第4話 ファイアライフル

 惑星ティアラ ヒト型異星種族ティアラ星人が暮らす惑星でそれは起こった。

 ある夜、OLが家に帰る途中のことだった。彼女は誰かにつけられていると気づいた。彼女が振り向くと誰もいない。

「気のせいか」と再び歩き始めると、フードの男がOLの跡をついていく。OLが再び振り向くと彼女の目の前に赤い鎌がせまっていた。

「きゃあああっ」OLの悲鳴は夜の街に消えていった。その後彼女の生きた姿を見た者はいなかった。


 地球では、

「これから専用アームズについて教えるよ」ゲインズは一美に講義していた。

「専用アームズとは獣戦士の素養によって習得できる自分オリジナルアームズのこと。限界や個人差はあるけど、獣戦士は努力次第でいくらでも強くなれる。獣戦士は強ければ強いほど強力なアームズを習得できるんだ。専用アームズと言っても固有の能力ではなく、別の獣戦士が全く同じ専用アームズを習得する場合があるんだ。専用アームズを習得することでナイト級の証明の一つとなるんだ」

「そうなんだ」一美はノートにメモした。

「専用アームズはその人の個性、才能、特徴を表すんだ。また祖先の能力も専用アームズなんだ。例えば犬型異星人なら人間の一億倍の嗅覚のアームズなんだ」

「そうなんだ」一美はノートにメモした。

「ローズ騎士団団員の専用アームズは、団長が水流系、ザディームが音、ビリーが電気系、そして僕が金属。口で言ってもわかりにくいから、実際にやってみるよ。団長お願い」

 ゲインズはそう言うと戦闘形態のヴィヴィアンが部屋に入ってきた。

 ゲインズはスピードガンを手にヴィヴィアンに合図を出した。

 ヴィヴィアンは「ウォーターライフル」と叫ぶと掌から高圧水流が出た。

「はい、秒速1360m」

「ウォーターライフルは秒速1360m=時速4896㎞の高圧水流を出すアームズですわ」とヴィヴィアン。

「では僕のアームズを教えるよ」と言うとゲインズは戦闘形態になった。

 ゲインズは「ソードクリエイション」と叫ぶと、金属製の床から剣が現れた。それに比例して床がくぼんだ。

「ソードクリエイションは物体の形を剣の形に変えるアームズさ。剣の重量は切り取った材料と同じなんだ」

「すごいすごい」と一美は驚いた。

「専用アームズには専用アームズしかない属性があるんだ。その属性は氷雪系と幻術系の2つ。氷雪系は原子つまり物質を構成するものの振動を減速させることで熱を奪って発動できるんだ。冷気を操ったり、氷塊をぶつけたりするアームズさ」

 一美はノートに氷雪系の説明をメモした。

「幻術系は相手の脳に催眠術をかけて影響を及ぼすアームズ。幻覚や幻聴などの五感を支配することができるんだ。ただ映像を投影するホログラムヴィジョンとは違うアームズなんだよ」

 一美はノートに幻術系の説明をメモした。

「専用アームズは基本アームズと違って、威力のハイロウができないアームズがあるんだ」

 一美はノートにメモした。

「一美ちゃんは光線系のアームズのことを覚えてる?」

「光線系はレーザー光線やホログラムなどの光を使ったアームズのことだよね」

「そう、そして威力のある攻撃用の光線系アームズは、『可視光線』と『赤外線レーザー』を同時に放つアームズ。可視光線は人間の目に光として見える電磁波で波長の長さによって長さによって7つの光に分けられる。波長の長い順に赤・橙・黄色・緑・青・藍色・紫。赤外線は可視光線よりも波長が長く人間の目に見えないが破壊力はあるんだ。威力のある攻撃用光線系アームズで発射される可視光線の色は獣戦士の素養によって異なり、火炎系なら赤、水流系なら青、電気系なら黄色、風系なら緑、光線系なら白、強化系なら紫、氷雪系なら水色、幻術系なら桃色の傾向があるんだ」

「そうなんだ」

 一美はノートにメモした。

「まずは何の属性に向いているかだね」

 そういうとゲインズは台に置かれた血圧測定器のような機会を持ってきた。

「この機械は手を入れることで何のアームズに向いているのかを調べることができるんだ。これは自分がどの属性に向いているか色でわかるんだ。赤が火炎系、青が水流系、黄色が電気系、緑が風系、白が光線系、黒が強化系、水色が氷雪系、桃色が幻術系だよ」

 一美は機械に手を入れる。するとすぐに結果が出た。

「赤色、火炎系だね。火炎系ならこの修行法だね」

 ゲインズは辞書ほどの大きさの赤いブロックを出してきた。

「専用アームズを使ってこのルビーを溶かしてみよう。ちなみにルビーの溶ける温度は2050℃溶かすには専用アームズが必要だよ」

「はい、やってみます」

 とは言ったものの、なかなか溶けない。何度やっても2000℃のファイアバレットばかりが出てくる。

「大丈夫、焦らなくていいよ」とゲインズは励ました。

「獣戦士は遺伝子操作によって怪獣モンスターの力を持った人間、すなわち獣戦士は人間型の怪獣。獣戦士は己の肉体を変形させることで戦闘形態ファイティングフォームになれること。獣戦士の強さは非戦闘形態、すなわち通常形態の強さに比例すること。通常形態の強さは肉体的な強さだけではなく、精神的な強さも含まれること。通常形態を鍛えることで獣戦士は強くなること」

