第436話 バーバリアンな男女
なんて見た目の衝撃はなかったことにして、奥さんが淹れてくれたお茶をいただいた。
「ここでも羊乳の紅茶を飲むんですね」
ライダンド伯爵領で飲んだのと同じ味がする。
「ミントンカはライダンドから流れてきた一族なのだ」
へー。あそこからわざわざここにか。なんかいろいろあったんだろうな~。
「ライダンドにいったことあるのか?」
「ええ。商人の護衛としていきました。雄大なところでしたよ」
馬に乗れたら駆けてみたいところだよな。そんな余裕もなく帰ってきちゃったけど。
「そうか。一度いってみたいものだ」
お茶を飲みながら昔話を聞き、一段落したらゴブリンの情報を教えてもらった。
簡易な地図を見せてもらい、ミントンカの実情や魔物の発生状況なんかを聞き、本題のゴブリンのことを教えてもらった。
農作物は柵の中で栽培してたり、外から買ってくるのでゴブリンの被害はないが、姿はよく見るそうだ。
「よく見る、ですか。これはかなりの数がいますね」
ここからでもかなりの数の気配を感じる。これは、五千匹は余裕でいそうだな。
「ゴブリンを大量に殺すので、伐採するところから離れた場所がいいでしょう。どこがいいですかね?」
埋めるのも面倒だから腐敗しても問題にならない場所がいいだろう。
「それならこことここだな」
山脈の中腹と村から見て西の方向か。さて。どっちがいいかね?
「……うん。村の西にしますか」
「なぜだ?」
「山はまだ雪が残っているでしょうし、平地なら全方位に攻撃できます。堀か柵で囲めば苦なく大量に駆除できるでしょう」
こちらはオレもいれたら十七人になる。イチゴも混ぜたら千匹に囲まれようと問題なく駆除できるだろうさ。
「申し訳ありませんが、案内人を貸してもらえますか? お礼はしますので」
情報料と一緒に金貨一枚を出した。
「わかった。腕利きを六人出そう。好きに使ってくれ」
「貴重な人材を割いてもいいのですか?」
「今は仕事がない。よければ給金を与えてくれないだろうか? そちらの負担にならぬていどで構わぬので」
ちょっと大所帯になってしまうが、現地の金は使い切れないほどある。この地の収益が上がれば伯爵の負担も減る。ここは受けておくのが吉な。
「何日になるかわからないので前金として金貨五枚を渡します。食事はこちらで持ちますが、指揮権はこちらに渡してもらえますか? もし、死人を出したら家族に金貨五枚渡します。無事ことが終わればさらに金貨五枚を渡します」
こちらの命令を聞かない者はいらない。聞いてくれるなら金を払う。それでどうですか?
「随分と破格だな」
「それに相応しい働きをしてもらうだけですよ」
バーバリアンな野郎どもなら砦造りも捗るだろうよ。うち、肉体労働の職員が少ないんですよ。
「よかろう。よく言い含めておく」
ってことで、一旦解散。オレらは皆のところに戻り、車をホームに片付けた。
西の地までは細い道があるようで、半日くらいでいけるとか。今が十一時過ぎだから暗くなる前には着けるとのことだ。
遭難することもないし、木もまばらに生えているので視界が悪いと言うこともない。シエイラとタリアの装備は軽めにして、腰回りだけでいいだろう。
野郎たちはがんばれ。これも訓練だ。
もちろん、オレもフル装備ですよ。オレ、初めてのところにはしっかり備えて挑まないと不安を感じる性格なんで。
「タカト殿、待たせた」
準備が整い、各自休んでいたら男爵とバーバリアンな男たちがやってきた。
ん? バーバリアンな野郎の中にバーバリアンな女が一人混ざってんですけど。どーゆーこと?
「マルセ、ゴゴ、サントル、ラダジ、ミーツ、カラッタだ」
野郎どもの見た目から四十歳に見えるが、男爵の例がある。もしかしたら同年代かもしれないな。女性は若い。きっと男爵の奥さんと同じくらいだろう。
……男女の見た目の差が激しいところだな……。
「ゴブリン駆除ギルド、セフティーブレットのマスターのタカトです。皆さんのご協力に感謝します」
「マルセを代表とした。マレビアの兄でわたしの義兄だ」
じゃあ、やっぱり同年代か。ここは、老け顔じゃないとナメられる文化なんだろうか?
「よろしくお願いします。さっそくですが、ミーティング──そこまでいく計画を立てましょう」
反論が上がるかな? と思ったけど、男爵がちゃんと言い含めておいてくれたみたいで誰も口を開かなかった。
西の地には全員がいったことがあるようなので、二組になってもらい、先頭、中、最後尾に立ってもらい、なにかの拍子に隊がバラけたときに率いてもらうことにした。
「こちらには長距離歩いたことがない者が多いので、小まめな休憩と歩行はゆっくりでお願いします。皆も無理をするな。疲れたら疲れたと素直に言え。別に急ぎでもない。途中で野宿になっても構わないんだからな」
どっちにしろ何日かは空の下で暮らすのだから、途中で野宿したからってなにも変わらないさ。
「マルセさんたちには手間でしょうが、若い者の訓練だと思って付き合ってください。食料は充分にあるので」
昼前なので、ホームからミサロ手作りのハンバーガーが入ったバスケットを取り寄せた。
「腹拵えしたら出発しましょうか。男爵様もどうぞ」
さらにバスケットを取り寄せ、皆に配った。
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