第479話 巨人になれる指輪

 やっと腹が満ちたら眠くなった。


 そのまま眠ってしまう前にシャワーを浴び、五百の缶ビールを飲んで中央ルームのソファーで眠りについた。


 清々しく、ではなく、腹が減って目覚めてしまった。


「この指輪、完全に呪いの指輪だな」


 巨人になるのってどんだけエネルギーを消費すんだよ? 昔のラダリオン以上に食ってないか?


「おはよう。たくさん作っておいたわよ」


 これからパーティーでも始めようかと思うくらいの料理がテーブルに並べられていた。


 シャワーを浴びて目を覚ましたらテーブルについて食事を始めた。


 食ったらすぐ指輪にエネルギーが流れているのか食べても食べても腹一杯にはならない。テーブルいっぱいの料理をすべて平らげてしまった。


 服を捲って腹を見るが、見事に六つに分かれた腹があるだけ。どこに消えたんだよって感じだ。


「これでも足りないか。昨日のケーキが残っているけど、食べる?」


「ああ。まだ入りそうだしな」


 指輪にエネルギーが貯まるのかわからないが、とりあえず食えるだけ食っておくとしよう。


 ケーキもすべて平らげ、ちょっと満足したような感じになった。


「まだ入りそう?」


「そうだな。腹七分、ってくらいかな?」


 あともう少し食いたいな~って感じだ。


「じゃあ、ビュッフェじゃなくデカ盛りのを買ったらどうかしら? 昔はラダリオン用に買っていたんでしょう」


 あー買っていたな。すっかり忘れてたわ。


「今の感じからして十キロを食べたら七分みたいだし、二、三キロのを三品買えばいいんじゃないかしら?」


「なるほど。そのほうがいいかもな」


 食っている感もあるし、味に変化もあるから飽きることもないだろう。


「でも、一食に数万はかかりそうだな」


 一食二万としても一日六万だ。一日十二匹は駆除しないといかんな~。


「ちなみに指輪を外すとどうなの?」


 そう言われて指輪を外してみたら食欲がなくなってしまった。


「……やっぱり、指輪にエネルギーを吸われているみたいだ……」


 指輪を嵌めたらまた食欲が湧いて出てきたよ。


「それならわたしがつけたらどうなるのでしょうか? その指輪、別にタカトさん専用ってわけじゃないですよね?」


 と、いつの間にかミリエルとラダリオンが起きてきていた。


「あー、オレ専用とは言われなかったな」


 まあ、元々細かく説明してくれるダメ女神じゃないがよ。


「わたしにつけさせてください」


 と言うのでミリエルに渡し、人差し指にすんなり嵌められた。


「……どうだ?」


「なにか、巨人になれる気がしてきました──」


 と、グゥ~とミリエルの腹が鳴き出した。


「こ、これまでに感じたことないくらいお腹が空き始めました」


 とりあえずタブレットでデカ盛り料理を買った。


 約二キロの揚げ物全部乗せ的なカレーだ。通常ならミリエルには食えない量だが、十分もしないで完食してしまったよ……。


「ど、どうだ? 腹一杯になったか?」


「いえ、まだ入りそうです。なんだか怖くなってきました……」


 そりゃそうだ。食っても食っても腹が満ちないとかホラーでしかないよ。


「わたしにも嵌めさせて」


 次はミサロに渡し、次は五キロのナポリタンつきオムライスを買った──ら、十五分で完食してしまった。


「こ、これは確かに怖いわね。食べている感覚はあるのにお腹に溜まる感覚がない。なのに空腹が襲ってくるんだから」


「これは、巨人になるエネルギーが貯まるまで食べなくちゃならないのか?」


 そんなんだったら一日中食べてないと追いつかないんじゃね?


「食費が大変なことになりますね」


「まあ、そこは仕方がないだろう」


「あたしが料理を大きくしたらいいんじゃない?」


 と、ラダリオン。それだ!


 場所を巨人たちが建ててくれた家に移し、デカ盛り料理をラダリオンに大きくしてもらった。


「なかなかエグい光景だな」


 それ以上に完食できたエグさに震えが起こる。軽く十キロはあったぞ……。


「どうです? お腹は満ちました?」


「満ちた感じはないが、空腹はなくなったな」


 食後二時間くらい過ぎた感じかな? オヤツが食べたくなる腹具合だ。


「まあ、巨人になれる感じはするし、一回巨人になってみるか」


 そして、最大の懸念は服や装備まで巨大化してくれるかどうかだ。ラダリオンの腕輪と同じならいいが、ダメ女神製ってのが一抹の不安を感じてしまうのだ。


 ……体だけ大きくなって、服は破けましたではただの変質者だよ……。


 とりあえずラダリオンにバスタオルを用意しててもらい、巨人になってみる。


 ラダリオンの腕輪のように操作することはなく、念じれば巨人になれるものだ。


「ほっ。ちゃんと服も巨大化したか」


 グロックを抜いてテーブルに置くが、それだけ小さくなることはない。ラダリオンの腕輪でも検証したが、大きくしたものは小さくなることはなく、タブレットで買ったものは十五日で消滅したよ。


 この指輪もそうだとは言い切れないが、まあ、すぐに小さくならないのらなら構わないか。


「八メートルちょっとくらいか?」


 ラダリオンは約六・五メートル。ん? またちょっと成長してないか? なんかこのままだと抜かされそうだな……。


「大体元の約五倍か。せめて十メートルは欲しかったな」


 三分したら元のサイズに戻った。


「……腹の減りはあんまり変わらんな……」


 ミリエルにも渡して巨大化してもらい、また三分したら元のサイズに戻ってもらった。


「ちょっとお腹が空きました」


 今の感じからして二、三十キロ食えば十分は巨人になれているみたいだな。あとは後々検証していこう。


「さて。ビシャにワイニーズ討伐をやるか訊かないとな」


 帰ってきてもやることいっぱい。さっさと終わらせて夏までのんびりするとしよう。

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