第4話 憂鬱な旅行③

それからパーキングエリアを経ち、私はそこそこに心もとない気持ちをしたが、なんとか別荘へ到着することが出来た。

別荘は西洋の洒落た家という感じで、なかなかの広さを誇っていた。由衣さんいわく、100年も前からこの土地を別荘として所有していたらしい。

「ここからは夜になると綺麗な星々が見えるの。みんなで見ましょうね。」と由衣さんはどこか懐かしそうに、少し鼻高に言っていた。

次に生を頂けるのなら、お金持ちになろうと浅はかながら感じてしまう。

大きなリビングが1階にあり、上にいくつか小部屋があった。そこで寝ればいいだろうと由衣さんは言った。

「それじゃあ、みんなで温泉街行こうぜ。」

「いいね!美月、温泉も入りたいし!」

「観光だな。」

蓮さんの提案により、温泉街に向かった。温泉街は盛んであり、古き良き日本というイメージである。



街に入ると森林が近くにありつつ、風流なお土産屋さんや甘味処、温泉もあり、観光地になっていた。

ノアが隣にいたらと夢心地になっているが、

相も変わらず、私は村八分あい、道は美月さんとか蓮さんと一緒にいるから、私は由衣さんか四宮と一緒にいることが多くなった。

なかなかの憂鬱ながら、私はある1つのことに心を奪われていた。

「ねぇ!あの猫、さっきの甘味処にも居たよね。綺麗なオッドアイ。」

と由衣さんが美しい猫を指した。この地に着いてから、私達と一緒に行動をしている猫がいる。しかも、あの毛色、細さ、模様、そして言葉で表しようのない美しい瞳、そうノアにそっくりなのだ。

2人が腰を屈め、猫を見たので、私も同様に腰を猫の方へ屈めた。

「野良にしては綺麗すぎるよな。飼い猫とか!」

「そうね。でもお金持ちが飼っている猫という下品さが感じられないのが不思議な話しよ。」

四宮と由衣さんが猫を観察している。私も一緒に見てみると、やはりその猫はノアと瓜二つであった。私が猫に向かい手を伸ばしてみると、擦り寄り、ゆっくりと瞬きをする。

―可愛い。

「十分、人懐っこい猫だな。」と四宮が撫でようとした瞬間、左右にパタパタとしっぽを動かし、ツーンと向こうの方へ行ってしまった。

「夢乃さんは好かれているのに、十分と嫌われているじゃない。」

「ふふ。本当に可愛い猫ね。」

正直、3人で回るのはそこそこ楽しいが、由衣さんは自由きままに来たり、離れたり。四宮も蓮さんのウザ絡みを軽く潜り抜けることが出来た。

しかし、傷つきやすく繊細な私は、蓮さんの冷たい態度も、美月さんと道がイチャイチャしていることも我慢が出来ないものだった。猫がいなければ、私は泣いてしまったかもしれない。

そういえば四宮は美月さんの彼氏。皆が写真撮影をしている時、私と四宮は遠慮させてもらい、4人を遠くから眺めていた。

美月さんと道は相変わらず隣をキープしている。

「四宮は彼女と上手くいってるの?」

「仲は悪くないが。あれを見てそれを言うか。」

「モーセの十戒、昔好きって言ってたよね。あのタイプは好きにならないと思ってた。」

「阿呆だな。ああいうのは自分が守るために存在しているのだろう。他人に求めても虚しいだけだ。」

四宮と私は似ている部分があるが、現実と夢に見境をしている分、だいぶ四宮とは違う。

そんな所にも悲しくて仕方の無い気分になる。

「おい!四宮来いー」

と小生意気な蓮さんの声が聞こえ、しょうがないと向かっていった。こんな見知らぬ土地で1人で何をしているのだろうか。

ノアの瞳にはこの景色も美しいのであろうなと風で揺れる中考えていると、ニャーと猫の声が聞こえた。

横をふと見てみるとあの猫がいた。

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