第14話 サクラ
目障りだったカナコが消えてくれてせいせいしたと言いたいところだが、殺されたとなると流石に哀れに思う。
カナコの机から盗んだ、変ったデザインのハサミをどうするべきか考えていた。
ネットで調べたら定価5000円ぐらいする刃物専門店のものだった。こっそりカナコの机に戻そうと考えていたが、期間限定のものらしく今は出回っておらず転売すれば倍以上で売れるかもしれない……
「カナさんのハサミですよね?それ私物だしご遺族に渡した方がいいと思いますよ」
残業中の薄暗いオフィスで、カナの廃棄書類を持ったミミが音もなく背後に立っていたので、飛び退いた。
「か……形見にしようかなって?」
「ふーん………?いいの?かな?」
ミミは一瞬怪訝な顔をし、ぶつぶつ言いながら去っていく。
ヒタヒタと誰かが近づいてくる音がする。また、ミミがきたんだろうか。
正論おせっかいブスめ……ん?ミミは足音がしなかった。そう思い振り返った時だった。
よつん這いのカナが首を捻じ曲げてこちらを凝視していたのだ。
声が出ず、目があってしまい、そのまま動けなくなった。テレビの音声をスローにしたときのように低い声で何か言っている。
「アゲルよぅ」
カナは嬉しそうに口を三日月にして震えている。
その時、電気がついて我に返る。
カナは消えていて、入口にミミが立っている。険しい顔で入ってくるなりハサミを奪い取った。
「いま、ここにカナが……」
「よくよく考えたらカナさんとサクラさんあんま仲良くなかったじゃないですか!私がご家族に……あいやっアッチいっ!???うわわ、何?何?」
ミミが奇声をあげてハサミを床に落とすと、不自然にグネグネに変形していた。
ミミの手のひらは少し火傷して赤くなっている。
「なんか、胸が熱い……」
ミミは胸元のネームプレートが焦げているのに気づき慌てて外すと、裏側を覗き込んだ。
「裏側に入れてた御守の御札黒焦げ……」
突拍子もない状況に二人は顔を見合わせた。サクラは何がなんだか分からないが、部屋の空気が変わり、とにかく助かったのだと感じた。
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