第414話 レッドアラート
侵入してきたロスキートを防火扉を閉めて防いだ。
さすが古代技術。凄まじい音を立てて叩いてくるが、防火扉はヘコみもしない。防火じゃなくて防御だったか?
一息するのもそこそこにさらに奥へ向かい、扉を閉めていく。
「サイルスさん、オレです。仮拠点に向かっています。あと五分くらいで到着します」
途中で扉が閉めてあり、ロスキートが一匹惨殺されていた。おそらくEARで撃ち殺したんだろう。
「わかりました。途中、ロスキートを閉じ込めた場所があるので気をつけてください」
プランデッドの使い方を覚えたエルフが応えてくれた。ごめん。まだエルフの名前覚えてないんです。
「了解」
扉には小ドアがついており、閉めても鍵はかけないようにしてある。ゴブリンやロースランの知能では開けられない構造になっているからだ。
「ビシャ。奥にロスキートが二匹いる。倒せ」
「了解!」
この中で最速なのがビシャだ。ロスキートが二匹いても問題はないだろう。
アルズライズにロックを外してもらい、二十センチくらい開けたらフラッシュグレネードを放り込んだ。
爆発してロスキートの鳴き声がしたらビシャを突入させる。
「仕留めたよ!」
十秒もしないてビシャの報告。ラットスタットを使ったとは言え、秒殺とか末恐ろしい子である……。
「ご苦労さん。よくやった。偉いぞ」
褒めて欲しそうなビシャの頭をわしわしして褒めてやる。ほんと、中身は子供なんだから。
それ以上はロスキートはおらず、仮拠点までやってきた。
「サイルスさん。負傷者はいますか?」
「いない。全員無事だ。ただ、洞窟に逃げる前にロスキートの群れに塞がれてしまったよ」
「ロスキートってこんなに群れるものなんですか?」
軽く三百匹は集まってきた勢いだぞ。あれだけいたら脅威どころか災害だろう。
「いや、あんなに群れたりはしない。群れても精々二、三匹。あいつらは基本、単独行動をするからな」
それがこれだけ集まるとか王──虫の場合、女王か? 女王が立って集結したとかか?
「今年は特に雪が多いし、南でも降って逃げてきたのかもしれんな。ここは冬を越すのに適していそうだし」
ったく。とんでもないときにこさせやがって。わざとだったら覚えてろよ、クソ女神が。
「すぐに出発しようと思うんですが、大丈夫ですか?」
イチゴが外にいてロスキートたちを引きつけていてくれる。チャンスは今でしょう。
「ルンが切れかかっている。補充してやってくれ」
そういやマイズ以外はEARだった。よく切れなかったこと。
ルンとマガジンを取り寄せてやり、食料も足りなくなっていたので遅めの昼食を摂った。
時間は十五時になり、仮拠点を出発する。
洞窟までは距離にして約三キロ。二キロは地下を移動して安全にいけるが、残り一キロは地上をいかなくちゃならない。
地下から出て動体反応を探ると、発着場辺りにローダーが二匹。団地周辺に五匹が散らばっていた。
「ロスキートはイチゴが引き連れて、ロースランの巣があったところにいます」
スケッチブックに地図を描いてローダーの位置とロスキートの位置を示した。
「全員で動くのは目立つな。まずは脚の早いヤツを洞窟に向かわせよう。上手く引きつけられたらローダーの背後を取れるだろう」
ここからは指揮と作戦はサイルスさんにお任せ。オレ、五人以上を指揮するとか無理なんで。
「マイズ、ライド、ログ、メビでいけ。タカト、RPG−7を二つ持たせてくれ」
RPG−7を二基と弾頭を四発渡した。
「メビ。EARじゃ火力不足だ。重いが、リンクスを持っていけ。カインゼルさん。メビにアポートポーチを渡してください」
力ならオレより上。アポートポーチさえあれば他の荷物はいらないだろうよ。
反対する者はいないのですぐに建物から先陣が飛び出した。
プランデットでローダーの位置を教えながら先陣を誘導するが、団地と洞窟の間は百メートルくらいなにもない。さすがに発着場辺りにいたローダーに気がつかれてしまった。
「第二陣。タカトとアルズライズ、ビシャだ。洞窟の前にいるローダーは必ず倒せ」
了解と答えて飛び出した。
オレもアルズライズもリンクスを抱えている。RPG−7はビシャに持ってもらってます。
オレに合わせて走っているので疾走まではいかないが、先陣が引きつけてくれているので団地から出れた。
先陣は上手く洞窟まで辿り着けたのだろう、ローダーが壁に鎌を立てていた。
「アルズライズ。オレは左をやる」
「了解。右は任せろ」
ローダーまで八十メートルくらいのところで腹這いとなり、狙撃体勢を取った。
狙いを定めて引き金を引く──。
──ビービービービー!
いきなりのレッドアラート。
なにがなんだかわからないままにチートタイムスタート。アルズライズとビシャを抱えて逃げ出した。
あとで寝込もうが構わない。全力で走り、壁を登り、発着場に逃げ込んだ。
チートタイム中なのに息切れが激しすぎる。全速力で百メートル走ったより辛いぞ。
なんとか息を整え、アルズライズになにが現れたと問おうとしたら頭を押さえられて床に張りつけられた。
「声を出すな。あそこだ」
頭から手を退かされ、驚愕するアルズライズが見る方向に目を移して絶句した。
洞窟の前に緑色のバケモノがいた……。
「……グロゴールだ……」
アルズライズが呻くように呟いた。
───────────
ふー。やっとここまでこれた。
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