第4話
ドルイドの記憶から
フランダール家に生まれ、賢者の石の継承者となってしまった
そして、見せられた記憶の中で気になる点がいくつかあった。
自分の魔力が突然なくなった原因は、それを見ても判明しなかったし、何よりあの『ローバー・クレル』という男。既視感のある風貌と、偶然にも同じクレルと名の着く少年を、ネリはよく知っていたのだ。
初期のマルバノ組織を率いていた
「ねぇ、エイ……ダ――?」
隣にいたはずの彼女が居ない。
気配を
化粧箱へ万華鏡を戻し、鍵が掛かったことを確認するとショーケースに並べた。
――地下保管庫への道はまだ繋がっている。少女が
壁の中を通るのは二回目だが、胃の中の物が迫り上がってくるような気持ちの悪さには慣れそうもない。不快なその感覚に、思わず目を閉じる。
ピリッ――と、
「久しぶりにしては
四肢を封じられ、動きを封じられる。
しかし、そんな状況でもネリは
締め上げる
今と同様、『彼』の優しい心を表しているのか、力加減がされ過ぎて跡も残らないそれは『幼馴染み』が得意とする
「西の魔女が居たでしょう。……マルク、彼女を
図書館の中は暗く、ランプがない為に
革靴の音が静かな図書館に響き渡る。
パチパチと鳴る電光の
「あの人なら眠ってもらってるよ。大丈夫、怪我はさせてない――って言いたい所なんだけどさ。すっごく抵抗されるもんだから」
「エイダに何をしたの。答えなさい」
「……ネリちゃんってさ。継承者だから、いつもそんなに上から目線だったの?」
目前に立つ、そばかすに赤毛の幼馴染みは
――何故、『継承者』である事を知っているのだろう。
口角を上げたマルクは、左手に持った杖をトントンと
「質問の答えがまだよ」
圧倒的に不利な状況下であっても
家族よりも長く、一緒にいた二人だ。
手を取るように相手の考えがわかっていたのに、手の届く先で見下ろすマルクの面構えからは、以前のように読み取ることが出来ないのがとても
「わかったんだ、ネリちゃんとは
「まるでヒトが変わったみたいね。一体どうしちゃったのかしら……あたしの幼馴染みはこんな馬鹿げた真似するような
万華鏡から見た、彼の記憶。そこには確かに彼の言う通り『
意識がこちら側へ戻って早々、既視感を
「過去は過去よ。あたしはネリ・フランダールであって、ドルイドではないわ。あなただってそうよ。――マルク、杖を捨てなさい」
「はははっ!
――ヘーゼルカラーの
彼の中に眠っていた潜在意識を無理やり呼び起こしたのだろう。
杖を握る手には大量の汗をかいていて。術者に抵抗を見せた爪痕も痛々しく喉元に見えた。
少女は溜息を吐くと、
「ああ、ネリちゃん疲れちゃった? ごめんね、ボクとした事が気が利かなくって。すぐに楽にしてあげ――」
身を
ランプは彼の手から滑り落ち、床へ叩きつけられた衝撃で
ふらついた少年の
―― 十一年間、嫌というほど魔法だけでなく体術まで教えこんできたのに。
自分が捕縛されたことよりも、他人に意図も
「どこの誰だか知らないけれど。このあたしを
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