第427話 足跡を残しすぎ
体調万全。力もりもり森脇○児。心健やかな午後である。
「やっと帰れると思うと、ちょっと寂しく……はないな。二度とくるか」
こんなところ頼まれたってくるかボケ! 九割九分最悪な記憶しかねーわ!
テントを片付け、忘れ物がないかを確認。さっさと地上に向けて出発した。
何事もなく洞窟まで辿り着けたが、ロースランの群れがいた。
ローダーを食うロースランの群れ。そして、それを狩るオレら。弱肉強食な世界である。
皆でロースランを解体し、ホームを通して地上に運んだ。グロゴールより何百倍も役に立つ生き物である。ほんと、最後にいいお土産ができたよ。
「マスター!」
一休みしていると、洞窟から何人かのエルフが出てきた。あれ? ベースキャンプにいたのか?
「ずっといたのか?」
「はい。万が一に備えていました」
「それはありがとうな。オレたちで最後だから放棄していいぞ」
「いえ、長老よりまたここにくるためにも整備しろと命令されているんです」
まあ、エルフからしたらここは聖地。放っておくことはできないか。いずれ平和になったら観光地化したらいいさ。オレには関係ないことだ。
「まだローダーやロースランがいるから気をつけろよ」
「はい。お任せください」
別に任せることなどなにもないんだが、やる気に水を差すのも野暮ってもの。頼むよと返しておいた。
「土魔法で整地したみたいだな」
ゴツゴツしてたのにアスファルトで整地したかのように歩きやすくなっていた。
天井も高くなっており、屈まなくてもよくなっている。エルフって土木に長けた種族だよ。
ベースキャンプまでくると、なんか岩の家ができており、魔法の光が煌々と灯っていた。ちょっとした地下村じゃん。
エルフ、そんなにいるわけじゃないのに三十人くらいいる。地上、大丈夫なのか?
「小舟まで運び込んだのかよ」
簡素な小舟ではあるが、四隻もあったよ。仮足場までだってかなりの距離はあるだろうによく運び込んだものだ。
「はい。我々ではウルトラマリンを整備できませんし。もっと穴を大きくしたらマンダリンを持ち込みます」
本格的に地上との道を造ろうとしているよ。
「サイルスさん。時間的に遅いですし、ここで一泊しますか」
時刻は十九時。ロースラン解体に時間を使いすぎたよ。
「そうだな。そう急ぐこともないしな」
ってことで、キャンプの用意をする。
これからのがんばりを応援するために地下村の連中に十万円分のワインを買ってやった。一本三百円のだから一月は楽しめるだろうよ。いや、酒好きエルフなら半月でなくなるか?
まあ、あとはゴブリンを駆除して稼いでください。落ち着けばゴブリンは戻ってくるだろうからな。
その日は深酒にならないていどに楽しみ、早めに眠りについた。
次の日も清々しく目覚め、九時くらいに出発する。
ビシャがウルトラマリンを運転できるので、一台を任せて皆を仮足場に運んだ。
仮足場が本格的な足場となっており、こちらにも小舟が四隻あった。
行動力があるというのかパワフルというのか、エルフって凄い種族だよ。さすが前文明覇者の生き残り。すぐに復活しそうな勢いだ。
ウルトラマリンは片付けて構わないと言うのでホームにイン。しばらく使わないだろうからガレージの二階に移した。
外に戻ってくると、サイルスさんとロズたちは先に進んでいるとのことだった。
もうここまできたら危険な者はいない。出てもゴブリンだ。メビとビシャ、ミシニーの四人(イチゴはホームに戻しました)でも問題はないさ。
「階段にしたんだ」
土魔法が使えると洞窟改造も早いものだ。楽々昇れるよ。
とは言え、地上まで二、三百メートル。休み休みいかないと挫けそうである。やっと地上に出たら夜になっていた。
「……空気が美味い……」
久しぶりの地上。空気のありがたさに涙が滲むよ。空気、ありがとう!
「てか、ここもいつの間にか村になってんな!」
小屋がいくつも建ており、柵が作られていた。なんか浦島太郎になった気分だよ。
「陽も高くなったな」
十七時を過ぎたのに太陽がまだ出ている。オレ、本当は三ヶ月くらい入ってたんじゃね?
「タカト、きたか」
先に出ていたサイルスさんたち。なんかホカホカしていた。
「お前らも風呂に入れ」
風呂? と案内されて向かうと、本格的な銭湯ができていた。エルフどんだけだよ!
「エルフはどこに向かってんだろうな?」
いや、これはマサキさんが原因か? オレは銭湯とか教えてないし。
あの人、三年も生きてないのに足跡を残しすぎてないか? いろんな女性と子供作っているし、本当にゴブリン駆除してた? どんな人生だったのよ?
「とりあえず、風呂に入るか」
昨日は酒盛りしてそのまま眠ってしまったしな。
「タカト、一緒に入ろう!」
「女湯はあっちだ」
男湯に入ろうとするメビをミシニーに渡した。体は十四歳くらいなんだからアウトだわ。
混浴にしなかったマサキさんの良心に感謝して男湯に。番台があって銭湯の脱衣場であった。力を入れるとこ、絶対間違えているよな?
「タカト様、いらっしゃいませ。ただですのでどうぞ」
番台に座る老婆のエルフがタオルを出してくれた。
なんだかな~と思いながら装備を外し、タオルを腰に巻いて浴場に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます