第4話

午後になり、魔法の訓練から剣術、体術などの訓練に変わった。

勇者たちはオルト隊長に習って稽古をしている。

俺は少し気になったことがあったので、街に赴いた。



相変わらず、城下町は賑わっている。

俺は賑やかな場所からはずれた路地に向かう。ここは空気がいつもどんよりしている。

目的地に到着した。


整体院タルト。店の前の看板にでかでかと刻まれている。

俺は雑に扉を開け、中へと入った。



「いらっしゃい、ってゼスじゃない。突然どうしたのよ」


カウンターに座っている白衣に花柄のエプロンをした巨漢の正体不明生物は俺に近寄って来た。


「相変わらず、逝かれた格好してるな」

「そんなこと言わないでよ。私のお気に入りなんだから」



俺にウインクをするのはここの店主のエギール。

自称乙女の化け物だ。


「それで何かようなのかしら?検診ってわけじゃないでしょ」

「ああ、実は少し気になることがあってな」


俺は昨日あったことについて話した。


「別に口止めされているわけじゃないから言うけど、昨日勇者召喚を行ったんだが、召喚に用いたのが城にいる兵士たちの魔力なんだが、俺の魔力も吸われた」

「勇者召喚なんてあったのね。となると魔王が復活したってことかしら。そろそろだとは思っていたけど。一旦あなたが気になっていることについて話ましょうか。あなたの魔力が吸われたって言ったわね、それはありえないはずよ」


やっぱりそうだよな。



「あなたはまだ完治していないわ。自分で魔力を使うことすらできないのに他人があなたの魔力を使うなんて不可能よ」

「店長騒いでどうかしたんですか?」


店の奥から妙齢の美女が出てくる。

彼女はミリー、ここの店員だ。この店はミリーとエギールの2人で切り盛りしている。


「ゼス、会うのは久しぶりね。前にあなたが店に来てるとき私いなかったもんね」

「そうだ、ミリーちゃんにも話を聞いて見ましょう」


エギールはミリーに俺がさきほど話したことを伝えた。

彼女は真剣に話を聞いてくれた。


「ゼスが魔力を使えないのは魔力穴が何かに塞がれているからですよね。その何かが一時的になくなったと考えれば、魔力が吸われてもおかしくないはず」

「でもねぇ。今まで色々なことをしても魔力が溢れ出なかったのに、何がきっかけで栓がはずれたのかしら」


エギールは俺に心当たりがあるか尋ねるが、ない。


「ねぇおととい何かした?」

「そういわれてもな。いつも通り仕事してそれが終わったらテミスさんと飯食って酒飲んで帰って寝たぞ?」

「あなたの日常を過ごしただけね」


エギールは考えているがやはり原因は思いつかないらしい。

すると、ミリーが口を開く。


「ゼス、その日ってセックスした?」

「ああ、したけど関係あるのか?」

「魔力ってのはいわば生命力と変わりないものなのだけど、魔力が詰まっていることは生命力が外に出ていないのと同義なの。それが射精という生命力そのものを出したならそこから魔力が漏れ出してもおかしくはないと思わない」

「なるほどね。ミリーちゃん、いい考えよ」


おいおい、俺の魔力はちんこから出たのか?

だとすると王女は俺のちんこから出た魔力で勇者召喚したのか。

なんか王女に申し訳ない。



「そう考えると勇者ってゼスと王女様の子供になるのかしら?」

「おい、やめろ。それに俺以外からも魔力吸ってんだ。そん中にはちんこから魔力出してるやつもいるだろ。つまり誰の子供かわからないだろ」


なんか王女がすごいビッチっぽいな。



「話が逸れたけど、これは仮説の域を出ないです。何か他の要因があってゼスの魔力が漏れたってことも十分にありえますし」

「なら試してみればいいのよ」

「は?試すって」

「だから射精した後にゼスの魔力を私たちに送れるかどうかよ。さぁ射しなさい」


俺はその言葉にあっけにとられた。



「さすが、店長!やっぱり乙女はすごいですね」

「そんなに褒めても何も出ないわよ。ということでゼス、店の奥で抜いて来なさい。なんなら私が手伝ってあげましょうか?」

「勝手に話を進めんじゃねぇよ。いきなり抜けとか言われても無理だ、勃たない。あと俺1人ではしないんだよ。ちなみにエギールお前が手伝ったところでマイナスにしかならん」

