ショタボVTuberがイケボVTuberになってから大晦日
さくらかるかん
やらかし(幸せ染みるショートストーリー)
Akuq(空愛)主人公
菜璃 主人公の恋人
Mickey 主人公の友人兼雇い主兼社長
イオリン 仕事仲間
〜〜〜〜
大晦日。MickeyにVtuberの仕事を紹介されて1年くらい。俺はこれまでを振り返るとともに声を大事にする仕事をしている上で一番大切な喉を枯らしていた。それはそれとして俺よりも早く起きていた一緒に暮らしている菜璃に声をかける。
「ア"ァ"ーゴホッゴホッ……菜璃おはよ」
「空愛おはよ。声っていうか……喉死んでるけど大丈夫かな?」
心配そうにこちらを覗き込んでくれる。
「いや、なんていうか。ゴホッ……タンが絡んでるのか空気が乾燥してるからなのか死んでる……」
そう、何故か分からないが死んでるのだ。大声出した事とかゲームで発狂することとかこの頃なかったはず……。
「いや、多分それあれだよ。昨日のUNISONの忘年会で超高音から低音までの色んな曲を全力で歌ったからだよ……それに最後にはイオリンとディエットしたり世界大会メンバーで大合唱してたし」
「……歌って踊れるアイドル空愛ですっ!!ゴホッゴホッ。あーマジで喉死んでる……あっ、なんですかそのジト目は俺くらいの人じゃないと心が傷つ、嘘ですダンスなんて出来ません。嘘ついてすいませんでした。だからそのジト目は辞めてください。美人がそれすると普通に怖いんですっ」
あっ、痛い、心が、彼女からのジト目は心がっ。やめ、やめて……怖いメウ。
菜璃はため息をついて薬の入った瓶を俺に渡す。
「はぁ、はい。私がたまに使ってる薬あげるからそれ飲んでね。あともう夕方だけど言う事は?」
「え?あっ……あー配信の予定とかあったっけ?」
今日は大晦日だ。他の先輩達が年越しリレー配信をやるとかやらないとかで俺と菜璃の配信の予定はなかったはずだが……。
菜璃は呆れたようにまたため息を付き、眉間にしわを寄せて詰め寄ってくる。
「配信??今日は私とネズミーランド行く予定だったよね?」
「すぅーー……」
やらかしたァァァ。これはやった。もう駄目だ。彼女の約束を忘れた+仕事の予定だったっけ?はヤバ過ぎる。さらにネズミー。ネズミーですよ。菜璃が「え?ホントにネズミーランドに大晦日行けるの!?空愛すごすぎ!!愛してる!!」と大興奮で愛の告白までしてくれたのに俺は……忘れてましたね。いや、違うねん。UNが世界一のチャンピオンを防衛したから昨日は飲みに飲んで遊びまくっちゃったねん。いや、そういえば明日予定あるでしょ的な事を菜璃に言われてたな。
俺は朝目覚めていや、夕方目覚めて間もないと言うのにこの前に仁王立ちしている菜璃様の前に土下座した。
「この度は大変楽しみにしてたであろうネズミーランドの予定を潰してしまいすいませんでした。昨日は明日の予定あるよと教えてくれたのにも関わらず大丈夫大丈夫と言ってさらに酒を飲んでしまい本当にすいません。今から準備して間に合うと思うのですがどうでしょうか」
まだ6時。ギリギリになるだろうが花火くらいは見れるはずだ。大丈夫、まだ取り戻せる。終わりよければ全て良しと言うじゃないか。まだ6時間も時間がある。どうにか……。
「ネズミーランドのチケットとホテルの予約はあなたの妹ちゃんにあげました。あなたが起きないかも知れなかったので。ただ、妹ちゃんはめちゃくちゃ喜んで女友達と楽しんでくる!!と私に伝えてネズミーランドに向かいました」
あっ、チケットもうないんすね。俺が起きない事も想定して妹に渡したんすね。了解っす……どうしよう!?助けて!!俺ここからどうすればいいの?何も出来ねぇじゃん!!
「来年リベンジお願いします……」
「まぁ、許すよ。私自身この家で年を越したかったし」
え?めちゃくちゃ軽い。やっぱり菜璃様は話がわかる!!来年マジで大事にしなきゃな。今回は普通に実家に帰らせていただきます案件だった。うちの彼女様は女神すぎる。
「菜璃様マジで愛してるぅぅ!!」
「うんうん。私はとぉっても優しいお姉さんだから許してあげるの。まぁ、私自身忘年会の次の日にネズミーランドとか無理だろって思ってたからね。でさ、空愛反省したよね?だから私のお願いも聞いてくれるよね?」
「それは当然でございます菜璃様。貴方様の如何なるお願いにもこの空愛答えてみせましょう。さぁ、さぁ、ご命令を」
さぁ、こい。こちとら起きたばっかで頭回らないけどどうにかしてやろうぞ!!
