第548話 名簿作り

 また、気がついたら朝になっていた。


 晩酌したらミリエルの手伝いを、と思ってたのに、なぜかマットレスの上にいたのだ。


 ……オレ、そんなに疲れてんのかな……?


 横で眠っている雷牙を起こさないように抜け出し、シャワーを浴びにいった。


 さっぱりして出てきたら雷牙やミリエルも起きていて、シエイラもちょうどやってきた。


「雷牙、シャワー浴びるか?」


「昨日入れたから大丈夫よ」


 なぜか雷牙をブラッシングするミサロが答えた。お前、雷牙をペットかなんかだと思ってないか? まあ、雷牙が嫌がってないなら構わんけどさ。


「ラダリオンは戻ってきてないのか?」


「まだマジャルビンと戦っているみたいよ。三時に用意した弾も減っていたから。そろそろ朝食を取りにくるんじゃないかしら?」


 って言ってる側からラダリオンが入ってきた。疲れた様子で。


「お風呂入ってくる」


 食事よりまず風呂か。ラダリオンも成長したものだ。


 まあ、五分もしないで出てくるところは変わらないか。下着姿のままミサロが出したリンゴジュースをゴクゴク飲み干した。


「食事は?」


「ガツンとしたものが食べたい」


 すぐに焼肉丼(ラダリオンバージョンアップ)が出てきて五分もしないで完食。次に出されたホールケーキを二分もしないで胃に収めてしまった。


 ……相変わらず消化のいい胃袋だよ……。


「応援にいかなくて大丈夫か?」


「大丈夫。厄介だけど、そう強くないから」


「そうか。怪我人は出ているのか?」


「マジャルビンに触れた者が何人か出た。ミリエル。あとで治してあげて」


「わかったわ。そのときは呼んで」


 どうやら応援は必要ないってことで、ミロイド砦はアルズライズやラダリオンに任せることにする。


「雷牙。ゴブリン駆除はどうだ? 結構いるか?」


「うん。結構いる。でも、ビシャとメビにばっかり取られる。今日は負けない」


「そうか。雷牙はスピードと腕力が勝っている。それを活かした方法を見つけることだ。お前専用の武器もあるんだからな」


 ダメ女神が雷牙専用と言った。なら、雷牙に適した武器だってことだ。使いこなせればビシャやメビにも勝てるだろうよ。


 ……まあ、あの二人も負けず嫌いなところがあるから勝つのは大変だろうがな……。


「うん! がんばる!」


 偉いぞ~と頭を撫でてやった。


 朝飯が終われば外に出て、館の事務所に向かった。


 事務所はこれと言って変わったところはない。事務員が二人にシエイラ、あと、ゴブリン駆除をする職員が五人いた。


「シエイラ。職員と請負員の名簿を見せてくれ。オレ用に作るから。あと、手の空いている職員を一人貸してくれ」


 読んでもらわないとわからんのでな。


「マリト。お願いできる?」


「わかりました」


 確か、冒険者ギルドで連絡員をしてたヤツだったよな。馬に乗れるとかで。


 戦闘もこなせる優良職員だとシエイラが言ってたし、オレもそう思う。まあ、器用貧乏みたいな男だな。


「マリト、よろしく頼むな」


「はい。お任せください」


 ってことで、パソコンを持ってきてオレ用の名簿作りを開始した。


 オレら駆除員は抜かし、ギルド職員は三十六人。請負員は四十五人。思いの外、結構な数になっていた。


「職員も雇っているんだな」


「はい。館長がこれからを考えて増やしているみたいですよ。アシッカ支部も十人くらいにはしたいと言ってました」


 まあ、アシッカは中間となる支部にしたい。十人は必要か。


「馬に乗れる職員って何人いる?」


「そうですね。連絡員になれるほどの者は三人ですかね? 馬に乗れる環境にいる者は少ないですからね」


 それもそうだな。馬なんて金のかかる生き物だしな。


「馬っていくらするんだ?」


「うーん。子馬なら金貨四枚。訓練された馬なら金貨十二枚くらいですかね? コラウスで馬を育てているところが少ないので割高とは聞いたことはありますね」


「結構するんだな」


 マイヤー男爵領では金貨一枚くらいだったぞ。


「エサ代もかかりますし、魔物に襲われないよう頑丈な厩とか必要になりますからね」


「狙われたりするんだ」


「どうしても山のほうで育てないといけませんからね。はぐれのオーグや熊なんかが襲いにきます」


 街の周りは麦畑がほとんどで、草原らさしいのはリハルの町に多かった記憶がある。


「ライダンド伯爵領なら安く買えるか?」


「んー。買えるとは思いますが、運んでくるのは大変かと思いますよ。魔物からしたらエサを運んでいるようにしか見えませんからね」


「ミランド峠って、結構危険だったりするのか?」


 ロースランとか住み着いちゃったりするところだったっけな。


「あそこは元々熊が多く住むところで、単独での移動はしません。隊商も合同で越えますし、冒険者も足早に越えますね」


 へー。ミランド峠ってそういうところだったんだ。


「まあ、オレらならそう難しくはないだろう。熊ならスコーピオンでも倒せるしな」 


 一発二発では無理かもしれんが、三十発も食らって死なない熊はいないだろうよ。オーグなら無理だろうけどさ。


「買いにいくんですか?」


「パイオニアは金がかかって増やせないし、今なら見習い冒険者もいる。そいつらを馬に乗せて機動力を上げるとしよう。馬に乗れる職員を集めてくれ。明日、ライダンド伯爵領に買いにいくとしよう」


 パイオニアを使えば半日の距離。そう大した用意はしなくてもいいだろうよ。

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