第426話 調査隊

 出てきた魔石は濃い緑色をしており、サイズは意外にもボーリングの球くらいだった。


「重っ!? なんだこれ?!」


 ボーリングの球って重さじゃなかった。てか、持ち上げられなかった。


「旦那。おれがやります」


 ロズに代わってもらったが、少し持ち上げて断念してしまった。ロズで無理なら二百キロくらいあるんじゃないか?


「ラダリオンに取ってもらおう」


 無理しても腰を痛めるだけだ。素直に巨人状態のラダリオンにお願いするとしよう。ラダリオーン、カモーン!


 やってきたラダリオンはひょいと魔石をつかんで持ち上げ、地面に置いてくれた。あんがとさん。


 改めて持ってみようとするが、やはり持ち上げられないくらい重かった。どんだけ魔力が固まってんだよ? 


「イチゴ、これを持ってくれ。ホームに運ぶ」


 とてもじゃないがオレには無理なのでイチゴに持ってもらった。


「平気か?」


 イチゴもひょいと持ち上げてしまった。


「出力の半分です」


 さらに倍の物を持てるってことか。ロースランやオーグなら軽く殴り殺せそうだな。


 イチゴをつかんでホームに入り、ガレージの奥に置いた。重さはともかくボーリングの球サイズでよかったよ。場所を取られなくて。


「あ、タカトさん。東の洞窟からゴブリンが溢れたそうです」


「今? 随分と時間差があったな? 応援が必要か?」


「いえ、大丈夫です。ロンダリオさんたちやアリサさんたちが張り切って駆除しています。三万八千匹を突破しました」


 三万八千匹か。確か、地下に一万六千匹はいると言ってたな。あれ? 何匹のときにあと一万六千匹だったっけ? すっかり忘れたわ。


「ガチャ、何回できたっけ?」


「五回です。報酬は約九百三十万円です」


 お、増えているじゃん。地上に逃げたのが相当いるってことだな。


「そっか。なら、ガチャを引いててくれるか。オレたちは今日と明日休むから」


「わかりました。ゆっくり休んでください」


「ああ。ミリエルも好きなときに休んでいいからな」


「はい。そうします」


 秘蔵のマッカラン十二年のを持って外に出た。


「さあ、オレたちも酒を飲むとしようか。イチゴ、見張りを頼むな。ラダリオン、ホームに入って休んでいいぞ。なんなら地上でゴブリン駆除をしても構わないから」 


 なんかの映画みたいにさらなるモンスターが、とかだったらすべてを捨てて逃げさせてもらうよ。これ以上やってられるか! だ。


「地上に出る。この臭い、キツいから」


 結構高い防臭マスクをしているが、嗅覚の鋭いラダリオンには慣れるってことはないだろうよ。


「ああ。そうしろ。なんかあればすぐ呼ぶから」


 ダストシュート移動は使えるとわかった。なら、いつでも呼べるし、いつでも逃げられる。あとはこの方法を確立していくだけさ。


 ラダリオンがホームに戻ったらオレたちも酒盛り開始。サイルスさんはファ○タで乾杯。久しぶりに明日など考えず浴びるように飲んだ。


 で、二日酔い者続出。皆仲良く虹色の物質をキラキラさせましたとさ。


 頭いってー! とか呻きながらも心は満たされていた。だってこれは生きている証拠。あんなバケモノと戦い、生き残れた褒賞だ。こんな嬉しいものはないだろう。


 一日寝て曜日を過ごし、回復した者から起き上がって地上に戻る準備を開始した。あ、小さい鱗を剥がしておいてちょうだいな。


「タカト。マンダリンを出してもらっていいか?」


 復活したカインゼルさんがマンダリンを要求してきた。相変わらずな人だよ。


「タカト。おれの分も頼む」


 アルズライズも続き、マイズたちまで出してくれと言ってきた。どんだけ空を飛ぶことに取り憑かれてんだよ?


「少し待ってください。ホームには一台しかないんで」


 グロゴールとの戦いでホームに入れていたブラックリン二台は失われ、マンダリン一台しかないはず。ミリエルがいてくれるならすぐに出せると思うが、いなかったらすぐには出せないだろうよ。


 痛む頭を抱えながらホームに入ると、運よく皆が揃っていた。


 ミリエルに砦にあるマンダリンを運び入れてもらい、外に出していく。ついでにブラックリンも二台、ホームに入れてもらった。


「ついでだから湖の奥を調べる調査隊を作りますか」


 ローダーやグロゴールがどこから入ってきたか調べたいと思っていた。なら、マンダリンに乗りたいヤツらで組織しよう。アルズライズにはまだアポートウォッチを預けてある。補給は万全なのだからそのまま外に出ても問題なかろうて。


「カインゼルさんが隊長で仕切ってください」


 指揮をするならカインゼルさんしかいないし、任せられるのもカインゼルさんしかいない。マイズたちもカインゼルさんなら従ってくれるだろうからな。


「アルズライズ。カインゼルさんをサポートしてくれな」


「任せろ。冒険なら専門だ」


 頼りになる男は格好いいよ。


 オートマップや必要な物質を運び出し、用意が整ったら五台のマンダリンに乗り込んだ。


「まずは湖まで目指す。そこで練習するぞ」


「ついでに湖の底に沈んでいる卵があったら潰しておいてくれ。これをたくさん買ってあるから湖にばら撒いてくれ。ちょっとした毒だ」


 サン○ールを一つ取り寄せてアルズライズに渡した。


「わかった。ローダーがいたらついでに狩っておく」


「ああ、頼むよ」


 グロゴールから生き延びたローダーは五匹くらいいる。メスかオスかは知らないが、狩れるなら狩っててもらおう。また増えて狙われたら堪らんからな。


 カインゼルさんたちが飛び出していったらテントに入って眠りについた。オレらは明日、地上に戻るんでな。

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