第2話
マナの樹から抽出したエネルギーを分配し、
連日の徹夜明け。眠たい
「あそこって研究対象ですよね……大丈夫なのかな」
「
「いや、だから
「ただでさえ貴重な
普段、
同僚たちが噂好きの研究員を引き離すと、ドルイドは自分がした行動に驚くも、
「すっ、すみません博士……。さっき研究データを渡しに
「……いや、ごめん。せっかくの
「ドルイド博士、どちらへ――」
「今日はもう上がるよ。君たちも手元の物が終わったら帰りなさい」
それから。ドルイドはすぐさま大指導主の元へ向かった。
執務室には
彼は新しく精製したのであろう、やたらと大きな花瓶のような魔導具に張った水面を見つめていた。
先程研究員に聞いた、
問いただせばそれは事実であった。
目の前が暗くなり、睡眠不足もたたり倒れ込みそうになる。
「――数時間前の話です。正式に『
「生存者は……」
「部下が村へ着いた時には火の手が各所から上がり、遺体すら焼けていたと。村に居た生存者は、貴金属を漁っていた人間のみだと報告を受けています。ただ――」
「……ただ?」
「村外れの教会には、火を放たれていなかったようです。消火活動が終わり次第、そちらも調査するようには」
「で、でしたらっ! 僕も同行します。可能性は低いけれど、アレの情報漏洩が元でこんな被害が出てしまったとしたら……それは間違いなく、僕の、責任ですから」
【最北の緑豊かな村:トルン】
村は焼かれ、
白く統一された美しい村の面影はなく、辺りは乾いた血の赤黒い色でそまっていた。村は閑散としていて、嫌な静けさに包まれたトルンの至る所に
ドルイドは地べたに並んだそれらの中に彼女の姿が無いことを確認すると、ドドナの
教会の扉は開け放たれていて、礼拝堂に逃げ込んだ
もっと早く、迎えに来ていれば。
しかし、探しても探しても。どこにもドドナの姿は見当たらなかった。
――ゴン、ゴンゴンッ
礼拝堂の椅子の下。
色の変わったそこから、
長椅子を
一メートル四方の鉄扉。取手を掴み、引き上げた。
「――お、おねぇちゃ……ドドナお姉ちゃんは!?」
「オジサン、誰なの――? にんげん、じゃないよね」
胸を撫で下ろしたドルイドは少年たちを強く抱きしめると、ひとりひとり外傷がないか確認する。
地下にいた子供たちは一様に『ドドナ』のことを話していて。
彼らの話を聞く限り、子供たちを避難させていた時すでに、血を
護衛で連れてきた魔法士たちは、村唯一の生存者であった子供たちを見ている。
ドルイドはその隙を見て森にある神殿へ走った――。
※※※
結界で護られていたはずの神殿への道中。
「ドドナ――!!」
石段を駆け下り、倒れている聖女をゆっくりと抱き起こす。
まだ息はある。
「こども、たち……は」
か細い声で
涙ぐむ青年を見て、ドドナは天使のように笑いかけた。
「あの子達が無事なら、よかった。――ねえ、ドルイド? こんな、ものがあるから。魔法があるから……ヒトは
「わかった、わかったから……ドドナ。それ以上喋らないでくれ」
幻狼の血から得た魔力を使ったのだろう。魔法で
彼女から流れ出した鮮血は
「でも、マナの樹がなければ、貴方と出逢えなかったのかなって。貴方の望んだ未来を思ったら――
想いに答えるように、マナの樹が揺れ動いた。
握っていた手は脱力し、
「奇跡というものがあるのなら……貴方と同じ魔法使いとして生まれ変われたら、いいなぁ。神官、なんかじゃなくて、普通の女として――」
ドルイドは
これから行うのは
体内に
――死者は
目を
「こ、れは……どういうことなんだ」
刺し込む光から守り、
かわりに、硬い何かが
しかし、青年は動かない。
見知った気配に、ドルイドは頬の涙を
石段を叩きながら
「マナの樹を護りし
大指導主は転送魔法で魔導具『
「この神殿ごと、
マナの樹ほどの魔力を持った物を隠す結界を張ることのできるのは、清い
こうなってしまった今、大指導主の手元に置いておく
「――して、手に握られたモノはこの世にあってはならないモノですね、ドルイド」
神官である彼女の魂を
叶わずとも、死者を蘇らせようと禁忌を
いや、せめてもの恩情か。
水甕の中でその時が来るまで……いや、永遠にマナの樹と共に生きることを決意した青年は、大指導主の
「――……っ!!」
「大指導主、様……これは一体」
石が
大指導主の発動した魔法さえ跳ね返すほどの力を持ったそれは、握りしめた
「ドルイド・フランダール、お前を魔法石――この『
「……僕は、僕は神を
「ええ、お前は禁忌を
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