第439話 ミントラ砦
一班と午前二時に交代して七時まで休んだ。
疲れていたようで、五時間でもすっきり眠れることができた。これも竜の血が原因だろうか? まったく、酒を飲んで二度寝できる体でいたかったよ……。
全員を集めて点呼。健康状態を確認。今日の行動を話し合う。
一班と二班は土嚢作り。三班は木の伐採。砦造りの材料を集めてもらう。
大まかな行動を決めたらホームに入り、まずはラダリオンをダストシュート移動。次に油圧ショベルを出した。
久しぶりの操縦なのでぎこちないが、動かしているうちに感覚を思い出してくだろうよ。
「ラダリオンは、周囲の丘を崩して視界をよくしてくれ。ここら掃射できるようにな」
なるべく隠れるところをなくし、ゴブリンを多く集められる場所を作る。
「わかった」
ツルハシとスコップを持って丘を下りていった。
「まずは頂上の中央を掘るんで、それで土嚢を作ってくれ」
油圧ショベルに乗り込み、中央部を三畳ほど掘ったら土嚢を作ってもらい、オレは頂上部分を均していった。
午前中には頂上部を均し終わり、車十台は停められる広さになった。
「よし。昼休憩しよう。一班は十八時まで休め。二班は十七時までがんばってくれ。ザイル、午後からオレは三班と合流するから指揮を頼む」
「わかりました」
昼飯を食ったら油圧ショベルをホームに片付け、ブラックリンを出して三班がいるほうに向かった。
森までは一キロもないのですぐに到着。三班も昼休憩していた。
「ご苦労さん。順調のようだな」
櫓に適した木が何十本と伐られており、枝払いまでされていた。
「ええ。さすがミントンカの男と言ったところです。おれは枝払いをするのが精一杯でしたよ」
それは居心地悪いな。ザイルには砦に戻ってもらうとしよう。
「三班にはオレが入るからザイルは砦に戻ってくれ」
「それは助かりますよ」
心底ホッとした顔を見せた。一人だけ混ぜて悪かったな。
昼休憩が終わったら砦に向かってもらい、木を伐る作業に混ざった。
ザイルが居心地悪くなるのもわかる。体力が大人と幼児くらいの差がある。女性のミーツですらバーバリアンだ。今のオレでも勝てるかどうか怪しいところだ。
まあ、オレは木材をホームに運び込むので居心地が悪くなることもなし。バーバリアンの仕事を気にせずどんどんと運び込んでいった。
十七時になり前に櫓を作るだけの材料は集められたので、砦に戻ってもらうことにした。
オレはまだ時間があるのでゴブリンの気配が集中している場所へ飛んだ。
これまでの経験からゴブリンの視力は結構いいと感じる。それはボグルスゴブリンが率いていた斥候や昨日のゴブリンが証明している。
だが、視力がいいからと言って知能は五歳児以下。本能優先で生きている。空に意識を向けることはなかった。
……この世界、空を飛ぶ魔物っていないよな……?
レッドなドラゴンやグロゴールなんかがいるから生息できないんだろうか? それはそれで嫌な世界だよ。
「三百から四百と言ったところか」
これも経験からだが、それだけが固まっていると溢れる前兆か王が立ったかのどちらかだ。他にあったら誰もいないところで泣かせてもらうよ。
「いや、さらにいるな」
山脈の奥のほうまでゴブリンの気配に染められている。三千どころか五千まで膨れ上がりそうな勢いだな……。
あの砦だとちょっと容量オーバーっぽい。狂乱化させる前に少し間引いたほうがいいかもしれんな。
「広範囲殲滅魔法を使うか」
ミリエルの話だと、効果は半径百メートル。密集していたら軽く五百匹は駆除できるだろうよ。今日の夜にでも話し合ってみるか。
気づかれる前に旋回して砦に向かった。
その日はイチゴを連れてきて二班三班に酒を出してやり、悪酔いしないていどに楽しんでもらい休んでもらうことにした。
一斑も起きたら用意した風呂に入ってもらい、万が一のときに備えて待機してもらう。
一通り指示を出してホームに入り、夕飯をいただきながらミーティングをした。
「女神様がタカトさんを寄越さなければ滅びていましたね」
「不本意だが、確かにそうだな」
アシッカに四千。地下に一万六千。山脈に五千。ざっと計算しただけでも二万五千匹だ。もう戦争ってレベル。自衛隊を召喚しろよって話だ。
「二千匹はオレらで駆除する方向でいこう。ラダリオンとミリエルはアシッカにいてくれ」
「わかりました。奥様にはしばらく動けないことを伝えておきます」
「タカト。とぅえるぶ、もう一丁買って。二丁撃ちしたい」
すっかりAA−12を気に入ったラダリオン。主装備にしているんだよな。
「了解。マガジンはどうする?」
「ドラムマガジン四つ欲しい」
はいはいとAA−12とドラムマガジンを買ってやった。
満足顔のラダリオン。こいつもこいつで広範囲殲滅兵器だよな。蹂躙されるゴブリンが可哀想……とは思わんか。そんな情もないし。
「明日から櫓作りをする。ミントンカの連中なら一日で作ってしまいそうな勢いだ。二日後には動こうと思う。そのつもりでいてくれ」
うんと三人が頷いた。
夕飯が終わればシャワーを浴びてビールを一缶空けてすぐに眠りについた。明日もがんばるためにな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます