第482話 わたしを倒しても──
さあ、今日もゴブリン駆除をがんばろうと、車庫でKLX230を点検、給油していると、シエイラが少年四人と少女六人を連れてきた。なに?
「請負員になりたいそうです」
「へー。いっきにきたな。名前は記録したか?」
シエイラを見る。
「はい。十人とも冒険者登録しているので、簡易登録にしました」
たまにゴブリン駆除してくれたら構わないってのが簡易登録だな。主にコラウスで活動してもらう要員だ。
「わかった。簡易請負員としよう」
請負員カードを十人に渡し、名前を告げさせた。
「……これで終わり、ですか?」
「ああ。ゴブリン駆除ギルド、セフティーブレットはそう難しい決まりはない。ゴブリンの駆除、それあるのみだ。ただ、決まりが少ない分、それぞれの自己責任になる。お前たちが悪さをしても庇ったりはしない。それどころかここにきたら捕まえて兵士に差し出す。それだけは絶対に忘れるなよ」
不当に扱われたら助けにもいくが、悪さしたなら問答無用で突き出してやる。セフティーブレットにクズはいらん。
「しかし、十人か。教えるとなると多いな」
やはり五人くらいが教えやすい数だな。さて。どうする?
「よし。シエイラ。悪いが、こいつらの指導に付き合ってくれ。マルスの町にいく」
ロンダリオさんたちがいないからゴブリンを駆除するチームもいない。きっとあちらも増えていることだろうよ。
「この人数だから運転できる職員を連れていきましょうか。アシッカに連れていってないメンバーもいますし」
「留守組か。何人いたっけ?」
ギルドマスターなのに把握してなくてすみません。
「五人です」
「十七人になるのか。それはそれで大所帯になるな。宿、泊まれるか?」
マルスの町となると二十キロは離れているから通うのは大変だろう。そうなると宿を取るしかない。前に泊まった宿は……何人泊まれたっけ?
「この時期なら野営しても困りませんよ。この子たちも野営は何度もしているでしょうからね」
そうなのか? と見たら「はい」と頷かれた。
「まあ、野営道具はあるし、宿がなければ野営するか」
オレも野営は慣れたが、どうせならベッドで寝たい。宿があることを願い、職員を集め、四台に分乗して出発した。
何事もなく十二時前にマルスの町に到着。パウダーは町の外に止め、職員たちに昼を任せたらシエイラと冒険者ギルド支部に向かった。
「賑わっているな」
「鉱山が始まったのでしょう」
鉱山? あぁ、そんな話あったな。てか、ここの鉱山は冬は休みになるのか?
「なにが採れるんだ?」
「石炭ですね」
「石炭? なにに使うんだ?」
まだ蒸気とか発明されてないだろう?
「鍛冶に使います。コラウス産は上質で人気があるそうですね」
へー。鍛冶に使うのか。あ、だから剣とか大量にあるのか。辺境の割には剣とか斧とかやたらあるな~と思ってたらそのせいか。
「──おじさん!」
もうちょっとで支部というところで、十歳くらいの女の子が現れた。なんだ?
「あたしだよ!」
あたし詐欺か? そういうのはノーサンキューなんですけど。
「お恵みを!」
………………。
…………。
……。
あ! 徴税人か! 面影がまるでないからわからなかったよ。てか、七歳くらいじゃなかったっけ? 今はどう見ても十歳くらいなんだが……。
「あのときの。随分と垢抜けたな」
ボロ着じゃなく町の子が着ているような服になっている。孤児とは見えなくなっていた。
「はい! 今は宿屋で働かせてもらっています」
なにやら一年もしないで急展開になってんな。まあ、オレの人生も急展開に次ぐ急展開だがな!
「宿屋か」
「はい! 挨拶がいいって雇ってもらいました!」
採用基準、それでいいんだ。まあ、客商売なら笑顔は大事だけどよ。
「何人泊まれる宿だ?」
「マルスで一番の宿だから何人でも大丈夫だよ!」
「じゃあ、十七人で予約してくれ。とりあえず大部屋を二つ。二人部屋を三部屋予約しておいてくれ。前金で銀貨一枚渡しておくよ」
元徴税人に銀貨を一枚渡した。
「ありがとうございます! 予約しておきます! うちはマレセノーラって名前の宿です。ギルドで訊けばわかると思います」
「あいよ」
「じゃあ、待っています!」
駆けていく元徴税人。これでマルスの町の徴税人はいなくなったか。なんもしてないが、なぜか達成感が湧いてくるよ。
「──お恵みを!」
と、新たな徴税人軍団が現れた。なんだ、わたしを倒しても第二第三の~みたいな状況は? 徴税人は無限に現れるのか?
また銀貨を一枚出して箱に入れてやった。ほら、散れ!
「ありがとー!」
もらうものもらったら速やかに去る。徴税人に代々受け継がれる教えなあかんヤツか?
「ったく。この世から教会を潰したくなるな」
なんで教会ってのは無能なんだ? まあ、無能な神に無能な信徒ってのはお似合いだけどよ。ただ、こっちに迷惑かけんな、だ。
「司教区長を傀儡にしたら教会改革してやるからな」
こっちには領主代理と商人たちがついている。正義は我に、だ。
「……マスターらしいですね……」
下手に返すとなにを言われるかわからないから肩を竦めるだけで止めておいた。
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