第517話 無双キャラ

 ローガス商会とドワーフの繋がりはできた。なら、あとはダスティンさんにがんばってもらいましょう。


 ってことで、オレは新たに請負員になったドワーフとマーダを連れてゴブリン駆除に出かける。


 なんか最近、サポートばっかりだな。なんて思うこともあるが、将来楽をするために必要なこと。オレよがんばれ、だ。


「二十九人もいるし、狂乱化させるか」


 どこから流れてくるのかわからんが、察知範囲内に軽く三百匹はいる。ほんと、無限に沸き出す源泉でもあるんだろうか?


「そうなると弾が足りないのでは?」


 あ、ロズやマッシュもいく感じか。狂乱化で足りるかな?


「あとは、剣や斧で戦え。銃ばかりに頼ると体が鈍るからな」


 銃を使っていたオレが言っても説得力ないが、オレにはホームがあり、アポートウォッチがある。何万匹と囲まれようと対応はできる。だが、請負員はそうはいかないのだから体力はつけておくべきだろうよ。


「砦から北西に二キロのところで狂乱化させるか」


 あまり遠くにすると、いざってときに困るし、取り残したのがマルスの町に流れるかもしれない。その辺がちょうどいいだろうよ。


「なにをしているんだ?」


 処理肉を取り寄せてばら撒いていると、マーダが不思議そうに訊いてきた。


「ゴブリンは常に飢えていて、食い物があるとすぐ集まってくる。ある一定の数が集まると鼻をつまむような臭いを出す。そうなるとゴブリンは我を忘れて集まってくる。それをオレらは狂乱化と呼んでいるのさ」


 マーダにも処理肉を渡し、辺りにばら撒かせた。


「よし。ゴブリンが集まってきている。移動するぞ」

 

 臭いを嗅ぎつけたようで、気配が動き出した。あと一時間もしないで狂乱化が始まるだろうよ。


 約二キロ移動したら斧を出してバリケードを作らせた。


 やはり三十人以上いると作業が早い。二重のバリケードを完成させちゃったよ。


「バリケードの外に処理肉をばら撒け! あと二十分くらいで五百以上のゴブリンが押し寄せるぞ!」


 十分で処理肉をばら撒いたら残り十分で戦闘準備を済ませる。


「オレが合図するまで撃つなよ。マーダ。後方撹乱をやってもらう。一殺できるならそれで構わない。無理なら逃げ出せないていどに斬りつけてくれ」


 マーダも回復したとは言え、長いこと監禁されていた。体も鈍っているだろうからリハビリと思って動いてくれたらいいさ。


「完全に囲まれた。ロズとマッシュは援護。銃を持たない者は集中していろ」


 狂乱化したときの臭いでむせそうだな。


「落ち着け。これからは一方的な虐殺だ。調子に乗らないていどに気を引き締めておけ。構え!」


 もはや肉薄って距離まで近づいた。


「撃て!」


 十丁のP90から弾丸が放たれる。


「慌てず確実にマガジンを交換しろ! ロズ、マッシュ、十メートル内に入ったのを撃て!」


 二人にはベネリM4を渡して弾は鳥撃ち用の散弾にしてある。二人もサポートに回ってもらう。殺したら殺したで構わないがな。


 オレがいない間に訓練はさせていたようで、そうもたつかずマガジンを交換している。


 一人四本のマガジンを二分もしないで撃ち尽くし、ざっと十八万円が入った。


「約百二十匹か。まあ、初仕事としてはまあまあだな。よし。攻撃交代。止めを刺せ。マーダ、いけ!」


 十八人のドワーフが飛び出し、振り向いたらマーダは消えており、気配を追ったら三十メートル先にいた。いや、どんだけだよ!?


「オレが見張る。今のうちに弾込めをしろ」


「わかりました! 皆、急ぐことはない。確実にやればいいからな」


 ロズもわかっている。慌てさせず、声をかけながらマガジンに弾込めを始めた。


 次々と報酬が入ってきて、三十分で止まった。体力の限界がきたんだろうな。


「弾込めした分でいい。弾切れになるまで殺しまくれ。ロズとマッシュもいけ」


「了解。お前ら絶対に仲間には当てるなよ。そして、マガジン一本は残して下がれ。ギリギリの戦いはするな」


「ゴブリンは確実に殺すんだぞ」


 すっかり一人前の請負員だな。なんて、一年くらい生き抜いただけのオレが言っても笑われるだけだがな。


 報酬が物凄い勢いで入ってくるのはマーダだろう。流れるように殺しているよ。なんとか無双のキャラか?


 肉弾戦組が戻ってきたのでタオルと水を出してやり、汗を拭わせた。


 二十分くらいして銃声が止み、一人また一人と戻ってきて、最後に血まみれのマーダが戻ってきた。


「ご苦労さん。警戒しながら休んでいろ。オレはゴブリンの血を抜いてくるから」


「マッシュ。旦那の護衛につけ」


「了解」


 休んでろと言っても聞かないだろうからマッシュを連れて血抜きに出た。


「おれもいく」


 と、マーダもついてきた。


「せめて血を拭え」


 まだ乾いていない血を集めてやり、水を集めて顔を洗わせた。


「魔法も使えるんだな」


「まだ初心者だがな」


 早く血抜きをマスターしてブラッディスティールを完成させたいものだ。


 まあ、水魔法としてどうかと思うが、血を抜かれて死なない生物はいない。今度は血を浴びない戦い方をしないとな。


 死んでいるゴブリンに手のひらを向け、可能な限り血を抜いていき、それをブラッディジェットとして放った。

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