第9話 元哉 3
「モトヤさんとタカシさんをどこかで以前を見た気がする」
そう絡んで来たのはタカシの彼女の同僚のミミとか言うやつだ。ナンパ?いやいやお前みたいなダサいモブ見てても覚えてないよ。
「うーん、気のせいか」
奴はあっさり引き下がって、台所に飲みを作りに行った。人付き合いが苦手なのかオシャレなカウンターキッチンでカフェ店員と化している。
俺もどちらかと言えコミュ障ゆえ、場の賑やかさに馴染めず、輪の中心のタカシとカナを遠巻きに眺めていた。
父が転勤族だったので、地元の仲間っていうのがほとんどいない俺には、幼なじみとの婚約を仲間に祝われるなんて夢のまた夢だ。さらに、タカシもカナも有名企業の正社員で美男美女。羨ましすぎる。あのミミとかいう芋女が同じ会社なのが信じられない。
「あ、私パートで正社員じゃないんで、とてもじゃないけどこんないいところに一人暮らしできませんよ。実家住みです」
一瞬、心を読まれたのかと思いギクリとした。
どうやらミミが実は近所の人とい言う話題が出たようだ。随分いいところに住んでるんじゃねーか、苦労もしないお嬢様かよ。
「100年?前ぐらいにひ~じいちゃんが、地主にの人に土地借りて代々そのまま住ませてもらってるんですよ。私が子供の頃はこの辺、飲み屋とパチンコ屋ばっかで小汚かったなぁ。そばの川なんかも昔は臭かったですから」
ミミは年寄りのように、しみじみと語る。
こいつもに地元と言えるものがあるのか……。
タカシとカナは、ミミに美味しい店について熱心に質問しているようだが、奴は外飲みしないので、ケーキ屋とパン屋しか知らないそうだ。
この美男美女が休日、楽しそうに、洒落た街を楽しそうに歩いている風景を想像した時、妬ましくて悔しくて俺と同じぐらいには、不幸になればいいのにと思った。
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