第480話 セフティーブレットのメンバー

 よかった。ビシャがワイニーズ討伐を引き受けてくれて。


 これからを考えたら依頼を遂行できるチームはいくつあっても困らない。いや、もっと増えてくれないと困る。これからもっと活動範囲は広くなるんだからな。


「じゃあ、今からビシャに任せる。いついくか、どうするかはビシャたちで決めろ」


 そう言い、ミリエルに視線を向けてから会議室を出た。


 失敗してもいいとは言え、死ぬような失敗をされたら困る。なのでミリエルに監督をお願いしたのだ。


 これはミリエルの教育にもなる。オレの補佐ばかりでなく、オレの代わりに大隊を率いる指揮官として育って欲しいのだ。


 会議室を出た館の一階にある……なんだ? 名称決めてなかったよ。まあ、今は事務所でいっか。請負員が依頼にくるわけでもないんだしな。


「シエイラ。輸送部の人選はどうだ?」


 オレが不貞腐れていた間、ちゃんと仕事をしていてくれたシエイラ館長に大感謝です。


「はい。四名を輸送部に決めました。サイオ、マッシュニ、ロイ、タルダです」


 冒険者ギルドから移ってきた者で、積極的にパイオニアを覚えようとしていた四人だ。


「サイオが輸送部の責任者か?」


「はい。冒険者をしていただけに運転だけでなく戦闘指揮もできますので」


 とりあえず四人を呼んでもらい、巨人に作ってもらった車庫に向かった。


 一応、六台は入れるサイズにお願いしたが、人間の感覚だと十台は入りそうなサイズになっていた。


「新しく買ったパイオニアを出すよ」


 ホームに入り、パイオニア520CCを四台出した。


「小さいですね」


「ああ。あの道だとこのくらいがいいだろう。別に大量輸送するわけじゃないしな」


 二台一組でトレーラーをつければ充分な輸送はできるだろうさ。


「まずは慣らし運転をしてくれ。終わればビシャたちワイニーズ討伐隊を運ぶのが初仕事。あと、コラウスとマイヤーの境界線辺りのゴブリン駆除だな」


 ほんと、セフティーブレットは人材不足だよ。


「あとは、シエイラとビシャとで話を進めてくれ」


「わかりました」


 オレがあれこれ口出しするよりサイオたちに任せたほうが上手くやってくれるだろう。冒険者ギルドで働いていただけにオレよりキャリアはあるんだからな。


 さらにガソリンが入ったドラム缶を三本と予備タンク、トレーラーを出した。


「旦那」


 棚を組み立てていると、ロズたちがやってきた。なんか神妙な顔をして。


「どうした?」


「おれら、マガルスク王国にいってもいいだろうか?」


 マガルスク王国? なんだっけ?


「おれらがいた国です。仲間を連れてきたいんだ」


「あー隣の国な。でも、大丈夫なのか? マガルスク王国ではドワーフは奴隷にされていたんだろう?」


「ああ。だが、コラウス辺境伯の戸籍をもらって冒険者ギルドにも登録した。これなら正式に入れる」


 それで法が守れるなら差別など存在しない。差別は法すら簡単に破るだろうよ。


「万が一の連絡員は忍ばせておけ。なにかあればオレらが助けにいく。生きて助けを求めてこい」


 ロズたちはセフティーブレットのメンバー。なにかあれば助けにいく義務と責任がオレにはある。もちろん、不可抗力はある。すべてのことに対応はできないが、こう言っておけば無茶な行動はせず、助けがくるまで待つだろうよ。


「……ありがとございます」


「必要なものがあればシエイラに言っておけ。なんならダインさんに相談しろ。商人の奴隷としてなら堂々と入れるはずだ」


 正々堂々が通じる時代じゃない。なら、逆手を取って商人の奴隷としてなら堂々と入国できて、ちょっかいはかけられないはずだ。商人は自分の持ち物にはシビアだからな。


「わかりました。ダインに相談してみます」


「ああ。何事も連絡相談報告だ。ロズたちはセフティーブレットの一員なんだからな」


 オレには忌々しいものでしかないが、他からしたら女神の名を冠した組織。それなりの矜持と名誉になるだろうよ。


「はい! ありがとうございます!」


 全員で頭を下げたら去っていった。


 棚を組み立てが終わればシエイラのところに。ロズたちのことを伝え、可能な限り協力してくれと頼んだ。


「あ、タカトさん。ワイニーズ討伐のメンバーが決まりました。明日から用意を始めます」


 館に入ったらミリエルと遭遇した。


「了解。それとなく口出してくれな」


「わかりました」


 そこで別れ、食堂に向かう。お、いたいた。


「少年少女たち。ゴブリン駆除は順調か?」


 ロンダリオさんの弟子みたいな五人の少年少女。もうすっかりセフティーブレットのメンバーになっていた。


「今日は十三匹狩りました」


 初めて放り出された時期を思い出す数だな。


「いつもは何匹なんだ?」


「六匹から八匹です。あいつら隠れるのが上手くて、追い出して皆で倒していると八匹が精々なんです」


「暖かくなって増えたから十三匹も狩れました」


「出ているとは聞いているが、増えたとわかるほどか?」


「はい。草むらから一斉に十匹くらい逃げ出すのを見ました」


 ほんと、空白を埋めるかのように集まってくる害獣だよ。


「明日、オレに付き合ってくれ。どんなものか調べるんで」


 まずは状況把握。対策はそれからだ。


「はい。わかりました」


「じゃあ、明日の八時、館の前に集合な」


 そう告げて自分の部屋に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る