第7話 赤と青の乱舞

ビーッビーッと、アラームが鳴った。ドローンが呪獣を発見したのだ。

 「桜市b地区に呪獣が出現」

「ローズ騎士団、出動ですわ」「了解」

 騎士団は桜市b地区に向かって飛んで行った。


 桜市b地区には大量の狼人間のような呪獣が人を襲っていた。

「ウルブ星人が呪獣化したやつだね」

 ゲインズが言った。

「ウルブ星人って?」

「異星の狼から進化した種族のことだよ」

 ゲインズは一美の質問に答えた。

「とにかく、何人かに別れましょう。ビリーさんとザディームさんはあちらの方で、ゲインズさんと一美さんは向こうで、わたくしはここで戦いますわ」

「了解」

 というと騎士団はそれぞれの場所へ向かった。


 ヴィヴィアンがウルブ星人呪獣を倒し終えたところだった。

 突然黒い球がどこからともなく飛んできた。

 ヴィヴィアンは体をそらしてそれを難なくかわした。

 すると今度は忍者装束にメタリックな両手足を持ったウルブ星人呪獣が現れた。

「我が名はルナ―シ。隊長である」

「ついにリーダーのお出ましですわね」

 ヴィヴィアンとルナ―シが対峙している時、物陰から逃げ遅れた少女が顔をのぞかせた。

「丁度いい」

 ルナ―シは手から黒い球体ナイトメアボールを出し、少女に向けてそれを放った。

「危ない」

 ヴィヴィアンは少女に覆いかぶさるようにして彼女をかばった。

 ナイトメアボールがヴィヴィアンの体を直撃した。

 ヴィヴィアンはその場に倒れた。

「団長」

 一般兵を倒し終えた一美たちがやってきた。

「援軍か」

ルナ―シはそう言うと去っていった。


 ヴィヴィアンは惑星ドラゴにあるメディカルセンターに搬送された。

 ローズ騎士団のメンバーは救急隊員と一緒に惑星ドラゴに向かった。

「団長の過去を一美ちゃんに知ってもらいたいだけれども」

「ヴィヴィアンさんの過去って?」

 ゲインズは一美にヴィヴィアンの過去を語った。


 ヴィヴィアンは港湾都市ローズマリーに生まれた。

 ヴィヴィアンの家は比較的裕福な一般家庭だった。

 現在の口調であるお嬢様口調は好きだったテレビ番組の影響だった。

 そんな彼女を悲劇が襲った。

 ヴィヴィアンが7歳の時、難病で両親が亡くなった。

 ヴィヴィアンは祖父母に引き取られた。

 またしても彼女に悲劇が襲った。

 飛行機事故で祖父母が亡くなった。その時ヴィヴィアンは11歳だった。

 ヴィヴィアンはアバロン市にある親戚の家に引き取られた。

 18歳の時、短期大学に入学した。サークルは中学、高校の部活動と同じ水泳部だった。

 ヴィヴィアンは短期大学を出て警察官になった。そして、21歳の時、警察の特殊部隊であるローズ騎士団に入団した。

 23歳の時地球へ派遣されることが決まった年、事件は起こった。あのアバロンのテロ「グラウンド・ゼロ」が起きた。またしても、ヴィヴィアンは家族を失ってしまったのだ。

 27歳の時、ローズ騎士団地球部隊の団長として地球へ派遣されたのだった。


「そうだったんだ」

 一美はヴィヴィアンの過去を知って感動した。


 ヴィヴィアンは闇の中で一人歩いていた。そこにはヴィヴィアンの両親がいた。

「お母様。お父様」

 ヴィヴィアンは走り出したが、いつまでたっても届かない。ヴィヴィアンの両親は闇の中へ消えていった。

 ヴィヴィアンが振り向くとヴィヴィアンの祖父母やローズ騎士団のメンバーがいた。

 ヴィヴィアンは祖父母や騎士団の方へ走り出したが、いつまでたっても届かない。

 祖父母と騎士団のメンバーは闇の中へ消えていった。

「いやぁぁぁ」

 ヴィヴィアンは一人闇の中で泣き続けた。


 一週間後、ヴィヴィアンは目を覚ました。彼女は騎士団のメディカルセンターの一室にいた。

「気が付きましたか」隣の椅子にエイルが座っていた。

 ローズ騎士団のメンバーとエイルが駆け付けてくれた。

 ヴィヴィアンはエイルに抱き着いた。エイルはヴィヴィアンの頭をそっと撫でた。


 ヴィヴィアンが退院して間もなくドローンが呪獣の出現を感知した。その呪獣とはルナ―シであった。

「行きましょう、一美さん」「はい、ヴィヴィアンさん」

 一美とヴィヴィアンは出現ポイントへ向かった。


 一美とヴィヴィアンが駆け付けるとそこにはルナ―シと大勢のウルブ星人呪獣がいた。

「あなた一週間前のこと、覚えていますの?子供を巻き込んで、お下品ですわ。覚悟なさい」

「者ども、かかれ」

 ウルブ星人呪獣が一斉に襲い掛かかる。

 一美はファイアバレットをヴィヴィアンはウォーターバレットを放つ。

 それぞれ呪獣の腹部にヒット。

「うわおぅ!」

 呪獣は悲鳴を上げながら絶命、爆発した。

 一美はフレイムテンペストを放つ。炎の竜巻が呪獣たちを飲み込んだ。

「負けていられませんわね。ウォータースパウト」とヴィヴィアンは叫ぶと、水の竜巻が出現、水の竜巻は呪獣たちを片っ端から飲み込んでいった。

 呪獣たちは一美とヴィヴィアンを羽交い絞めにする。

 ルナ―シは手からナイトメアボールを放つ。

 一美とヴィヴィアンは背中からエレクトリックヴァレットを放ち呪獣たちを感電させる。

 呪獣たちの手が緩んだすきに真上に飛んで回避、そして、ナイトメアボールが直撃したところをファイアバレット、ウォーターバレットで攻撃した。当然のこと呪獣たちは絶命、爆発した。

 ついに、ルナ―シ以外の呪獣は全滅した。

「あなた一人ですわ」

「ぬうぅ、役立たずが」

 ルナ―シはライトヴァレットを乱射する。

 一美とヴィヴィアンは左右に高速で移動してかわし、ルナ―シめがけてライトバレットを放つ。

 ルナ―シはそれを真上に飛んでかわしたが、それを待っていたといわんばかりに、一美は右手で、ヴィヴィアンは左手でパンチを繰り出す。そしてルナ―シがひるんだところにヴィヴィアンはウォーターライフルを放つ。秒速1360m40ℓの高圧水流はルナ―シを貫いた。

「あばぁ!」

 ルナ―シは断末魔の悲鳴を上げ絶命、爆発四散した。


 翌日、ヴィヴィアンは故郷の街ローズマリーに墓参りに来た。

「私は良きチームに恵まれて幸せですわ」

 そう言うとヴィヴィアンは墓に花を供え、墓の前で手を合わせた。そして彼女はローズマリーを後にした。


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