「じゃあ、年越しそばを用意しなさい」
「ははぁっ」
俺は菜璃のお願いを叶える為に家の中を全力で走り菜璃の前に緑のたぬきと赤いきつねを置いた。
「こちらは私の徹夜明けで料理したくない時にいつも助けてくれる友人の緑のたぬきと赤いきつね君です」
「……これ?」
菜璃は不満なのか先程と同じジト目で俺を見てくる。
……ちゃうねん。やっぱり年越し言うたら、緑と赤のキツネとたぬきやん?
「日本全国年越しに1番食べられているであろう商品でございます。これ以上素晴らしいものはありません。てか、ホテルで夕飯食べる気満々だったからそもそも食材買ってないし、今から菜璃一人残すか二人で外に買いに行くなんてめんどいと思ったのでこれしかありませんっ、本当にすいませんっ」
「空愛日本語変になってる……てか、どんべ」
「やめろぉぉ。我が家は東洋水産さんのしか食わん!!ワンタンかマルちゃん正麺にしなさい!!」
「私、空愛が今までどんべ……ごめん。他社商品しか食べてないと思うんだけど。緑のたぬき食べてる所見たことある気しないし」
「気分が色々あるのよ。てか、ほとんどカップ麺だからうどんとかそば系は徹夜明けにしか食べないから貴方そもそも寝てるでしょうが。あなたが知ってるのワンタンぐらいでしょうが。毎年の冬は大変お世話になってます」
いや、マジでワンタン神商品よ。Mickeyが箱で送ってきてくれたから今年は買わなかったけどいつもスーパーで買ってたからあの時ほんとに嬉しかった。
「ワンタン美味しいよね。ちょっとお腹が空いた時とか食べてる。なんかMickeyさんがたくさん送ってくれたし」
「マジでMickeyにあの時は感謝したわ。で、食べます?」
「んー空愛がそこまで食べてほしいなら久しぶりに食べようかな。受験の時お世話になってるから味知ってるし」
「食べやんせ食べやんせ」
そして、俺はお湯を沸かして菜璃の横に座る。
「今年もありがとうございました。来年もよろしくね」
「来年は1周年もあるし新人ちゃんも来るし楽しいことがいっぱいだね」
「そうだね。今年は何見る?」
「そりゃあ、先輩たちの年越しリレー配信でしょ」
「ここで紅白とかは見れんか。よし、ps5様よろしくお願いしますっと」
俺はテレビにps5様を使用して先輩たちの配信をつける。そして俺は今年のことを振り返る。
「まさか俺がVtuberになるとはな……」
「想像してなかったの?」
「いや、なってもUNのStreamer部門だろうなとは思ってたからVtuberは予想外だった。ただ、1番の予想外は菜璃って言うめちゃくちゃ可愛くて女神とも言える彼女が出来た事かな」
「そっすか……」
彼女は顔を紅くしてその一言を言ってお湯を取りに台所へ逃げる。
ホントに俺に彼女が出来るなんてな……。今年は本当に楽しかった。世界一取った時よりも良い一年だったかもな。
すると菜璃が緑のたぬきと赤いきつねをお盆に乗せてこちらにやってくる。
「はい、私たぬきね」
「あっ、俺きつね了解っす」
俺に選ぶ決定権は無かったがどちらも好きなので良しとしよう。てか、たぬきがそばできつねはうどんだから分かってた事なんすけどね?
世間ではカップ麺の調味料を合成して美味しい味を作る人が居ると聞くが俺はそんなことをしない。だってめんどいじゃないすか……。
そして、タイマーがなる。
「3分経ちました〜。夕飯いただきます〜」
「いただきます〜」
「あ"ー身体にしみるぅぅ」
「意外と美味しいね」
「まぁ、長年売られてるってことはそれだけ需要があるって事だからな。てか、油揚げが美味い。今度味噌汁でも作る時にこんな感じの揚げ使うか」
「こっちの天ぷらも美味しいよ。食べる?」
うちの彼女様は気遣いもできるらしい。
「俺のやつも食べていいよ。まぁ、半分食べたから全部行ってもらってもいいし。少しもらいます」
すると菜璃が緑のたぬきを持って席を立つ。
「え?」
「寝坊した人がもらえるとお思いですか?」
「……そうですよね〜俺のだけお食べください菜璃様」
「ふふっ、まぁいいよ。食べさせてあげよう。私油揚げ全部食べるね〜」
「ありがたき幸せ」
『あふっ、熱ちゅいぃ〜空愛水ぅぅ〜』と舌を出している彼女可愛いと思いつつ、今年の時間も残り少なくなっていく。
本当に今年は楽しかった。まぁ、最初炎上騒動で終わったと思ったけどね……。よし、来年もしっかり頑張ろう。このまだ熱ちゅいぃ〜と舌を出している子供っぽい彼女を守る為にも。
「空愛なんか浸ってないで早く水!!」
「はいはい、すぐ持ってきます〜彼女様〜」
ショタボVTuberがイケボVTuberになってから大晦日 さくらかるかん @sakurakarukan
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