第493話 いろいろな魔物
夜、覚悟を決めてホームに入ったが、ビシャたちのワイニーズ討伐が開始されたのでラダリオンとミリエルはおらず、ミサロだけがいた。なので、ミサロだけにシエイラが特別駆除員になったことを話した。
「そう。いいんじゃない。ラダリオンとミリエルにはわたしから話しておくわ」
とのことだった。
思わず「それだけ?」と口から出そうになったが、薮蛇になると思って急いで口を閉じた。
まあ、三人も関わってそうな感じだ。嫌われるということはないだろう。別に浮気したわけじゃないんだからな。
そう自分に言い聞かせて外に。シエイラが自分の部屋に帰る気がないので一緒に寝ることにした。あ、よろしくなことはしてないからね。
「眩しいくらいの晴天だな」
オレたちがよろしくやるために雨を降らせたのなら迷惑かけた人らには申し訳ない。すべての責任はダメ女神にあるのでこちらから罵倒しておきますね。
「どうだ? 動けそうか?」
野獣化してかなりの負担をシエイラに強いてしまった。回復薬は飲ませたが、精神は回復してくれない。精神的疲労は相当なものだろうよ。
「ええ。大丈夫よ」
「無理なときは支部にいってゴブリンや魔物の情報を集めてくれ。また現れるはずのない魔物と遭遇とか嫌だからな。そういう些細な情報が最悪を防ぐんだよ」
元冒険者ギルドの職員だ。細かい情報も見逃さないだろうよ。
「……そうね。歩くのも大変だし、そうしようかしら?」
「そうしろ。駆除員となれば必要なものはこちらで用意できる。てか、請負員カード、どうなった?」
特別駆除員となったら請負員じゃなくなるのか?
「あれ? 出ない?」
「ってことは、タブレットに併合されたってことか。なら、必要なものはミサロかミリエルに言え。生活に必要なものは二人に任せているからな」
「二人に財布の紐でも握られているの?」
「任せたんだよ! 武器や乗り物はオレが買っているし!」
尻に敷かれた亭主みたいに言うなや。
完全否定できないので、装備を整えたら部屋を飛び出した。
食堂には全員が揃っており、食べたら軽くミーティングして組み替え。今日は弓を使うマルガ(男)とカラナ(女)を連れてミロイド砦のほうに向かった。
「二人はミロイド砦にはいったことがあるか?」
「はい。荷物持ちでいきました」
「あたしはいったことないかな。荷物持ちは男ばかりだから」
距離は約二十キロ。獣道レベルのところを荷物を背負ってとなると男のほうが望まれるだろうな。
「ミロイド砦までいくんですか?」
「いや、三キロまで進んだらそこでゴブリン駆除をする。二人を連れてきたのは山歩きに慣れているからだ」
二人とも猟師の子であり、弓の使いや山歩きは物心つく頃からやっていると言う。それならオレより技術は高いはず。その歩きを勉強させてもらおうじゃないか。
マルガ、カラナ、オレと一列になって道を進み、万歩計で三キロと判断。まずは道横の草を刈り、職員に書いてもらったゴブリン駆除中って垂れ幕を掲げた。この道はよく冒険者が往来すると言うんでな。
「よし。二人とも体調はどうだ?」
「問題ないです」
「あたしも」
「オレもだ。もし、はぐれたらまずこの地点に戻ってくること。魔物の大群なら町へ。生きて情報を持ち帰れ。いいな?」
「「はい!」」
最低限のことを伝えたらゴブリン駆除を開始しする。
山なだけにゴブリンの気配があちらこちらから感じる。ただ、ゴブリンがいない空間もあちらこちらとある。ゴブリンが警戒するなにかがいるってことだ。
「この辺に現れる魔物ってなんだ?」
休憩時に二人に尋ねてみた。
「主にマーグ、狼、ロド、マルティですかね?」
「魔物じゃないけど、猪や狼もよく出るよ」
ロドは矢も通さない灰色の毛を持つ熊でマルティは鋭い牙と爪の兎だそうだ。ファンタジー生物、おっかねー!
「今の時期ならロドかな? 新芽や山菜を食いに山の奥から出てきますね」
「逆に狼はいなくなるね。マルティは隠れちゃうかな?」
やはり猟師の子だけあって山の知識は他の冒険者とは違うな。
「冒険者も狩りにきてたりするのか?」
「きてますね。この時期のロドは肉が臭くないのでよく依頼に出ます。まあ、強いので鉄印の冒険者しか狩れませんが」
つまり、見習いや駆け出しが敵う存在ってわけじゃないってことか。
「まあ、オレらの標的はゴブリン。邪魔しないようにやるぞ」
ゴブリンの気配がないところにはいかないだけ。そこを迂回してゴブリンを駆除していった。
弓の腕はランサーさんほどないが、目はオレより遥かによく、草木に隠れているゴブリンを視覚できるほど。気配察知がどれほど優秀かよくわかる出来事だったよ。
「二人で八十五匹か。やはり移動に時間をかけられたな」
百はいくと思ったんだがな。まあ、十五時前に帰らないと暗くなるから仕方がないか。
「それで装備を充実させろ。もっと稼ぐためにな」
請負員カードを見て喜ぶ二人。一万円でなにが買えるか教わったようで二十万円って金額に喜んでいるよ。
「「はい!」」
「じゃあ、帰るぞ」
道に戻り、缶コーヒーで一服したら町に帰った。
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