第4話 元哉 1

 元哉は帰りたかった。

 

 大学の友人のタカシ以外とは知人程度の仲なのに、何故かタカシの同郷の集まりにうっかり巻き込まれてしまったのだ。

 皆もう成人した社会人だというのに、マサトが心霊スポットで地蔵を蹴ったと自慢げに話していてひどく悲しくなった。田舎は時間が止まってるのか?いや失礼……俺も舎者出身だった。

 声が大きかったのか、横のボックス席の女子に怪訝そうに見られた。すみません……


 ラストオーダーも過ぎたので店を出る支度をしていると、マサトが財布を取り出し、立ち上がった。


「臨時収入あったからおごるぜ」


 仲間達は大歓喜したが、何故か俺は素直に喜ぶ気になれなかった。

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