第481話 お助けアイテム

 朝、七時半過ぎに館の前にきたら少年少女たちがすでに集まっていた。


 五人には腕時計をさせているが、時間感覚が太陽基準(感覚か?)だ。なのに、意外と時間前に集まったりするんだよな、コラウスの人たちって。


「おはようさん。早いな」


「先に集まって待つのが見習いですから」


 あー。なんかロンダリオさんたちが雑談の中で言っていたような気がする。


「ここの人は真面目でいいな」


「そうしないと生きられないですから」


 そりゃそうか。不真面目に生きられるほど優しい世界じゃないしな。本気でやらなきゃ死ぬだけだ。


「じゃあ、誰かパイオニアの運転を覚える気があるヤツはいるか?」


「はい!」


 と、ゾラさんの娘、ルカが即座に手を挙げた。血かな?


「よし。ルカにやってもらう」


 車庫にいき、出していたパイオニア一号の運転を教えた。


 やはり血なのか、ルカも覚えがいい。館の周りを走らせたら問題なく任せられるくらいになった。


 運転を覚えたら次は無線機の扱い方だ。本当ならプランデットを教えたいところだが、あれは教えるのが面倒だ。表示されるのもエルフ語だし、最低限でも一日二日かかる。それなら無線機のほうが簡単だ。


 一時間かけてしっかりと覚えさせたらウルヴァリンとパイオニア一号に分乗する。


 ウルヴァリンはオレとリーダーのラズル。パイオニア一号はルカ、ミギス、ボブス、リョウナだ。


 先頭はオレが走り、二十キロくらい街に向かって走らせた。


「んー。結構いるな」


 季節から三月半ばくらいなのに、結構草が伸びていたりしている。草だけみたら四月終わりくらいだな。


 去年はそこまで意識できなかったが、この世界の植物、育つの早いよな。大地が豊穣なんだろうか?


「狩りますか?」


「いや、今日は調査だけにして、集落に声をかけていこう。死体の片付けとかやってもらわないといけないからな」


 ラザニア村から近い集落に寄り、今年もゴブリン駆除をやるから死体の片付けをお願いしたいと伝えた。


「それは助かる。倉庫に忍び込まれて困っていたんだ」


「やはり結構な数を見てますか」


「ああ。去年ほどではないが、それなりに見ているよ」


 察知できるだけで五十匹以上はいる。気配から飢餓状態にはなってみたいだが、飢えている感じはする。冬を乗り越えた個体なのかな?


「他の集落にも声をかけておいてください。春の間はゴブリン駆除に勤しむんで」


「ああ。わかった。伝えておくよ」


 ではと、次の集落に向かった。


 午前中は集落回りをして、昼になったら川原で昼飯とした。


「川沿いは特にゴブリンがいるな」


 草がいい隠れ蓑になってゴブリンの巣がちらほらとできている感じだ。


「よし。腹ごなしに少し駆除するか」


「はい!」


 五人もやる気満々だ。なので作戦を説明する。


「……メチャクチャですね……」


「まあ、ちまちま巣を叩くのは面倒だからな。力業でやるとしよう」 


 ルカにパイオニアで川上に運んでもらい、作戦開始は三十分後と決め、開始時間まで集中する。


「よし。やるか」


 時間となり、魔力増幅の腕輪に右手で触れた。


 魔法で川の流れを止め、限界まで塞き止めた。


「──ここまでか!」


 土手を越えるまで塞き止めた水を解放。津波となって川下に流れていった。


「なかなかエゲつないな。土手、持つかな?」


 まあ、あの長雨に耐えるのだから大丈夫だろうと川下に向かって歩き出した。


「ゴブリン流し、だな」


 穴を掘っていたわけじゃないようで、なんの抵抗もできず流れていっている。


 百メートルも歩くと水から逃れたゴブリンがいるが、オレには丸見え。ウォータージェットで撃ち抜いていく。


 さらに二百メートル下ると、岸に打ち上げられたゴブリンが出てきて、五人が一生懸命走り回って止めを刺していた。


 他でもゴブリン駆除をやっているので正確な数はわからないが、八十匹は駆除した感じかな? まだいそうだし、大猟、いや、大漁かな?


 ──パンパカパーン!


 初心に戻ったのかな?


「五万四千匹突破だよ~! 新たにお助けアイテムを増やしました。たくさん駆除してクジを引いてね~!」


 お助けアイテム? そんな名称だったっけ? まあ、なんでもいいけどよ。てか一度、ガチャで出たものを確認しないといかんな。ヒートソードが九本目になったとは聞いたけど。


「集落の者を呼んでくる。続けていろな」


 そう告げて、集落に向かって人を呼んできた。


「ゴブリンを溺れさせるって、どんな方法だ?」


「てか、溺れたゴブリンなんて初めて見たぞ」


 驚く集落の方々。まあ、片付けよろしくです。


 代表の方に銀貨一枚を渡し、あとは任せて次の集落に移動する。


 夕方まで集落回りを続けてラザニア村に帰った。


 ウルヴァリンとパイオニア一号を車庫に入れたら五人を労う。


「明日は五人でゴブリン駆除をやってくれ。このメガネを使えば見つけやすくなる。がんばって駆除してくれ」


 暗視、熱探知メガネを取り寄せて渡した。


「はい、わかりました!」


 今日は特別に稼げてホクホクな五人。オレも簡単に稼げてホクホク。明日もかんばろー!

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