第415話 グロゴール
この世界はいったいなんなんだ?
魔物がいることは納得できた。エルフが魔石を採るために作られた生き物であると。
まあ、巨大な虫もなんとか納得できる。きっとデカいまで魔石が欲しかったのだろう。イチゴみたいなのがいれば採取するのもそう難しいものではないからな。
だが、アルズライズがグロゴールと言った巨大生物は意味がわからん。なんのために生み出されたか想像もつかん。
あんなのがいる世界で知的生命体を一万年生存させるとか無理だろう! 魔王だっているんだぞ! てか、魔王を倒す人でもあんなのを倒すとか無理でしょ! 自衛隊呼んでくるレベルのものだぞ! 中世レベルの世界にいちゃダメな存在だろうが!
「アルズライズ。あれがお前の仇か?」
「……ああ。サラとアレクを殺したヤツだ……」
今にも怒りで爆発しそうな雰囲気だ。
不味いな。このまま放っておいたらそのまま突っ込んでいきそうな勢いだ。
「じゃあ、殺るぞ」
「タカト?」
怒りを忘れてキョトンとした顔をこちらに見せた。
「殺るんなら確実に殺るぞ。今なら殺れるだけの人数と武器がある。あとは殺れる作戦を考え、準備して、実行するだけだ。怒るのはあとにしろ」
ローダーを食うような存在であり、人間すら食う存在でもある。放っておくのは危険だし、なにより仲間の仇だ。オレ知っらねー! はできんだろう。
「……いいのか……?」
「見なかったことにできないんだろう? なら、やるしかないだろう。だが、無謀な特攻は許さないからな。安全第一、命大事に。確実に、だ。だから知っていることを話せ。グロゴールのことを」
まずは敵を知ることからだ。
「グロゴール。竜の一種とされている。翼があるが、自由自在に飛ぶことは苦手として、走るほうが得意だ。体は鱗に覆われているから弓や槍は弾かれる。爪は城壁すら簡単に切り裂く。魔法抵抗値は高いが、魔法攻撃はしない。速さと堅さのバケモノだ」
「視覚や嗅覚はどうだ?」
「嗅覚はわからんが、目はいい。かなり遠くのものでも見えているようだ」
性質的には獲物を見定めていっきに狩る類いか。
プランデットが反応して現れるまで数秒だったことから考えると、新幹線並みに走れるのだろう。
だが、それは不意打ちや広い場所でこそ活かされる。こんな狭い空間では十全に発揮されることはないだろう。
「敵は速さと視力のバケモノ。なら、その二つを奪ってやればいい」
相手は確かにバケモノだ。自衛隊を呼んでくるレベルだ。だが、生き物。究極生命体でもないなら殺せると言うことだ。
「知能は高いのか?」
「わからん。だが、ウワサではこの地のどこかに竜が住む地があると言う。もし、そこで生きた竜ならバカでは生き残れないはずだ」
竜が住む地? この世界には暗黒大陸みたいなのかあるってことか? 益々人類が生き残れる未来はねーだろうが!
「ったく。あのクソ女神は。下手くそにもほどがあんだろう」
それともなにか? エルフの前は竜を知的生命体にしようとしてたのか? 竜人とかいたりするのか?
いや、今はそんなこと考えている場合じゃない。グロゴールを倒すことだけを考えろ。
「RPG−7で畳み掛けるのではダメなのか?」
「あれは狙い撃ち用だ。姿を現したら撃つ前に殺される」
初見の敵ならRPG−7を知らないから当てられるかもしれないが、何度も見て学習されたら使いどころがなくなってしまう。
「やるんならまずは目を潰す。できたら次は脚を狙って機動力を潰す。あとはRPG−7で畳み掛ける、だな」
言葉にすれば簡単だが、やるとなると命懸けだ。確実に勝てるようにするなら緻密な計画が必要だろうよ。
「てか、グロゴールってローダーが主食なのか?」
「どうだろうな? 村や町を襲ったという話は聞いたことはないが……」
もし、竜が住む地から飛んできたヤツなら新しい地でなにが食えるかわからない。アルズライズの家族は試し食いされたとかか?
生き物としては当然だし、オレも無人島に放り出され出せたら食べられるかどうかまずは口に入れるだろう。まあ、当然と納得できないのが人間って生き物だがな。
生態をよく調べてから、ってことができたらいいのだが、そんなことしていたら逃げられてしまう恐れもある。やるなら今だろう。
安全第一、命大事に。やるなら確実に。とか言いながら臨機応変に動かなくちゃならない。人生、いつだって矛盾を抱えて生きなくちゃならない、だな。
「全員、そこから絶対に動くな。手を出すな。ローダーを食っているのはグロゴールと言う竜だ。無秩序に攻撃しても倒すことは不可能だと思う。ただ、こちらを過小評価させて油断させることはできる。カインゼルさん。グロゴールを攻撃して仮拠点のほうに誘い出してください。グロゴールを殺します」
どうせ逃げろと言って逃げる人たちではない。なら、明言して覚悟を決めさせるほうが慎重に動いてくれるはずだ。
「了解。無茶するなよ」
「努力します」
「アルズライズ。絶対タカトを守れよ」
説得は無理と判断してアルズライズに標的を変えた。
「言われるまでもない」
怒りや恨みはなくなり、いつものアルズライズとなった。
「サイルス様も承諾なされた。やるぞ」
と、銃声が轟き、グロゴールが顔を上げて背後を振り返った。
数秒カインゼルさんたちを見定めたのち、大地を蹴って走り出した。
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