第542話 輸送

 枯れ木や薪になる木を集めて戻ってくると、ロイズ以外の請負員たちが戻ってきていた。


「ロイズから話は聞いたか?」


「はい。聞きました」


「じゃあ、明日の朝、コラウスに出発する。今日は早めに休むように」


 モリスの民はロイズたちに任せ、オレらも早めに休ませてもらった。


 暗くなったらホームに入り、皆が入ってきたら軽くミーティング。お互いの状況を話し合ったら夕飯に。食ったらシャワーを浴びて早々に眠りについた。あ、ビールを飲むの忘れた!


 なんて思い出したが、気がついたら朝になっていた。オレ、ミリエルに眠りの魔法でもかけてもらったっけ?


「ミリエル。オレが運ぶ間、頼むな。一応、イチゴを残していくから」


 早々上空警護ばかりさせてられない。マナックの消費がとんでもないんだよ。


 まあ、まだ八千個以上はあると思うが、この数ヶ月で約千個は使った。このペースでは一年も持たないんじゃないかってくらいだ。山崎さんに魔石を供給しないとマイセンズに探しにいかなくちゃなるかもしれないよ。


「わかりました。道中、気をつけてくださいね」


「請負員を一人連れていくから大丈夫だよ。戻りはダストシュートだしな」

 

 移動の手間も省けるし、ガソリン代も抑えられる。順調に走れたら二回は人を運べるはずだ。


 七時前にホームを出て軽く朝飯を食わせてパイオニア五号に五人と荷台に請負員のペルカと名乗った男を見張りとして乗せた。


「何度か休憩はするが、気持ち悪くなったりしたらすぐに言えよ。無理するな」


 一回目は女三人、男二人だ。受け入れ側として選んだから体格は並みにある。六人乗りなのにギューキューだよ。


「ペルカ。警戒の他に仲間の様子も見るんだぞ。オレは運転に集中するから」


 慣れてない車で人を運ぶのは集中がいるんだよ。ましてや林道より劣る道を走るんだからな。


「わかりました」


「出発する」


 エンジンをかけ、少し暖気してから発車させた。


 峠の前までの道はそう悪くはないので三十分くらいで広場に到着。全員を降ろして三十分くらい休ませた。


 気分を悪くした者はおらず、昨日よく食べてよく休んだお陰か、顔色も悪くない。


「これから山に入る。寒いときは毛布をかけろ」


 そう標高のある山じゃないが、やはり気温は何度か下がる。ただ乗っているだけでは体が冷めてしまうだろうよ。


 毛布を取り寄せ、渡してやった。


 山に入り、難なく峠を越えると、前方から馬車がやってくるのが見えた。


 ついでなので待避区に入り、通りすぎるまで休憩することにした。


「マスター! 冒険者らしき男がきます!」


 モリスの民に温かいコーンスープを作っていたらペルカが叫んだ。確認か?


「ペルカ。こちらを頼む」


 コーンスープを作るのを変わってもらい、やってきた冒険者と対峙する。


 こちらが名乗ると、明らかにホッとした態度を見せた。


「数日前に広場にオーグの群れが出た。もう出ないとは思うが安全のため注意することだ」


「そうか。情報、感謝する」


 冒険者が戻っていき、しばらくして隊商がやってきた。


 こちらを警戒している様子は見て取れるが、これと言った動きも会話もなく通りすぎていった。


 他にくる様子もない。コーンスープを飲んだら乗り込み、無事、山を越えられた。


 誰も気分は悪くなってないのでラザニア村まで一直線。ではなく、橋で止められ、金を払って橋を渡った。ったく。面倒な支払いをさせてくれるぜ。


 十一時半前に到着。まあ、思った通りの時間だな。


 館の前にパイオニアを止めると、気づいた職員やカインゼルさん、シエイラが出てきた。


「受け入れを頼む。ペルカ、あとは頼むぞ」


「はい。わかりました」


「タカト。わしもマイヤー男爵領にいくぞ? 輸送部もいるしな」


 あ、輸送部な。まだ本格的な輸送をさせてなかったっけ。


「そうですね。ウルヴァリンが残ってますし、マイヤー男爵領にいってもらえますか。すぐに出れそうですか?」


「問題ない。用意はしていた」


 いく気満々だったみたいだな。


「では、出発してください。オレはダストシュート移動します。恐らく峠辺りで会うかもしれませんね」


「了解だ」


 パイオニア五号を入れたらウルヴァリンを出してくる。


「よし、いくぞ」


 輸送部の職員を二人連れて飛び出していった。やはり目的があるとやる気が出るのだろう。オレは目的があってもあそこまで情熱的にはなれないよ……。


「シエイラ。あとは頼むな」


「はい。気をつけて」


 ホームに入り、ミリエルが入ってくるまでに昼飯を済ませ、軽く休憩する。悪路を走るのは疲れるな……。


 ビールを飲みたいところだが、人の命を預かるのだから飲酒はいかんだろうと、飲みたい気持ちをグッと堪えた。


 昼になってミリエルにダストシュートしてもらった。


 またホームに入ってきてカインゼルさんたちがマイヤー男爵領に向かっていることを告げた。


「一台はミジア男爵領にいってもらう。トレーラーを一台出しておいてくれ。荷物はそう急ぐことはないが、時間があったら出しておいてくれ」


 そろそろ教会へ物資を送らなくちゃならない。せっかくだから一台をミジア男爵領に向かわせるとしよう。


「わかりました。時間はあるので出しておきます」


 ありがとうと伝え、パイオニア五号に乗り込んで外に出た。

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