第404話 お家に帰る!
──ピッ。ピピッ。ビー! ビー! ビー! ビー!
リンクスの銃撃音が鳴り響いたと同時に動体反応の大合唱。そして、画面が赤く染められた。
これはレッドアラート。危険なものを察知したってことだ。
「サイルスさん、ローダーの群れです! 全速力で退避してください! イチゴ、止めを刺せ!」
そう叫びながら煙幕弾を入れたM32グレネードランチャーを取り寄せ、上空に向けて発射した。
さらにスモークグレネードを取り寄せてはピンを抜いて辺りに放り投げる。
「イチゴ! 下がるぞ! タワマンまで走れ!」
走りながらM32グレネードランチャーに煙幕弾を詰め、すぐに周辺に撃っていく。
「イチゴ! お前はサイルスさんと合流。指揮下に入れ! あとリンクスを貸せ!」
M32グレネードランチャーをイチゴに放り投げ、イチゴが投げたリンクスを受け止めた。
林から出たら振り返り、マガジン交換。リンクスを構えた。
現れたローダーは十……八。動体反応から十メートルサイズのばかり。動きは速く、一匹が目の前に着地した。
気のせいか、目の前に着地したローダーが怒っているような。もしかして、イチゴが殺したメスの旦那さんですか?
そうだとばかりに鎌を振り上げた。
──チートタイムスタート!
振り下ろされた鎌を躱して頭に向けて一発。腹に一発。ジャンプして後頭部に一発。背中に着地して二発撃ち込んでやった。
すぐに下りてチートタイム停止。転がるようにホームに逃げ込んだ。
「タカト!」
チートタイムを発動してたのに息が切れてしまい、ミサロに答えることができないよ……。
体力や魔力は勇者レベルになっても精神はそのまま。あんな巨大な虫と対峙したら大洪水起こしそうになるわ。メッチャ怖かったよ……。
「タカト、水よ」
差し出されたペットボトルを受け取り、頭から被った。
「……お、落ち着いた。ありがとな……」
頭と気持ちが冷えてくれたら恐怖心も収まってくれた。なのに、体は動いてくれないよ……。
「風邪を引くわよ」
ヘルメットとプランデットを外してくれると、バスタオルで頭を拭いてくれた。
「……ゆっくり飲んで……」
気つけ薬として持っていたスキットルを取り出し、キャップを外して口につけてくれた。
クー! 五十度のウイスキーは効く。いっきに体が熱くなったぜ。
「ありがとな。体が温まったよ」
「なにがあったの?」
「ローダーの群れが現れた。数は十八匹。どれも十メートルサイズだった」
オレの前に現れたのを倒したかわからんので十八匹とさせていただきます。
「皆は?」
「煙幕をばら撒いたから逃げ切れていると思う」
酔いが回ったが、なんとか立ち上がって窓から外を覗いた。
「…………」
外にはたくさんのローダーがいた。
「……あ、危なかったぁー……」
ホームに入ってなかったらローダーに囲まれて細切れにされていたぞ……。
「ミサロ。ガソリンタンクを一つ持ってきてくれ」
「わかったわ」
持ってきてくれたガソリンタンクをダストシュートの上に置いたらナイフで何ヶ所か刺したら外にポイ。窓から覗くと、ローダーたちはガソリンの臭いに気づいてないようだ。
「嗅覚は弱そうだな」
手榴弾を外してピンを抜く。バネが外れたらダストシュートへポイ。爆発した頃に外を見たら火が上がっていた。
「手榴弾でも引火するんだな」
どうかなと思ったが、引火してよかった。ローダーたちが逃げ出したよ。
しばらくは外に出れないので残りのウイスキーを飲み干してやった。
その場にしゃがみ込み、装備を外──せないのでミサロに手伝ってもらって外した。
「ミサロ。ガソリンタンクを五十本ばかり買っておいてくれ」
「わかった。中央ルームで休んだら?」
「いや、ここでいい。ローダーの動きを見たいからな」
サイルスさんに丸投げしてしまった。せめてローダーの情報を持っていかないと申し訳が立たないぜ。
「無理しないでね」
「外を見てるだけさ。無理なんてできないよ」
今外に出ても囲まれて斬り刻まれて終わり。チートタイムも二分を切っている。五発撃つだけで一分も使うとかビビりすぎもいいとこだ。
と、ラダリオンが入ってきた。
「──タカト、どうしたの?」
入った位置が違うことに気がつき、すぐにオレに目を向けて駆け寄ってきた。
ローダーが群れでやってきたこと。皆を逃がすために殿となったこと。逃げ切れないとホームに飛び込んだことを伝えた。
「アルズライズは砦にいるか?」
「うん、いる。いつでも向かう準備をしている」
さすがアルズライズ。情報がすぐ入る場所で待機しているよ。
「もうゴブリン駆除はダメだ。撤退する」
まだロースランだったら数で対抗できるが、十メートルもあるカマキリとか勝てる未来が見えない。命あっての物種。もうお家に帰る! だ。
「ローダーがいなくなったら皆を集めて洞窟に向かう。アルズライズやアリサたちを向かわせてくれ。RPG−7を持たせろ。三つもあれば大丈夫なはずだ」
万が一、そこまで追ってきたら爆発させたらビビらせてやればいい。火を恐れるタイプみたいだからな。
「わかった。伝えてくる」
ハァー。無事逃げられることを願うよ。神には祈らんけど!
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