第8話 タカシ 1

 カナが前から欲しがってたゲーム機を友人が譲ってくれた。彼女は大喜びで毎日ゲームをしている、時々二人で協力プレイしたりして楽しんでいた。


「カナ臭い……」 


(ゲームに熱中して昨日風呂入ってないのかな?)


カナは自分を嗅いで首をかしげる。


「え、アップルシトラスの匂いだけど?」


自分の匂いは分からないというからなぁ……


カナはちゃんと清潔にしているというが、日に日に臭いがひどくなっていく。

耐えられず、カナとは顔を合わせず夜中までどこかで時間を潰しソファで寝る日々がつづく。


「あ、タカシさんこんばんは」


会社近くのコンビニで会ったのは、カナの同僚のミミとか言う女だった。

ミミって美子って書くのに全くもって美しさの破片も感じないルックスで、幼稚なのか年寄りのなのかよく分からない言葉選びをする女だ。

引っ越し祝いにカナが一度家飲みに呼んだ時に話したことがある。

まぁ、別にお近づきにはなりたくないが面白い奴だとは思った。


「あ、ども」


ミミはなにか俺に思うところがあるという顔でしばらくこちらを見ていた。


「あの、タカシさん、カナコさんに会社休んで病院行くように説得してくれませんか?すごい調子悪そうなのに大丈夫、大丈夫言ってて心配で……」


「え、そうなの?」


「え、そうなのって?一緒に住んでますよね」


「まぁ、お互い色々あって顔を合わせてなくて……でも、言っておくよ」


「………よろしくお願いします」


ミミはまだ何か言いたげだ。


「あの大変失礼なのは承知で、私がおかしいってかもなんですが、タカシさん捨てるの忘れた牛乳?みたいな臭いする……何か病気?かもしれないのでお医者さん行った方がいいかも?……ほらあの、タカシさんさわやかイケメンみたいなキャラの人だから皆気を遣って言わないかもだけど、正直やばいです……!」


(ほんとに大変失礼だな……!)


その時、カナに対して自分が言ったこととほとんど同じという事に気づきハッとする。


(カナじゃなくて自分が臭かった……ってこと?)


カナに謝らなければ……


急いで玄関を開け、異臭を放つ塊を見て全てを思い出す。


普通に食後に一緒に遊んでいた時、カナが突然豹変し俺の首を噛もうとしてきた。

腕の肉を一部食いちぎられたと思う、必死で抵抗するうちカナの首を絞めていた。

カナは俺に殺されてとっくに死んでいたんだ。



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