第447話 帰る支度
酒に溺れた者を請負員に誘ったら二十五人も立候補してきた。
男爵に視線を向ければカップを掲げてゴーサインを出した。ちゃんと意図が伝わっててなによりだ。
酔いが回っているうちに請負員としてしまい、ゴブリン駆除の利を語ってやった。
酒も結構飲んで、気がついたら朝になっており、痛む頭を抱えながらホームに入って熱いシャワーを浴びた。
湯上がりの水が美味い。酒飲みはここまでがセットだよな。
さっぱりしたらガレージに吊るしたサンドバッグを打って汗をかき、酒を抜いた。
水を飲んだらまたシャワーを浴び、パイオニアを運転するので軽装備に着替えた。
「プレートキャリアも臭ってきたな」
消臭スプレーだけで済ませてきたが、それも限界にきている。春になるし、新しいのを買うとしよう。
外に出るとまだ死屍累々が広がっており、踏まないよう職員たちがキャンプしているところに向かった。
「ラダリオン、こっちで寝てたのか」
豚の丸焼きを食っている記憶はあるが、バーバリアンどもと飲み勝負してたから気が回らなかったよ。
職員たちはバーバリアンとは飲んでないようで、テントの中に気配があった。
パイオニア二号、ウルヴァリン、軽トラをホームから出した。
その音に職員たちが起きてきたので用意を任せ、朝飯はホームから運んできた。
男爵が起きただろう時間になったら家に向かい、出発の挨拶をする。
「時間があればアシッカにいって、マレアット様と話してください。あちらもいろいろ変わろうとしているので」
「ああ。マレアット様によろしく伝えてくれ」
挨拶を済ませたら職員たちの荷物をホームに運び入れ、車に乗り込んで村を発った。
アシッカまでの道のりも平和で、十時前にアシッカへ到着できた。
「三日休んだらコラウスに帰る準備を始めてくれ。オレは伯爵のところにいってくる」
オレも早くコラウスに帰って一週間はなにもしないで過ごしたい。そのためにもアシッカを去る準備をしないとな。
伯爵のところに向かい、ミントンカでのことを報告。オレが去ったあとのことを話し合った。
その日は館に泊まり、夜には伯爵と二人酒を飲みながら話し合う。
「そうだ。グロゴールの鱗を一つをミヤマラン公爵に献上しようと思うのだが、どうだろうか?」
「いいと思いますよ。春にはノーマンさんがきますし、そこで話し合ってみてください。食糧援助をしてもらえるならすべてを渡してもいいでしょう。鱗なんて持ってても腹の足しにもならないんですからね」
なんの使い道があるかわからないもの。なにかの役に立つなら渡してしまえばいいさ。
「わかった。ノーマンと話し合うとしよう」
「ええ。ノーマンさんならよく話を聞いてくれるでしょう。ただ、すべてを聞くのではなく、ちゃんと自分の意見も通してください。無茶な意見でなければノーマンさんは叶えてくれるでしょうからね」
一日二日の関係だが、マルドさんと言うバケモノと付き合いがある人。多少の無茶は聞いてくれるだろう。伯爵にはセフティーブレットと言う組織が後ろ盾となっているのは知っているんだからな。
「あと、エルフとも仲良くやってください。あの種族は魔法に長けています。敵にするのは得策ではありませんから」
マイセンズの森はエルフに与えてアシッカの名で保護すべきだろう。そうすればエルフたちは協力してくれる。てか、帰る前に長老に挨拶しにいかないとな。
「ああ。エルフとは盟約がある。しっかりと守るとしよう」
遡ればマサキさんが始まりだろう。ほんと、あの人は足跡を残しすぎだよ。
奴隷傭兵団のことや開墾のことを夜遅くまで話し合い、朝は伯爵と奥さんと一緒に食事をいただいた。
「まだアシッカにはいますが、ここで挨拶を済ませておきます」
館の外まで見送りにきてくれた伯爵と奥さんに別れの挨拶をした。
「ああ。次、会えるのを楽しみにしている」
「ミリエルによろしくお伝えください」
「はい。伝えます」
なんか奥さんと会話したのこれが初めてじゃね? いや、あるか? どうだっけ? と思いながら一礼して館をあとにした。
ギルドに向かうと、サイルスさんやロズたちがいた。
「戻っていたんですか」
「ああ。砦に押し寄せたゴブリンもいなくなったのでな。それに、雪も解けた。そろそろ帰らんとミシャに怒られる」
「妻帯者は大変ですね」
「大変なこともあればいいこともあるさ」
独身者にはよーわからんよ。
「オレらは三日後に帰る準備をします。その前に帰るなら職員の何人かを連れてってください。オレはエルフの長老と話し合ったりしなくちゃならないんで」
エルフだけじゃなく巨人たちとも話し合いをしなくちゃならない。延びるかもしれないから帰りたい職員を連れてってくれるならありがたいよ。
「わかった。おれらもギルドと話し合うから三日後くらいになるだろうがな」
「そのときは一緒に帰るとしましょう」
「ああ。了解した」
「ロズたちは出発までゆっくり休んでてくれ。なんなら先に帰っててもいいぞ」
長いこと家族と会ってない。会いたいのなら先に帰っていても問題ないさ。
「おれらも旦那と一緒に帰りますよ。そのほうが楽ですし」
まあ、ホームに入れるオレがいれば荷物も少なくていいし、車を出せる。わざわざ歩いて帰るのも面倒だわな。
「わかった。戻ってくるまでゆっくりしててくれ」
そう告げてギルドに入った。
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