第6話 雷電の貴公子

「ところでザディームがどうやって大量のCDを買ったと思う?」

 ゲインズは一美に質問した。

「それはね、結論から言うよ。それは地球人擬態装置を使って店に行き、換金システムで地球のお金に変えて、CDを買ったということだよ」

「へー、そうなんだ」

「これが地球人擬態装置だよ」

 ゲインズはポケットからUSBメモリほどの大きさの機械を取り出し、装置のボタンを押した。

 すると、眼鏡をかけた銀髪で知的な青年が現れた。

「これが地球人態さ」

 ヴィヴィアンとビリーが入ってきて擬態装置のスイッチを押した。

 ヴィヴィアンは金髪で青い目の女性に、ビリーはとがった耳を持った金髪の男性にザディームは緑色の髪を持つ男性に擬態した。

「次に換金システムだよ。ついてきて」

 一美は宇宙船内のとある場所に来た。ゲームセンターなどにある両替機のような装置が置いてあった。

「これが換金システムだよ。この機会に銀河系のお金を入れるとその金額に応じた地球のお金が出るよ。もちろん、その逆もできるよ」

 ゲインズは1000Gゴールド札を換金システムに入れると1000円札が出てきた。

「銀河系では1円は1Gゴールド、100円は100Gゴールドになるよ」

「そうなんだ」

 一美は納得した。


 数日後、S県楓市のテーマパークで人々が行方不明になる事件が多発していた。

「特定の場所で行方不明か。行方不明者の共通点は楓市のテーマパークにいたことだけか」ザディーム。

「一美さん、ビリーさん捜査してくださる?」ヴィヴィアンはそう指示した。

「えっ」「分かった」一美は戸惑ったが、ビリーは素直に了解した。


一美とビリーは楓市のテーマパークに行った。もちろんビリーは地球人に擬態してだ。

 二人はテーマパーク内のベンチに座った。二人は座ったままじっとしていた。

(怒ってるのかな。早く帰りたい)

 一美はビリーに苦手意識を抱いていた。

 そして5分、また10分経過しようとした時、ビリーが立ち上がりどこかへ行ってしまった。

(やっぱり怒ってるのかな)

 しばらくするとビリーが帰ってきた。両手にアイスクリームの乗ったコーンを持って。

 ビリーはアイスを一美に渡した。

「あ、ありがとう」

 そしてアイスを食べ終えたとき、ビリーは何かを発見する。170㎝くらいの全身黒ずくめの男2人組が歩いていた。

「いくぞ」

「はっ、はい」

 ビリーと一美は彼らの後をついていった。


 二人組についていくと3mほどの長方体の機械があった。

「量子転送装置だ」

「量子転送装置って?」

「誰だ」

 2人組が一美とビリーの存在に気付いた。

 2人組は一美とビリーに首輪と手錠をかけて拘束し、量子転送装置に転送した。


 一美とビリーは檻に入れられた。そこには、今回の事件の被害者たちが大勢いた。

「この人たちはあの2二人組に」

「そうだな」

 そこにあの2人組が現れた。

 2人組が一美とビリーに近づいた瞬間、ビリーは2人組の片割れを殴る。

「貴様、何をする」

 2人は頭部と羽がハエの呪獣となった。

「やはり呪獣か。その姿からすると惑星フラインの者だな」

 ビリーは戦闘形態に変身する。一美と自身にかけられた手錠と首輪を破壊した。

 一美はAリングのロックを解除し、ボタンを押した。炎の立体映像と空中に投影された赤いディスプレイに包まれ、戦闘形態であるドラゴンナイトAに変身した。

「貴様ら、地球人ではなかったのか」

「くらえ」

 呪獣たちは手からウインドバレットを繰り出す。ビリーは体をそらしながら難なくかわし、エレクトリックショットで攻撃する。300万Vの高圧電流が2人の呪獣にヒットした。

「だだだのだ」と悲鳴を上げ絶命、爆散した。

「行くぞ」

「はい」


 一美とビリーは次々と襲いかかてくるフライン星人呪獣を倒していた。

 司令室にたどり着くと、そこにリーダー格のフライン星人呪獣ハマーギン・ダダダとそこ部下がいた。

「貴様が親玉だな。拉致した人々を返してもらおうか」

「それはできないのだ。こいつらは貴重な売り物なのだ。地球人はほかの異星人と違い特別な種族なのだ。邪魔をするなら消えてもらうのだぁ」

 ハマーギンは部下ともども襲い掛かってきた。

 一美はハマーギンをファイアバレットで攻撃した。

「やった?」と安どした瞬間、倒されたと思われたハマーギンが現れた。

「今の攻撃は全然当たっていないのだ」

 ハマーギンは攻撃が当たる瞬間、ソニックモードというアームズで炎をかわしていたのだ。

 一美は再びファイアバレットを連射する。が、ハマーギンにはすべて避けられてしまった。

 攻撃が当たるどころか、ハマーギンのパンチが飛んでくる。

 一美はパンチをガードしたが吹き飛ばされてしまった。

 ある程度のショックを吸収する騎士団の戦闘服を着ていたからガードできたが、それを着ていなかったら骨折は免れなかったであろう。

(ソニックモードは音速のスピード、つまり気温が15度の時、秒速340mで動くことができるアームズなのだ。ソニックモード発動中は空気抵抗分パワーが上がり、耐熱性も上がるのだ。ソニックモード発動中は殴る、蹴るといった強化系アームズしか出せないが、それでもお前を殺すには十分なのだ)

「あとは任せろ」

 部下を倒し終えたビリーが前に出た。

 ビリーはエレクトリックバレットを放つ。

「こんな攻撃」

 ハマーギンは右に移動し、エレクトリックバレットをたやすくかわした。

 ビリーは再び、エレクトリックバレットを放つ。

 ハマーギンは左に移動してかわす。

 ビリーはまた一発一発と放っていくが、ハマーギンはかわしていく。

 ビリーのエレクトリックバレットをハマーギンが横に動いてかわそうとした時だった。 

 ハマーギンは司令室の壁にぶつかった。

 ハマーギンは司令室の隅に追い詰められていた。

 ビリーはそれを狙ってハマーギンを誘導していたのだ。

「貴様はそれを狙っていたのだ?」

「気づくのが遅い」

 ビリーは左手の中指、人差し指、親指を互いに直角になるように立てて、エレクトリックショットを放つ。300万Vの高圧電流がハマーギンの体を貫いた。

「のだぁぁぁ」

 ハマーギンは絶命、爆散した。


 事件解決後、拉致された人々は全員無事に解放された。

 拉致された人々の記憶は騎士団によって消去された。

 テーマパーク内の量子転送装置も撤去された。


 そして、宇宙船内では、

「少しは仲良くなれました?」とヴィヴィアンは尋ねた。

「少しは」

 一美は少しはにかんだ。

 一美はビリーに近づき、

「あの時はありがとう」とアイスのお代を渡した。換金システムで換金して。

「感謝する」

 ビリーは少し笑った。

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