第十九話 涼華の答え
「まずは、わたしのことを好いてくれて、ありがとう。嬉しいわ」
涼華の言葉を、理沙は黙って聞いていた。
「……ただ、理沙が言った通り、わたしは鈴のことが好きなの。だから、理沙の気持ちには応えられないわ。……ごめんね」
それは、理沙にもわかっていた答えだ。
だからだろうか、胸が苦しくなっても、涙までは出なかった。
「……うん、聞いてくれてありがとう、涼華ちゃん。……一つだけ質問してもいい?」
「いいわよ」
「鈴ちゃんが、誰か別の人のことを好きだとしても、涼華ちゃんは鈴ちゃんのことを想い続けられるの?」
「六花でしょう?」
涼しい顔で答える涼華に理沙は驚いた。
「……知ってたんだ?」
「当たり前よ。わたしがどれだけ鈴のことを見ていると思ってるのよ」
「……それでも、あきらめないの?」
「あのね理沙、わたしの気持ちはその程度で折れるような
「そっ……か……」
そう言われると、納得するしかなかった。
「……涼華ちゃん、本当は鈴ちゃんを追いかける役、自分がやりたかったでしょう? ……ごめんね、わたしなんかの――――」
理沙が全部を言い終える前に、涼華が理沙の両頬をつまんで引っ張った。
「いひゃひゃ!? ひょ、ひょうはひゃん!?」
「あらごめんなさい、理沙が馬鹿なことを言うから思わず手が出てしまったわ」
涼華が理沙のほっぺたを解放する。結構な力が入っていたようで、引っ張られた箇所が赤くなっていた。
「ば、馬鹿なこと?」
「わたしなんか、ですって? 馬鹿じゃないの? あんたはわたしの掛け替えのない、大切な友達なのよ? それを鈴と比べて優劣をつける必要なんかあるわけ?」
その言葉が嬉しくって、理沙の瞳からポロポロと涙が零れていく。
気持ちを伝えたら、もう元の関係になんか戻れっこないと思っていた。
それも覚悟の上での告白だった。
でも、告白を受けた上で、それでもなお涼華は自分のことを大切な友達だと言ってくれた。
理沙にはそれがたまらなく嬉しかったし、ああ、やっぱりこういうところが格好良くて好きだなと、そう思うのだった。
「りょ、涼華ちゃん……ありがとう……ありがとうね……」
礼を言いながら涙を流し続ける理沙を、涼華はそっと抱きしめて、その背中を優しくトントンと叩いた。
涼華の腕に抱かれながら、理沙は心の中でただ一つだけ、涼華に許しを請うた。
(ごめんね涼華ちゃん……もうしばらくの間だけでもいいから……涼華ちゃんのことを好きでいることを許してね……)
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