第405話 ハンター

 いつの間にか眠ってしまい、目が覚めるとなぜかミリエルの膝の上だった。


「……すまない。眠ってしまったよ……」


 膝枕って結構大変なもの。二十分もやれば脚が痺れるぞ。


 ……てか、十六歳の女の子にしてもらうとかギルティだろう……。


「大丈夫ですよ。もうちょっと眠ったほうがいいですよ。疲れているみたいですし」


「いや、サイルスさんたちが心配だから。寝てもいられないよ」


 腕時計を見れば十六時を過ぎていた。ちょっとどころかがっつり眠っちゃったよ。まぁ、五十度もあるウイスキーを二百ミリも飲めば酔い潰れもするがよ。


「ミリエル。オレたちはマイセンズから撤退する。ゴブリン駆除は終了だ」


「わかりました。皆にそう伝えます」


「いろいろ準備をしたのにすまんな。また別の方法を考えるよ」


 アシッカ復興に何百万円が使ってしまうが、エルフの遺産は手に入れられたことでプラスとしておこう。森にいるゴブリンを駆除するほうが安全で確実。費用も少なくて済むんだからな。


「謝らないでください。わたしたちは一蓮托生。タカトさんのお荷物じゃありません。わたしだって稼げます」


 十六歳の女の子に生活を頼るアラサーとか究極にクズすぎんだろう。とは言え、やる気に満ちているところに水を差すのも大人気ない。ありがとうと答えておいた。


「まずはマイセンズから生きて帰ることに集中だな」


 オレはなんとかなるが、サイルスさんたちは洞窟からじゃないと地上に出られない。そこまでは連れていかないと無責任ってものだ。


「アシッカの様子はどうだ?」


「雪がまた降ってきて薪の消費が上がってきてます。食料もそろそろ補給しないといけないですね」


 ダメになると転がり落ちるようにダメになっていくぜ。


「戻ったらまたミヤマランに買い出しにいかんとならんな」


 ブラックリンなら半日でいけるだろうし、魔石が大量にある。この冬の分は十二分に買えるはずだ。


「そのときはわたしもいきたいです」


「そうだな。次はミリエルを連れていくよ」


 前はラダリオンだったし、平等に連れていかないと不和の元だからな。


「ちょっとシャワーを浴びてくる」


 すっきりしたらリンクス装備に着替えた。


 専門のマガジンポーチがデカくてちょっと邪魔だが、十メートルもある虫には対物ライフルでもないと効果はない。まあ、それでも死んでくれるかわからんけどよ。


「せめてグロックを持っていたほうがいいのでは?」


「ローダーには効かないからいいよ。ダメなときはホームに入ればいいしな」


 なるべく機動力重視でいく。どうせゴブリンは出てこないだろうし、ロースランはエサにされるだろうからな。


 ヘルメットを被りプランデットをかける。


「ブラックリンにマナックを補給しておいてくれ」


「わかりました。気をつけてくださいね」


「ああ。危険と感じたらホームに入るよ」

 

 タクティカルホームと言う名の装備チートを持っているのだから利用しない手はない。まあ、これは一人じゃないと効果は発揮しない。仲間が死闘しているときに一人だけ逃げ込むとか心が痛むわ。


 窓から外を覗くとオレが倒したローダーが倒れているだけ。五発あれば倒せるようだな。


 それは当たりどころによるだろうが、一対一ならなんとかなるだろう。こちらにはプランデットで位置は把握できる。ホームに入ったり建物に逃げ込めば戦いようはあるさ。


 三百六十度確認。上空よし。見える範囲にローダーはいない。


「よし。いってくる──」


 弾を装填したら外に出た。


 すぐにローダーの位置を確認。巣に五匹。街のほうに十匹。二、三匹いなくなっている? どこだ? 


「イチゴ。生存しているか?」


 いないのはあと。まずは皆の生存を確認する。


「ラー。生存しています。現在、タワマンに籠城しています」


 確かに五匹がタワマンのところにいるな。


「カインゼルさん。まだ屋上にいますか?」


 プランデットの信号は屋上にある。襲われてプランデットだけ残されたとか止めてくれよ。


「──ああ、いるぞ」


 よ、よかった。さすがタワマン。屋上までは意識が向いてないようだな。


「これから陽動をかけます。巣にいるローダーを撃ってください」


 気づかれてないのならチャンスだ。産卵中で体力も落ちているはずだし、殺せなくとも産後の肥立ちは悪くなるはず。虫に産後の肥立ちがあるかは知らんけど。


「了解。都合よく背中を見せておるよ」


「危険と判断したら中央に建つ塔に逃げ込んでください。天井近くに中に入れる場所がありますから」


「マンダリンがあったところか?」


「はい。余裕があれば何台かホームに運び入れます」


 もう戻ってこれるかわからない。予備として何台か持っていくとしよう。


「わかった。なにかあればそこに逃げるよ」


「じゃあ、お願いします」


 カインゼルさんなら安心して任せられるから貴重な人だよ。


「イチゴ。これから陽動をする。そこにいるローダーが動いたら仮拠点だった場所に向かえ。そこを集合場所とする」


「ラー」


「あと、サイルスさんによろしくと伝えておいてくれ」


「ラー」


 通信を切って再度動体反応を確認する。


 街にいるローダーは動いているところをみると、オレたちを探しているようだな。


 二、三キロ離れているが、単独で動いている。どちらがハンターか教えてやるよ!

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