「なら私が手伝ってあげようか?この説考えたの私だし」


ミリーがあっけからん様子で俺に提案してきた。


「まじで言ってるのか?俺としては嬉しい限りだが」

「店長、ゼスの許可も取れたので奥の部屋使いますね」

「わかったわよ。じゃあ、ミリーちゃんよろしくね」



エギールはぐっと親指を立てる。

それからミリーはごく自然な感じで俺の手を引いて、奥の部屋に向かった。


「いいわね。私も久しぶりに高まってきちゃった!」


去り際聞こえたエギールの言葉は聞かなかったことにした。

じゃないと考えただけで萎えてしまう。


店の奥にある一室、普段俺が整体を受けるときに使われている部屋だ。施術に使うための簡易なベッドが1つ。


「じゃあ、ゼス服脱いでベッドに寝ていて。あとはお姉さんに全部まかせて」


俺は服を脱ぐ。ミリーはというと服を脱がず、ニコニコと俺の体をみている。


「ゼスもいい体になったね。数年前はガリガリだったのに」


ミリーは俺の腹筋を指でなぞる。形容しがたい感覚に襲われる。


「兵士の訓練の賜物だな」


平然を装って答える。


「そっか。頑張ってるんだね」


ミリーは微笑む。


「ミリーこそ数年前よりでかくなってるだろ」

「私も成長したってこと」


俺はミリーのたわわな胸を触る。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




行為が終わった後、2人でベッドに倒れる。

お互い結構な量の汗をかいた。風呂入りてぇ。


「このまま魔力吸いとるのか?」

「いや、この場でやるよりも店長の前でやる方が色々わかるはず、あの人はすごい人だから」


やることをやった後、水を浴びて、綺麗になってからエギールの元へ戻った。

エギールが羨ましそうに俺とミリーを見ていたが気色悪いので目は合わせないようにする。


「それじゃあ、ミリーちゃんよろしくね」


ミリーは目を閉じ集中する。

エギールでなくてミリーが行うのは、エギールが見た方が何が起こっているのかよくわかるからだ。

こんな見た目でも一流ってことだな。


少し経つと俺から魔力が吸われているのを感じた。


「あ、あぁぁぁん!!!!!!」


ミリーの嬌声が店中に響渡った。

幸いにも店に俺たちしかいないから良かったが、もし男でもいたら大変なことになってしまったかもしれないくらい、エロい声だった。


「ど、どうしたの!?ミリーちゃん」

「しゅ、すいません。ゼスの魔力が送られて来たら体に電気が走ったような感じで」

「それって、」

「はい、逝ってしまいました」


おいおい、俺の魔力おかしすぎるだろ。

分け与えただけで女を逝かせるとかどこのエロ漫画だよ。


ということは勇者召喚の際に王女様が悲鳴あげたのって俺の魔力が原因ということか?

顔が赤くて恥ずかしそうにしていたところを鑑みるにおそらくそういうことだ。

なんかマジで王女に申し訳ない。今度寝室前にお菓子でも置いておいてやろう。


まぁ不審物として回収されるだろうけど。


「ミリー、なんか悪いな」


俺は申し訳なくなってミリーに謝罪する。


同意の元で逝かせるのとは違うからな。

流石にバツが悪い。


「べ、別にいいよ。私がこんなことになったけど仮説は正しそう」

「そうね。ならこれからの整体術はこれをふまえて行うことにしましょう」


解決したが、俺はまだ気になることがあった。


「今回吸われたときと王女様に吸われたときでは今回の方が吸われた量が少ない」

「それは私の技術が王女様より劣っているからだと思う。私は魔力を扱うことに関しては得意な部類だけど、王女様は別格、でないと勇者召喚なんてできない」

「なるほど」


ミリーはあっけからん様子で言う。

ミリーの見解にはおよそ納得できるのだが、それにしても勇者召喚の際の方が段違いに吸われた。何か他の要因もある気がするが今は気にすることでもないか。


「じゃあ、俺はそろそろ城に戻るわ。ぶっちゃけ訓練抜けてきたからな」

「もうゼスったらクビにされてもしらないわよ」

「今回だけだ。じゃあな」

「ちょっと待ちなさい、一応これを渡しておくわ」

「何これ」


エギールから包みを渡される。


「その中には、魔力の供給を一時的に止める薬が入っているわ。もし、何かの拍子にゼスの魔力が大量に溢れ出た時にそれを飲みなさい。魔力が溢れすぎるのは危険なことだから。飲まないと死ぬかもよ。だから気をつけるのよ。」


エギールはあっさりととんでもないことを口にした。

死ぬかもしれないのか。


「それって召喚のために王女に魔力を集めたのもやばかったんじゃ」

「さすがに対策はしているはずよ。普通に集めただけならやばかったかもしれないけど」


魔力のことでも知らないことが割とある。

まだまだ学ぶことがたくさんある。

そういうことを学べるってのは喜ばしい。


「ならなぜ今まで渡さんかった?」

「だって、ゼスの症状が治る目処がなかったんだもの。でも治る可能性が出てきたからね」

「なるほど」

「それと別の薬も毎日飲みなさいよ。それのおかげで今日の成果に繋がってるかもしれないんだから」

「わかってるよ」


毎日飲んでいる薬ってのは、魔力穴が開きやすくなる薬のことだ。

ここに通ってからはずっと処方されている。



「それと最近、街で殺人事件も起こっているみたいだから、気をつけなさいよ」

「殺人事件なんてあったのか?そんな話聞いてないな」

「機密事項らしいからね。兵士達には伝わっていないのよ」

「なら、なんでお前が知ってんだよ」

「それは乙女の秘密よ。確か、袋にバラバラになった死体が詰められているらしいわよ。でもそこに頭はないの。噂だと犯人が持ち帰っているそうよ」

「へぇ。そんな事件あったのか」

「犯人も捕まっていないし」

「それは物騒だな。まぁ一応気をつけておくよ」


頭の片隅には泊めておこう。


「ゼス、またしようね」


帰り際、ミリーに投げキッスされた。

ありがたい話だが、今はやるべきことがある。それが終わったら甘やかしてもらおう。

エギールからはウインクが飛んできたが、気持ち悪いので無視した。



多くの人で賑わっている城下町を走り、俺は急いで城へと戻った。

適当な言い訳でお腹を壊してトイレにこもっていたということにした。

オルト隊長から胡乱な目でみられたがなんとかごまかせたと信じたい。




それから勇者たちの様子を見に行くと剣術を指南されている最中だった。

全員剣は握ったことがないみたいだが、わずか数時間でそれなりに様になっていた。

一ヶ月もすれば俺より強くなるだろう。兵士としての立つ瀬がないな。




今日の訓練はこれで終わった。これが毎日続くとなると大変だろうが頑張れ勇者。

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