第416話 勝つぞ
グロゴールが団地に消えたらホームに入った。
「非常事態だ。グロゴールと言う竜が現れた。体長二十メートル。駆けるのが得意で硬いのが特徴らしい。ローダーをエサにしているみたいだが、人も襲うようだ。今のメンバーで相手する。いつでも出れるように用意しておいてくれ」
ミリエルはいなかったが、ラダリオンとミサロはいたので簡単に説明して、いつでも出れるよう伝えた。
「グロゴール。聞いたことあるわ。南部に現れて十六将の一人が酷い目に合ったとか。それで放棄することになったって」
「魔王軍も逃げる相手かよ」
てか、魔王軍弱くね? 十六将の……なんとかさんも通常攻撃とチートタイムで殺せたし、もしかして、それほどでもない相手なのか?
「竜は最強種よ。見たら逃げるか隠れるしかないわ。戦おうと思うほうがどうかしているわ」
「確かにどうかしているレベルだったよ。だが、アルズライズの家族を殺した竜らしい。オレはアルズライズに死んで欲しくない」
この世界で出会った気のいい仲間であり友達だ。無謀に突っ込んで無駄死にさせたくはない。生きて勝たしてやりたいんだ。
「はぁー。仕方がないわね。タカトがやると言うなら全力で支えるわ。わたしはタカトの壁だからね」
壁? なんのことだ?
「ラダリオンは砦に説明をしてくれ。いつでも動けるようにな」
「わかった」
「ミサロも一応職員に伝えておいてくれ」
万が一のときのために伝えておいたほうがいいだろう。
ホワイトボードを引っ張り出してきてマイセンズの見取り図を描く。
大まかな作戦はアルズライズに言ったとおり、グロゴールにこちらを過小評価させ、油断したところを目を潰して機動力を奪う。あとは少しずつ削っていく、だろう。
あんなもん正面切って戦えるのは三分間ヒーローくらいなもの。弱者は弱者なりに敵の弱点を一つ一つ潰していくまでだ。
幸いにしてこちらにはプランデットがあり通信ができる。まあ、全員が使えるわけじゃないが、こちらからは伝えられる。位置もわかる。オレとイチゴでオペレーターをやれば有利に動ける。
アルズライズがいてサイルスさんがいてカインゼルさんがいる。オレの言葉を聞いてくれる者もいるのだから勝率はかなり高いと言っていいはずだ。
「タカトさん。どうしたんですか?」
ホワイトボードの前で悩んでいたらミリエルが入ってきた。
グロゴールのことを教え、大まかな作戦を伝える。
「悪いが、ミリエルは砦まできてくれ。ただ、地下には入ってくるなよ。誰かは地上にいて欲しいからな」
「わかっています。わたしでは対応できないでしょうから」
なにか最近、素直になったと言うか聞き分けがよくなったと言うか、自分のポジションを理解したよう感じになっている。オレの知らないところでなんかあったの?
「状況によってはミリエルを呼ぶかもしれないから用意だけはしておいてくれな」
「はい。任せてください。わたしはタカトの杖ですから」
杖? なんなの? ミサロは壁だと言うし、ラダリオンは槍とか言ってたし。なんかのたとえか? まあ、確かにラダリオンは槍っぽいし、ミリエルは杖っぽい。ミサロの壁ってのはよくわからんが、まあ、役割としての符号なんだろうよ。
そうなるとオレはなによ? 鉄砲玉とかだったら止めてくれよ。洒落にならんからよ。いや、セフティー・ブレットと名乗らされてるけど!
「そのグロゴールはマイセンズを自分のテリトリーとしているんですか?」
「いや、違うと思う。アルズライズやミサロの話からグロゴールは竜が住む地から流れてきたみたいだ。マイセンズはローダーが巣に……している感じはしないな」
ローダーは暖かい地で生きるバケモノだ。寒い地のロンガルを連れてくるなんて変だろう。いるってことは生きたまま連れてきたってことだ。ローダーにできるとは思えない。いったい誰が連れてきたんだ?
深まる謎に背筋がか冷たくなる。が、今はそんなことを心配している場合じゃない。グロゴールを倒すことだけを考えろ。
「まずはグロゴールの行動を知らないとダメだな」
ローダーをエサにしているならしばらくはマイセンズにいるはずだ。行動を探るくらいの時間はある。
敵を知り、己を知ればなんとやらだ。知らない人生ですみません。
「じゃあ、オレは出る。速やかに砦に移ってくれな」
「はい。すぐに」
うんと頷き、ブラックリンを二台外に出した。
「アルズライズとビシャはグロゴールをプランデットに収めてくれ。プランデットには解析する機能がある。情報はオレのほうで調べるからできるだけ多くの姿を収めてくれ。気づかれたら即逃げろよ。ブラックリンは捨てても構わないから」
「ああ、任せろ。殺す前に殺されたりはしない」
「見つからないようにやるから任せてよ」
「ああ。オレはメビやイチゴと合流して用意を調える。終わったらまた連絡する」
通信はできても作戦を理解し合うには面と向かってのほうがいい。それに、補給もしなくちゃならない。
「あ、アポートウォッチを持っていけ。隙を見てカインゼルさんたちに補給物資を渡してくれると助かる」
「わかった」
アルズライズにアポートウォッチを渡し、アポートポーチをもらった。
「じゃあ、勝つぞ」
拳を突き出すと、すぐに理解したアルズライズが拳をぶつけた。
「ああ、勝つさ」
「あたしも!」
ビシャも拳をぶてけてきた。
ニヤリと笑い合い、それぞれブラックリンに乗り込んだ。
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