下で。
私は想像より大きな声で答えてしまった。聞こえた道がこちらに来て、
「夢、何処か行きたい場所があるのか?俺は喜んで着いていくけど。」
と笑いかけながら言った。後ろは怖いので見ないようにしよう。想像固くない。蓮さんと美月さんの顔が。
「えっと…。」
どうしよう何も思いつかない。猫に喋りかけてたなんて知られたくないし、だからといって行きたい場所なんてない。猫もといノアはどこかへ行ってしまっている。
「うたた寝でもしてたのか?」
とくすりと笑っていう道。私は蓮さんみたいに道にべったりとついて行くつもりはない。しかし、そうしてしまう訳は理解出来ている。
道はどんな人にもプラスに映るであろう。
「道なんの話ししているの?」
と美月さんが声をかけた。私は直ぐに顔を下げる。
「いや、なんでもない。」
「何それ。もうそろ行こう。」
「ちょっと…。」
まるで私が居ないかのように扱う。美月さんは道の腕を掴んで前へ行ってしまった。唖然と見ていると、由衣さんが
「夢乃さんも行こうよ。」
と促し、ようやっと現実に戻された。本当にノアが来てくれたらなと思いながら、足を運んだ。
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