第11章

第477話 *セフティー復活*

「バンパカパーン! わたし、復活しました~! イェーイ!」


 祝賀会も終わり、ベロンベロンに酔って眠りについたらこれである。どこまでも人の幸せを奪うダメ女神だよ……。


「……なんだよ。もう出てこないと思ってたのによ……」


 命の危機を回避できたこともあるが、九割は碌でもないことばかり。心を乱されることばかりなんだから出てこないほうが平穏ってものだ。


「悲しいな~。これでも贔屓してあげてたのにぃ~」


 まったく贔屓された思いがないんだが。それどころかオモチャにされて人生メチャクチャされた記憶しかないんですけど。

 

「なんでもいいよ。なんなんだよ、急に出てきて?」


 別にゴブリン駆除のキリのいいところじゃないし、なにか問題が出ていることもない。急に出てくる場面ではないよね? てか、もう何匹駆除したかもわからんよ。ガチャはミサロに任せていたし。


「いや~。孝人さんをパーにしそうになっちゃった件で配置換えにあっちゃったんですよ」


 なんだよ配置換えって? 女神は分担業なのか? いや、リミット様がいるんだから世界を維持するって一人じゃできないのか……?


「ちょうど最終ステージで勇者を任されちゃって、タカトさんのほうに介入できなかったんですよね」


 そのままそちらを担当していればよかったのに。


「いやそれが負けちゃってね~。また勇者選別しなくちゃならなくなりましたよ。まあ、わたしがやるわけじゃないからいいんですけどね」


 なんなの、このダメ女神。どの位置から言ってんだろうか? 部下に丸投げする無能上司か? てかこいつ、創造神的なものかと思ったが、もしかして中堅な女神なのか? 


「ゆ、勇者は勝ったのか?」


「負けました。あとちょっとだったのに全滅です」


 はぁ? あんな力を出せる存在が負けるとかなにと戦ってんだよ? この世界、ヤバいだろう!


「まあ、瀕死まで追い込んだし、しばらくは平和でしょう」


 神目線で言ってっから不安だよな……。


「哀れな勇者だ」


 明日は我が身とは言え、がんばった結果が死とか報われなさすぎるよ。


「太く短く。それが人生ですよ」


 オレは細く長くを目標に生きていたんだがな。オレの人生決めんなや。


「あ、勇者が死んだことによりチートタイムは終了しました」


 え? あの時間、勇者から奪っていたってことか? まさかそれが原因で負けたとかないよな? そうだったらメッチャ罪悪感なんだが……。


「勇者が負けたのは勇者の責任です。孝人さんが気にすることはありません」


 一番気にしなくちゃならないのはお前だけどな! 責任は巻き込んだ側にあんだよ!


「別になくてもいいよ。あんなチートに頼ると早死にしそうだからな」


 あって助かったことはある。否定はしない。だが、あることで行動が大胆になったのも事実。あるからと命を危険に晒すならないほうがいい。使っても危険なんだからな。


「そうですね。ですが、一度与えた力。なくすのも悪いですから代わりの力を与えましょう。なので、巨人になれる指輪を渡しましょう。ただ、巨人になるとエネルギー消費が激しくなるので昔のラダリオンのようになってしまいますがね」


 それはなんの呪いだよ。メリットよりデメリットのほうが多くないか? まあ、巨人になれるのはちょっとおもしろそうだがよ。


「現在、ゴブリンを五万三千匹以上。あと二百匹ほどで五万四千匹ですね。順調順調。夏は海にいくそうですが、ゴブリン王がいるところを通ると思うので駆除しちゃってください。約六千匹います」


 ゴブリン王、ちょっと立ちすぎじゃね? もはや珍しくもない存在だよ。


「了ー解。駆除するよ」


 どっちにしろ道を通すなら片付けなくちゃならない害獣だ。いきがけの駄賃にしてやるさ。


「それと、リミットのことはごめんなさい。まさかわたしがいない間に接触するとは思わなかったわ。ちゃんと注意しておきます」


「別に構わないよ。有益な情報をもらえたからな」


 イチゴやマンダリンを手に入れられたのは大きい。一千万円の価値はあるさ。


「まあ、孝人さんがそう言うならわたしから言うことはありません。魔王と戦う者とはいずれ出会うでしょう。それがいつになるかはわかりませんが、リミットが犯した責任はわたしが取ります」


 頭の中に情報が入ってきた。こ、これは……。


「今後ともゴブリン駆除に励んでください。二年目が一番死んじゃう時期なので」


 そんな情報いらねーんだよ! 二年目でも三年目でもオレは安全第一に、命大事にやっていくわ。


 意識が途切れ、館にある自分の部屋で目覚めた。


「ハァー。昨日の美味い酒が台無しだよ」


 祝賀会で残った山崎十二年に手を伸ばし、ラッパ飲みをする。クソ! こんな最悪の目覚めなのにウメーんだから嫌になる。


「安酒も置いておかないとな」


 最悪の目覚めには最悪の安酒がよく似合う。悪酔いできて最悪を最悪で掻き消されるしな。


 半分近く飲み、またベッドに潜り込んだ。


 今日は休みにしたんだ。寝て曜日にしてやる。今度こそ清々しい目覚めにしてやる。お休みなさ~い。

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