第12話 忠 2

「おじちゃん!おじちゃん。モトヤが!モトヤが大変!」


 息子のモトヤが門限に帰ってこないので、ゲンコツを食らわせてやろうと待ち構えていたその時、玄関の向こうからチャイムを連打しながらモトヤの友人の妹のユイちゃんが叫んでいる。急いで扉を開け少女を迎え入れる。


「……はぁっ、はあっ、う、っ。」


少女は喉が乾いてすぐに声が出ない。


「モトヤがっ!みんな止めたのに……はっ……お地蔵さんけってこわして、そしたら急に岩に頭ぶっけて、手で穴を掘り初めて、頭と手から血がばーってでて……にーちゃん達がおさえてるけどモトヤずぅっと治らなくて、おじさんよんでこいて」


(あいつ!罰当たりな事を)


忠は妻に声をかけ、近所の男衆を連れて、前を走るゆいを追いかける。

到着して皆が諦めたようにふっと一瞬止まり、ハッと我に返りモトヤを抑えにいった。


しばらく遅れて妻が呼んだ坊さんが駆けつけて念仏を唱えている。


不自然に砕けた石像は、たしか馬頭観音だったはず、幼い少女には地蔵と観音も区別つくまい。ここには江戸時代か室町ごろにに屠殺所と埋葬地があり供養のために馬頭観音を置いたと伝え聞いている。


「モトヤはお墓壊したの?」


ゆいは半べそで震えながらモトヤが掘った穴の前に立ち、指さしている。

そこには、人間の頭蓋骨があった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る