第5話ザディーム・キミノルフ:オリジン
金曜深夜3時のことだった。
トラックを運転中のドライバーはいつものように高速道路を走っていると、白い何かを発見する。
「なんだあれは」
ドライバーが目を凝らしてみると白い翼を持った女性の人魚だった。
人魚は歌い始める。すると前にいた自動車がUターンして逆走をした。その数6台。
6台の自動車たちは次々とトラックめがけてに突っ込んできた
自動車は次々とトラックにぶつかり大爆発した。
それを見ていた人魚はあざ笑うかのように消えていった。
翌朝、一美は新アームズの開発に精を出していた。
そして「フレイムテンペスト」と叫ぶと炎の竜巻が出現した。
「できたぁ」「よくできたね」「すぅー」
新アームズの完成に騎士の面々やスーも喜んだ。
「ところであれは何?」
一美の指さした先に、四方八方にレンズの付いた青い球状の機械があった。
「これは全方向球体ドローンというカメラ付きドローンだよ。あちこちについてるレンズで360°映像を映すことができるんだ。怪獣を発見するときなどに必要なんだよ」
「そうなんだ」
一美は納得した
突然アラームが鳴った。桜市のB地区で怪獣が街を襲っている目撃情報が入った。
「ローズ騎士団出動ですわ」
「了解」ローズ騎士団は桜市B地区に向かった。
桜市B地区には吸血蝙蝠そっくりな怪獣ヴァンバットンの群れが暴れていた。
「この怪獣には強力な病原菌をもっていますわ。人々が襲われる前に駆除ですわ」
「まずはこいつらを一か所に集めないとな」
ザディームはそう言うと「サウンドアロー」と叫ぶ。
すると、サウンドアローの音波にひかれたのかヴァンバットンの群れは一か所に集まった。
「今だ」
一美はフレイムテンペストを放つ。炎の竜巻がヴァンバットンの群れを焼き尽くした。
「やった」
ヴァンバットンを退治した後、白い防護服に身を包んだドラゴ星人が現れた。
「あの人たちは誰?」
一美はザディームに訊いた。
「あれはローズ騎士団の後処理チームだ。怪獣や呪獣の残骸処理を行ってる」
「お疲れ様ですわ」「お疲れ様です」
残骸処理が終わった後処理チームは帰っていった。
宇宙船に帰ってくると、ザディームはテレビを見た。
「なんだこの音楽番組は!」
「どうしたの」
ザディームが見ていたのは『みなさんのうた』だった。
『みなさんのうた』とは5分間の子供向け歌番組だ。
「地球にもこんな曲があったのか、あいつらにも聞かせたかったな」
「あいつらって?」
「バンドのメンバーさ。4年前の呪獣によるテロで死んじまった」
「そうなんだ」一美は悲しい声で言った
ザディームは自らの生い立ちを語った。
23年前、ザディームは音楽の街エーデルワイスに生まれた。
高校時代、後のバンドのメンバーと出会った。バンド名のエーデルワイスは彼らの生まれた町の名前からとった。
学園祭は彼らのステージだった。
ザディームは大都市アバロン市にある大学に進学した。大学でもエーデルワイスのメンバーと一緒であった。
だが、幸せな時間は長くは続かなかった。
祖父の葬式でエーデルワイス市に戻らなくてはならなかった。
ザディームがエーデルワイス市にいる間、それは起こった。
呪獣によるあのテロ「グラウンド・ゼロ」であった。
アバロン市はすべて壊滅、犠牲者の死体すら残らず消滅した。
その中にエーデルワイスのメンバーもいた。
ザディームは決心した。呪獣に復讐すると。
「そうだったんだ」
一美はザディームに同情した。
ザディームが生い立ちを語った後、ゲインズがやってきた。
「金曜深夜三時の事故の原因が分かった。自動車に乗っていた生存者の発言によると『翼の生えた人魚』が出てきて歌を歌っていたとのことだよ」
「ヴァンバットンの大量発生は」
「おそらくそいつが原因さ」
アラームが鳴った。呪獣の目撃情報が入った。
「ローズ騎士団出動ですわ」
騎士団のメンバーは耳栓をして出撃した。
騎士団が駆け付けるとあの翼の生えた人魚がいた。
人魚は歌を歌う。
「耳栓しているから聞かねぇよ。なあみんな」
ザディーム以外の四人はなぜか固まって動かない。
「どうしたんだ?みんな」
「十分に効かなかったのか?」人魚の方も戸惑った。
「おい、みんなに何しあがった」
人魚はザディームの言葉を無視し、4人に向けてウォーターバレットを発射する。
ザディームはウォーターバレットを発射する。
高圧水流同士がぶつかり合い相殺された。
「こっちだ」
ザディームは横に移動しサウンドアローを放つ。
60デシベルの音が人魚の鼓膜を襲った。
人魚の姿から、頭がミサゴ(鷹の仲間の鳥)羽毛に包まれた女性の上半身、うろこに覆われた日本の足を持つ呪獣オスプ星人ヒナンスに変わった。
「くっ」
「そういうことか」
ザディームはカラクリが分かってきた。
「お前の専用アームズは『人魚の姿を見た、また歌を聞いたやつを幻術にかける』やつだな。だが、その幻術は個人差があるようだな」
ザディームはヒナンスめがけて、手からサウンドアローを放つ。
超音波同士の共鳴によってできたまっすぐに飛ぶ音の矢がヒナンスにヒットした。
「おのれ」
ヒナンスは右手からウインドバレットを放つ。
ザディームは高速で右に動いてかわし接近、ヴァイブレーションパンチを繰り出す。
振動をまとったパンチがヒナンスのほほにヒットした。
ヒナンスは起き上がってパンチを繰り出す。
ザディームはそれを受け流して、右手からサウンドアローを放つ。
ヒナンスがひるんでいるすきに、ザディームはヴァイブレーションパンチでヒナンスの腹をぶん殴った。
「ぎゃあああっば!」
殴られたヒナンスは悲鳴を上げながら絶命、爆発した。
それから数日後、一美が学校から帰ってから宇宙船に行くと、ザディームと大量のCDがあった。しかも『みなさんのうた』に使用された曲ばかりだった。
「うわ、何これ?」
「こんなものまであったのか、『みなさんのうた』は奥深いな」
『みなさんのうた』マニアになったザディームを見て、一美は呆れるのであった。
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