第438話 カランデ平原

 十六時過ぎくらいに男爵が示した地に到着した。


「おれらはカランデ平原と呼んでいる場所だ」


 ライダンド伯爵領のような遮るものがない平原ではなく、波打つ丘があるような平原で、細い木が所々生えている感じだ。


「マスター。ここでいいので?」


「ああ。どこにいようとエサがあれば集まるのがゴブリンって生き物だ」


 でなければアシッカに集まったりしない。要は高いところから狙い撃ちできたらどこでも構わないんだよ。


「一番高い丘の上に砦を造ります。全体を見回せるところはありますか?」


「それならミントラの丘だな。ここからもうちょっと先だ」


「なにか重要な丘だったりします?」


「いや、ただ高い丘だから目印として名づけたまでだ。重要でもなんでもない」


 ってことで、そのミントラの丘に向かった。


 三十分ほど歩くと、丘と言うより山と言ったほうがしっくりくる高い丘だった。


 これはあれだ。ミロイド砦(マルスの町方面の砦ね)と同じ地形だ。


 もう暗くなったのでプランデットをしての暗視見だから丘の稜線しかわからんが、十二分に視界がいい。スコーピオンの射程はギリギリっぽいが、416Dが十丁と予備のVHS−2が4丁、MINIMIが十丁ある。


 それに、一度弾を使い切ってしまいたいのだ。忙しくて触ってないものがあって、もうわかんなくなってんだよ。


「よし。夜営の準備だ」


 ホームに入り、夜営用具を積んだパイオニア一号を出してきた。


 夜営設置は職員たちに任せ、見張りはマルセさんたちにお願い。オレは簡易トイレを設置できる場所を均し、フォークリフトで簡易トイレを二つ、ホームから運んできた。


 簡易トイレの設置が終われば次はパレットに載せた発電機を運んでくる。ほんと、フォークリフトがあるお陰で百キロ以上のものをホームから運んでこれるぜ。


 他にも出すものはあるが、今日はゆっくり休んで明日から本格的に砦建設だ。


 夕飯はミサロが作ってくれたもので済ませ、二十三人を八、七、七の三班(オレ抜きね)に振り分け、一班に組み入れたシエイラとタリアは早々に休ませた。


 二班は魔力の高い職員で纏め、暗視状態のプランデットをかけてもらって見張りをしてもらった。


 三班はマルセさんたちミントンカの者たちで纏め、ザイルに入ってもらい、午前一時に休んでもらうことにする。


 指示を出したらオレはホームに。四人でミーティングをする。


 アシッカはこれと言った問題もなく、マイセンズの砦は未だにゴブリンに囲まれているようだ。


「四万六千匹か。ミサロ。ガチャをやっててくれ」


 忙しくて十回分貯まっている。また大問題が終わってから七十パーオフシールが出たら嫌だ。平和なときにガチャをやっておこう。


「わかったわ。それと、厨房を拡張していい? イチゴに料理を教えたら覚えがいいの。わたしも館に出る頻度が多いからイチゴにもさせたいのよ」


「イチゴ、料理なんてできたんだ」


「ええ。卵も片手で割れたわよ」


 戦闘アンドロイドから料理アンドロイドにジョブチェンジか? いや、万能アンドロイドか。まさか昔のエルフもイチゴに料理させる者が現れるとは思わなかっただろうよ。


「まあ、ガチャやってからな。また拡張してからいいものが出たらやりきれないからし」


 七十パーオフシールは十五枚ほど残っているが、なにが出るかわからないのがガチャだ。一日半額日とか出ても驚きはしないよ。


「わかったわ」


「ミリエル。明日の朝に油圧ショベルをホームに入れてくれるか」


 てか、どこにあるんだっけ? あとPC01も?


「01は南の洞窟にあるので時間がかかりますがいいですか? 30は砦にあるのですぐ入れられます」


「タカト、あたしがいこうか? 砦でやることないし」


「土木作業になるがいいか?」


 ミリエルはアシッカだし、ラダリオンがダストシュート移動するとなると砦まで戻るのに時間がかるな~。


「サイルスさん、まだいるのか?」


「いる。終わったら帰るとは言ってた」


「なら、なにがあっても大丈夫か。ミシニーもいるし」


「食料はどうだ?」


「問題ない。今日補充したばかり」


「なら、お願いするか。時間短縮にもなるしな」


 ラダリオンのパワーは油圧ショベル以上だし、機動力もある。こんなことなら巨人を一人連れてくるんだったな。


「じゃあ、サイルスさんたちに事情を話しておいてくれ。明日の八時くらいにはホームに入ってくるから」


 あ、暖房用のストーブを出すの忘れた。ヒートソードも出しておくか。二本あるし。


 ミーティングが終わったらシャワーを浴び、石油ストーブを抱えて外に出た。


 石油ストーブを設置し、ヒートソードを三百度にしてテントの近くの地面に刺した。


「マスター。ゴブリンの斥候と思われる一団が現れました。数は六です」


「随分と迅速だな」


 組織力が伺えるぜ。


「どこだ?」


「南です。丘に隠れてこちらを見ています」


「予想以上に知能が高い」


「倒しますか?」


「いや、放置して構わない。どんなに知能が高かろうと数でしか判断しないだろうからな」


 でなければ装備等でこいつらはヤバいと判断できるはずだ。


「明日動けば逃げるだろう。油断させておけ」


 こちらをナメてくれるゴブリンは大歓迎だ。


「油断しないていどに頼む」


 オレもプランデットをかけて見張りに立った。

 


        2023.2.1

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