ネリ・フランダールと麗しの狼

序章

魔法の国：フィラデルフ

　大陸の中央に鎮座する国があった。名を、フィラデルフ。

　多種多様な種族がいるこの世界で、圧倒的に魔法使いの多い国だ。

　かつて領地をめぐり争った魔力を持たない人間とも共存し、幻獣種である小神族（エルフ）、小人（ドワーフ）、そして幻狼族（マーナガルム）とも共生を掲げ、既に千年の刻（とき）が経っていた。

　地上に住まう全ての種族の平和を願い、実行した初代大指導主（グランドデューク）。

　平和の象徴である大指導主は、国王に継いで地位のある役職であり、現在では優れた魔術師の中から選ばれる尊い魔法使いだ。

『魔法は我々にとって奇跡に近い、尊き能力（ちから）である。故（ゆえ）に、生きとし生けるものすべての民が、平等に扱えるモノでなくてはならない』

　こう唱えた初代大指導主は、他種族でも魔力のない人間でも、魔術が学べる学校を設立し、誰しもが平等な世界を作り上げようとした。

　そして、現代。

　度重なる虐殺や密売により絶滅が危惧され、その一族のみが消息を知る小神族（エルフ）、幻狼族（マーナガルム）を除く種族が、共に学び生きる世の中になっていた――。