第2話 校長先生並、爺さん以下

 さてとで説明が始まった。

 どこかの部屋にほうじ茶と緑茶がテーブルの上にあった。

 ガラスのテーブル。

 社会人のように無個性ながらも美しく纏まった内装。

 守護神様の部屋との事だ。

 女性の匂いと言うのか?甘い匂いが微かに鼻孔をくすぐる。


「さて、どこから話せばいいかのう?」


 そう言い守護神様は緑茶を啜る。

 それに対しほうじ茶を啜り終えた彼は正座をして話を聞く。


「そうじゃ、あれから話そう。お主が生まれる1200年は昔の事じゃ」


「1200年前?」


 1200年前は平安時代。

 800年の時だ。


貞観じょうがん11年の時。津波がワシ等を襲った。母も兄も死に、一人父だけが生きた」


「守護神様は?」


友里ゆりでよい」


 そして、緑茶を淹れた。

 その音が終わる前に友里様は話を始めた。


「あの頃は今でも夢に出る。鐘が鳴り響き、津波の渦の中に引きずり込まれる感覚。あの時じゃ。お主がこのようになったのは」


「・・・」


「遠矢」


「は、はい!なんでしょう?」


 突然名前を呼ばれて背筋が伸びる。

 閉じていた目がゆっくりと開き、友里は口を開いた。


「ワシを、どうか恨んではくれぬか?」


「え、どうしてですか?」


「・・・ワシはな、お主と引き換えに守護神になったのじゃ」


「・・・」


 その言葉は重く、罪を話す人のように目を逸らした。


「もう二度とあの苦しみを味わいたくはなかった。ワシの身代わりとして元々守護神になるはずだったお主を人間に。そしてワシは守護神になったのじゃ」


 その時の光景こうけいよみがえったのか体がビクッと反応した。

 キラキラと光を反射はんしゃする髪の毛がフワリと舞った。


 その後を要約ようやくするとこうだ。

 死んだ友里は自身の守護神が変わる事を利用して自身が守護神に。

 そして守護神になるはずだった遠矢は人間になった。

 しかし、反発作用はんぱつさようとして不幸の運命に堕ちた遠矢を助ける為に奔走ほんそうするも失敗。

 遠矢が守護神とか神を信じなかった為、力が足りず。助けられなかったが、最後の最後に友人から貸し借り無しで力を貰い。遠矢は神の居間に居るとゆう。


「こうゆう事じゃ。しかしの、呪いの運命はまだ終わっとらんはずじゃ」


「え?つまり僕はどうなるんですか?」


「転生させる」


「え?」


「呪いはここから始まっておるのじゃ。力は近くなればなるほど強くなる。しかし、友人が管理しておる世界に行けば発生源から遠くなり、力は弱くなる。じゃから転生させるのじゃ」


「なるほど」


「じゃがの。それだけじゃ足りん。じゃから限界までちーと?とやらを詰め込む。幸い元が守護神じゃったから容量は普通より大きい。これなら限界までつぎ込んでも大丈夫じゃろう」


 そう言いテーブルにあった丸薬をこちらに差し出した。

 黄金に光る丸薬だ。


「これを飲めば大丈夫じゃ」


「・・・飲む前に一つ良いですか?」


 友人とゆう言葉を聞いてから気になっていた事があった。


「僕が転生したら・・・友里様はどうなるんですか?」


「安心せい。なにも変わらん。いままで通り守護神を続けるだけじゃ」


「よかった・・・」


 言葉通りに安心しきった彼は丸薬を飲んだ。

 苦いが、吐くほどではなかった。


「これでちーとが使えるはずじゃ」


「なるほど・・・」


「ちーとは今はまだ一個だけじゃが、これから増えていく。そうじゃな、それを友人がレベルと言ってたはずしゃ」


「レベル・・・」


 聞いた事の無い言葉だが、聞いた事のあるような気がした。

 しかし、それも薄れて話に戻る。


「さて、準備は完了じゃ。心の準備は良いかの?」


「・・・寂しいだけです」


「向こうでも会える。ちょっとの辛抱じゃ」


「・・・はい」


 それでも寂しさが残る。

 だが、視界が暗闇に落ちた時には感じる暇も無くなった。

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