第554話 影響力
ゴブリンから血を抜き、干からびたゴブリンを山積みにしたらガソリンをぶっかけて燃やす。
なんて作業を黙々とこなしていたら冒険者たちが次々と集まってきた。
どうやら山火事と思って集まってきたようだ。迷惑かけて申し訳ないと、食事を振る舞ってやったらゴブリンの片付けを手伝ってくれた。
なんつーか、コラウスの冒険者って人ができているよな。因縁つけてくるようなバカもいないし、暴力的なアホもいない。いや、いるのかもしれないが、オレは見たことがない。
「次、自分が困ったとき助けてもらうために協力するのさ」
不思議に思って冒険者の一人に訊いたらそんな答えが返ってきた。
「コラウスの冒険者には昔から伝わる教えがあるんだよ。情けは人のためならず。人助けは巡り巡って自分に返ってくるってな」
それ、絶対駆除員が広めたことだろう!
マサキさんの他に駆除員がいることはコラウスの町名からわかっていたが、まさか冒険者に諺を残すくらい影響力を持った駆除員がいるとは想像もしなかったよ。その人の情報、是非とも欲しいな!
「それを広めた人は誰なんです?」
「うーん。昔のヤツ、ってことしか知らんな」
それなのに代々受け継がれているってスゲーよな。どんな影響力だよ。
他の者にも尋ねたが、知っている者はいなかった。ただ、銀印の冒険者だったってことは伝わっているそうだ。
それなら冒険者ギルドに資料なり記録なりある……か? かなり昔っぽいし、羊皮紙に書いているくらいだから、ない確率が高そうだな……。
「夜も食事を出すんで食べてってください」
オレも情けは人のためならずの精神を見習って、手伝ってくれた冒険者たちに食事を振る舞うことにしよう。
夕方になっても隊商がくることもないので、広場に移って野営をすることにした。
冒険者は二十人くらいいるので、寸胴鍋でシチューを作り、コ○トコのディナーロールを食べ放題に。ワインも少し出し、手伝ってくれたことを労った。
見張りはイチゴに任せ、オレは申し訳ないが、ホームで休ませてもらった。
泥のように眠り、目覚めたときは多少なりとも気分は落ち着けていた。
「ミリエル。今日は一日頼む。オレは家を建てる木材をゴルグに頼んでホームに入れるから。それと、夜にゴブリンを誘き寄せて狂乱化させたんで、片付けがまだ残っている。石灰を撒いてくれ」
自分も参加したかったと怒るミリエルを宥めすかし、なんとか収めてくれたらミサロにダストシュートしてもらった。
久しぶりに巨人の村に向かうと、なんか村が変わっていた。
建物は以前の通りなんだが、家の前には花壇があったり窓にはカーテンがかけてあったり、道が石畳になっている。それに、巨人の着ている服が華やかになっている。
「どうなってんだ?」
オレを見た巨人もなんだか柔らかい笑顔を浮かべて挨拶してくる。
「ゴルグんちも華やかになってんな」
なんか窓に網戸まで嵌まっており、玄関先には木製のブランコまで置いてあった。
「てか、この世界にもブランコなんてあったんだな」
巨人が乗るブランコとか遊園地の……なんだっけ? 船をぶらんぶらんするヤツ? 遊園地なんて十年以上いってないから忘れたわ。
「タカトだ」
段差を乗り越えて玄関前のデッキに上がると、ゴルグとロミーの娘、ミ、ミラ? じゃないな。ミミちゃんだっけか? なんか見ない間に大きくなって。三メートルはあるんじゃない?
「久しぶり。とーちゃんかかーちゃんはいるかい?」
お願いだからおもちゃにしないでね。巨人になれる指輪してないんだからさ。
「かーちゃん! タカトきたー!」
ホッ。ちゃんと分別がある子でよかった。五歳くらいが一番危険とか言ってたしな。
すぐにロミーが出てきてくれた。
「いらっしゃい。ゴブリン駆除は休みかい?」
「いや、休みなくやっているよ。今日はゴルグに仕事の依頼をしにきた。いるかい?」
「旦那なら街にいったよ。弟が今度結婚するってんで、お祝いを届けにいってるのさ」
あー。弟がいるって言ってたっけな。すっかり忘れてたわ。
「弟ってなにしてんだい? なんか前に顔が利くようなことゴルグが言ってたが?」
「職人だよ。主に城壁を補修したりしてるね」
「そういや、街で巨人を見たことないな。てか、街のどこに住んでいるんだ? それらしき建物、見たことないぞ」
街で巨人が歩いているところも見たことがない。隠そうにも隠しきれん図体だろう。
「街の巨人は地下に住んでいるんだよ。あたしはいったことないけど、結構快適らしいよ」
地下? 巨人が住むとなると巨大空間となるよな? よくそれで地盤沈下とかにならないな。ならないにしても雨が降ったら大変なことになるんじゃないのか?
「それはちょっと見てみたいな」
どんな世界なのか気になる。
「まあ、タカトなら歓迎されるからいってみるといいさ。あんたがきてくれたお陰で安く布は手に入るようになったし、鍋も手に入るようになったしね。あと、酒はなにより喜ばれているよ。巨人はなかなか飲めないからね」
巨人のことはラダリオンに任せてあるから知らなかったが、かなり巨人の暮らしを変えているようだ。
「まあ、今のうちに自分たちで作れるものは作っておくことだ。必要な道具を作っておけばオレらがいなくてもなんとかなるからな」
「……なんかあったのかい……?」
「なに、ちょっと嫌な話を聞かされて気落ちしているだけだよ。それより家を造りたいんで、材料を用意して欲しいんだよ」
ミランド峠にギルド支所(仮)を築くことを話した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます