第3話 憂鬱な旅行②
旅行は、お金持ちの由衣さんが所有している別荘へ、レンタカーを借り、赴くという実に計画性の無いものだった。しかし、温泉街であり、夜には満天の星空が見えるという話。
ちなみに、運転手は由衣と四宮であり、実に由衣様々である。私は何も出来ていないので、些か申し訳なさを感じてしまう。
「由衣さん、今回はいろいろありがとうございます。本当は私が免許証を取っていたなら良かったのだけど。」
「気にしないで。私、運転好きなのよ。それに四宮君が交換してくれるらしいし、大した距離じゃないわ。」
それでも気にしてしまうのは、しょうがない話。私は異端者であり、遠慮というものが出来ないのである。
運転席に座る四宮。本当は由衣さんが最初運転する予定だったが、寝不足であることが分かり、
「俺は昨日たっぷり寝てきたから、最初に運転させて欲しい。」
この四宮の一言が因果である。
そして私が道でなく、大地の隣を座っているのは、「俺はこいつの近くに座りたくねぇー。」
その蓮さんの一言である。
朝、運転を担当した四宮と私は、2人で起き、パーキングエリアまで皆が就寝中、話に花を咲かせた。
四宮は一見、私とは別の種類で大きく離れているように見えるが、私と同じ想像力の中に生きる人間なのである。私と四宮の違いは、出来る人か出来ない人かそれが違いである。
「そういえばあの猫の人形…。名前なんだっけ?」
「ノア!ノアは『ノアの方舟』より名前を頂いた由緒正しき紳士な猫なのだから。」
「そうそう、ノアな。あれついて、海外の友達に話してみたんだけど、とんでもない金額で100年前くらいに売られてた人形かもしれないって言ってたから教えてやろうと思ってな。」
「え!?本当!…。確かにアイおばあちゃんお金持ちだって言ってたような気がする。」
「アイおばあちゃん?」
「そう。ノアをくれたおばあちゃん。もう亡くなったんだけどね。」
今、思い出してもアイおばあちゃんは可哀想な人だったな。あんなにノアを大切にしていたのにどうして私にくれたんだろう。
漠然と外を眺めると山、山、山。ノアがいたらこの緑もどれだけ美しく映るのだろうか。そんなふうに考えていると、パーキングエリアに到着し、一休みすることになった。
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