 一美はゲインズに教わった獣戦士の基本知識を言いながら何度も挑戦した。


「獣戦士の変身にはテロメアが消費されない。そのためいくら変身しても細胞は老化せず、体力が続く限り何回でも戦闘形態になることができること。獣戦士にはアームズの反動(反作用)の大半を吸収できる機能があり、高速移動による加速度(加速や減速の勢い)による衝撃をほとんど吸収できる。そのため、車が急発進すると体がシートに押し付けられるように脳が押し付けられることにはならないこと。獣戦士のアームズは、自分の意志がアームズ発動のトリガーとなる。自分の意志で戦闘形態となるため、反射的に攻撃することができないこと。無意識に戦闘形態になったり、アームズが暴走することがないこと。獣戦士の技術は再生医療で開発されたこと。獣戦士の治癒能力は強く、手足を欠損しても、適当な手足を引っ付けることで自由に動かすことができ、一般人の全治10週間の骨折でも獣戦士の場合は一週間で完治すること。」


 1カ月後、桜市で通り魔事件が発生した。凶器は鋭利な刃物。

 変死事件として新聞のトップを飾った。

 事件は当然ローズ騎士団の耳にも入っていた。


 夜、金髪の女性が歩いていると、あのフードの男が現れた。

 フードの男は女性を鎌で切る。が、切ることができなかった。なぜならそれはヴィヴィアンが投影したホログラムヴィジョンであったからだ。

「切っても無駄ですわ」

 ヴィヴィアンは颯爽と男の前に現れた。

「やはりあなたですわね。連続通り魔事件の犯人、呪獣マンティ星人チャッキーズ・ジャクリン・カミング」

 男は擬態装置を切る。そこには、カマキリを人型にした呪獣が現れた。

「お前は騎士団のやつだな。楽しい時間を邪魔するなァ」

「罪のない市民を殺して楽しいなんて、お下品ですわ」

 チャッキーズは「ルビーサイズ」と叫ぶと両手の甲から長さ1mの赤い鎌が生えた。

 ヴィヴィアンはウォーターバレットを放った。秒速1020mの水流がチャッキーズめがけて飛んでくる。しかし、チャッキーズはルビーサイズでウォーターバレットをガードした。

「ハッハッハ、その程度か」

 チャッキーズはルビーサイズを振り下ろす。ヴィヴィアンは高速で後ろにジャンプして回避した。

(速い。でもかわせないスピードではありませんわ)

 ヴィヴィアンはウォーターライフルを放とうとした時、

「団長」ザディーム達がやってきた。

「チッ、援軍か」

 チャッキーズは量子転送装置で消えるように逃げてしまった。


 騎士団の宇宙船では一美が新アームズ開発に奮闘していた。一美は「ファイアライフル」と叫ぶと指先から2500℃の炎が出た。そしてついに、ルビーが溶けた。

「できたぁ」

 ついに新アームズ「ファイアライフル」を習得したのだった。

 それを見ていたゲインズは嬉しそうに「合格だよ」と言った。

「ところでもう一発撃てる?」

 ゲインズは一美の目を見て

「大丈夫、一発撃てたんだからもう一発撃てるさ」

「やってみます」

 一美は頷いた。


 金曜日の夜、チャッキーズが人を襲おうと路地裏を歩いているとき「待って」と声がした。声の主は一美だ。

「誰かと思えばかわいこちゃんじゃねーか。切らせてもらうぜ」

 チャッキーズは両手の甲からルビーサイズを生やし襲い掛かかる。

 一美はファイアバレットを放つ。2000℃の炎がチャッキーズめがけて飛んでくる。だが、チャッキーズはこれをルビーサイズでガードした。

「そんなんじゃ俺のルビーサイズは溶かせないぜ?」

 チャッキーズはルビーサイズを振り下ろす。一美はジャンプしてかわす。再びチャッキーズはルビーサイズを振り下ろす。一美は後ろに下がってかわす。

 チャッキーズがルビーサイズを振り上げる瞬間、一美は右手からファイアライフルを出し、水平に右手を振ってルビーサイズを溶断した。

「俺のルビーサイズがぁぁ。くそぉぉ」

 チャッキーズは怒り狂って、右手でパンチを繰り出す。一美は左に移動してかわし、ファイアライフルを腹へぶち込んだ。

「ちくしょおぉぉぉ」

 チャッキーズは絶命し爆炎の中に消えていった。


 宇宙船の司令室では、ローズ騎士団は一美の新アームズ開発を祝った。

 ザディームは「専用アームズで無理せんように」と言った。

「すまない」とゲインズは部屋から出ていった。その後、部屋の外でゲインズの笑い声が響いた。

一美は引いているときザディームは「ゲインズはああいうやつなんだよ」と笑った。

「そうなんだ」と一美は納得した。


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