第550話 ミランド峠再び
一晩考え、とりあえずミランド峠にいってみることにした。
「マーダ。今日はなにか予定あるか?」
イチゴを連れてってもいいのだが、シエイラから誰か連れていけと強く言われたので、朝起きて一番最初に会ったマーダに声をかけた。
「いや、なにもない」
「じゃあ、何人かオレに付き合ってくれ。ミランド峠と言うところにいって、魔物の調査をする」
「わかった。今からか?」
「八時半に出発する。水や食事はこちらで用意するから身の回りだけでいいぞ」
「わかった」
そう言うと、長屋のほうに向かった。てか、なにしてたんだ、マーダのヤツ? 館から離れに向かってたのに。
まあ、いいやとすぐに頭から捨てて車庫の前にパイオニア五号を出した。
「タカト、いってくるね!」
「気をつけろよ~」
ガソリンを入れてたらビシャ、メビ、雷牙がゴブリン駆除に出かけていった。
雷牙も連れていこうと思ったが、なんだか一番駆除した者が勝ちって勝負しているようで、七時半には飛び出していっているのだ。
「タカトさん。わたしもいっていいですか?」
三人を見送っていたらミリエルが現れた。
「モリスの民はいいのか?」
なにもわからないモリスの民の面倒をミリエルに見てもらっていたのだ。
「はい。ドワーフの奥さんたちに任せてきました。畑仕事を手伝って欲しいと言われたので」
そういや、柵に覆われた畑があったっけ。大して気も引かれなかったのでスルーしてたよ。
「なら、一緒にいこうか。パイオニア五号を運転してくれ。オレはKLXでいくから」
たまに乗らないと感覚が鈍る。乗れるときに乗っておかないとな。
ミリエルがパイオニア五号の慣らし運転している間にホームからKLX230を出してきた──ら、なんか人が増えていた。
「マスター。おれらも連れていってください」
「もう少し休んでいてもいいんだぞ。今回はゴブリン駆除じゃないんだしな」
まあ、いたら駆除するけどよ。
「構いません。一緒に連れてってください」
これと言って反対する理由もなし。まずはミリエルに五人を送ってもらった。着いたらパイオニア五号をホームに入れたら片道分の時間だけで済むからな。
「マーダ。しばらく待機しててくれ。オレはちょっと走ってくるから」
ここからミランド峠まで約四十キロ。三時間もあれば到着できるはずだ。その間、KLX230を乗るとしよう。
「付き合う」
走り出したらマーダがついてきた。
まあ、好きにしたらいいと、ラザニア村周辺を一時間くらい走り、川沿いを山に向かって走った。
……ゴブリンがいるな……。
去年、あれだけ駆除したのに二、三百匹の気配が感じ取れた。
逃げ足が速いところをみると、エサは足りているようだ。いったいなにを食っているのやら。
「戻るぞ」
二時間過ぎたのでKLX230をUターンさせてラザニア村に戻った。
ホームに入ると、ミリエルはまだ着いてないようだ。缶コーヒーを飲みながら待っているが、三十分経っても入ってこない。ブラックリンを出そうとしていたらパイオニア五号が入ってきた。
「ご苦労さん。なにかあったのか?」
「隊商が連なっていてとても昼まで広場に到着できないので途中で入りました。歩いて向かいます」
「そっかー。タイミングが悪かったな。まあ、そう急ぐこともないし、ゆっくり向かってくれ。オレらもゆっくり向かうから」
「わかりました」
ミリエルが出ていったらパイオニア五号に乗り込んで外に出た。
「じゃあ、いくぞ」
マーダたち四人を乗せて出発する。
隊商は陽が暮れる前に広場に着けばいいだろうから北回りでコレールの町に向かい、少し遅めの昼飯を済ませ、一時間休んで出発する。
広場まであと一キロってところでミリエルたちの気配を感じ取れ、五分くらい走ったらミリエルたちの姿が見えた。
「ご苦労さん。かなり歩いただろう。交代しようか」
マーダたちに降りてもらい、ミリエルたちを乗せ、隊商のあとに続いた。
「ゴブリンがかなりいるな。マーダ。暗くなるまでゴブリンを駆除してきていいぞ。今日は広場で野営するから」
「わかった。お前たち、いくぞ」
さっと木々の間に消えていくニャーダ族の男たち。アサシンとして食っていけそうだな。
隊商が広場に入り始め、すべてが入るまで三十分はかかってしまった。
「かなりの数だったんだな」
四十台はあるんじゃないか? 広場がギッチギチでオレらが入る隙間がないほどだった。
「仕方がない。河原にテントを張るか」
雨が降らなければ河原でも問題なかろうよ。
「隊商に挨拶しておくか」
オレらの存在はわかっている様子だったが、誰か確認しにくることはなかった。一応、挨拶はしておくべきだろうよ。
冒険者らしき者にゴブリン駆除のセフティーブレットだってことを話し、隊商を纏める者を紹介してもらった。
「お噂は予々伺っていますよ。ここでロースランを討伐したとか。あなたちがいてくれるなら安心した夜を過ごせそうです」
ロースランのことはコラウス中に広まっているようで、概ね歓迎されて迎え入れてもらえた。
「こちらは河原を見張ります。なにかあれば笛を鳴らしますんで」
「はい。あとで冒険者を向かわせますので話し合ってください」
「わかりました。では」
そこで別れてオレたちは河原に向かった。
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